明日の株式相場に向けて=来期を見据え半導体中低位株に照準
週明け18日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1032円高の3万9740円と急反騰。前週末の欧州株市場は高安まちまち、米国株市場でもハイテク株が売りに押され、NYダウなど主要株価指数が揃って下落するなど冴えなかった。しかし、日経平均は取引開始前から先物がフルスロットル状態で、寄り付き高く始まった後も急加速し、あれよという間に3万9000円台後半まで上値を伸ばした。そして引け際に駆け込みで1000円高を演じるオマケ付き。違和感満載の急騰パフォーマンスだったといえる。
ちょうど1週間前の月曜日(11日)を思い起こすと、きょうとは真逆の地合いであった。日経平均は朝方から先物主導で問答無用の下げに見舞われ、一時1200円近い急落、大引けも868円安と大荒れ模様だった。ちなみにその前の週末に米国株市場はNYダウが下げたとはいえ小安い程度、ナスダック総合株価指数も1%強程度の下げで波乱のかけらも見当たらない。為替市場も大した円高ではなく、市場関係者も首をかしげるような突然の嵐だった。あたかもきょうの地合いは、その時の打ち返しのような相場つきである。
あすは日銀の金融政策決定会合の結果が開示されるが、リークとみられるメディアを通じた観測記事が流され、市場はマイナス金利の解除を事前に織り込む形となった。ETFの買い入れ停止とYCC撤廃まで合わせて織り込んだかどうかは定かではないものの、この2つは事実上形骸化していたとの見方は強く、仮にそこまで踏み込んでも波乱要素には乏しい。結果として先物市場では空売りのアンワインドが加速した。一方、20日に判明するFOMCでは政策据え置きでほぼ間違いないが、ここではドットチャートとパウエルFRB議長の記者会見に耳目が集まる。米経済の強さを目の当たりに、メインシナリオの6月利下げが更に後ズレするのか否か。そして年内の利下げ回数も、これまでの3回から2回に変わるのかどうかという点に投資家の視線が向いている。ただ、いずれにせよ「日米の金融会合後に相場が崩れる展開は想定しにくい」(中堅証券ストラテジスト)という。
きょうは先物主導で日経平均が押し上げられたが、個別株もリスクオンの流れに乗って旺盛な物色意欲が反映された。特に 半導体やAI関連株が買い直される展開で、米エヌビディア<NVDA>を中軸とするテーマ買いの動きは波状的に続き、色褪せる気配がない。日経平均は上昇トレンドのテクニカル的な要衝となっている25日移動平均線を巡る攻防が意識されたが、きょうは大陽線でしっかりと上に抜けてきた。ハイテク系グロース株への資金還流を物語るもので、日経平均のチャートとオーバーラップする銘柄も少なくない。
半導体関連では、メモリーだけでなくパワーデバイス分野にも業績改善色を示す銘柄が相次いでおり、その点は要注目となる。中小型株でマークしておきたい銘柄としては、まず旭ダイヤモンド工業<6140>。ダイヤモンド工具の専業大手だが、SiC半導体向けで高水準の需要を捉えている。25年3月期の急回復を視野に時価は仕込み妙味が大きそうだ。また、Mipox<5381>も調整十分で500円台半ばは買い対処して面白い。同社は表面加工処理に使う液体研磨剤で高シェアを誇る。パワーデバイスのエッジ研磨や表面研磨で実績が高く、24年3月期は営業赤字見通しで株価も冴えない動きを強いられていたが、25年3月期は大幅黒字転換が視野に入る。両銘柄とも3ケタ台の株価に買いやすさが漂う。
このほか株価3ケタ台の半導体関連穴株として日本トムソン<6480>を改めてマークしたい。搬送や位置決めで使われる直動案内機器を製造するが、これは半導体製造装置分野で旺盛なニーズを取り込むことになる。同社の業績も24年3月期が底となりそうで25年3月期以降、回復色を鮮明とする可能性が高い。PBR0.6倍前後でプライム市場銘柄としては尻に火がついた状態にあるものの、内部留保を活用しないで溜め込んでいるということでは決してない。配当利回りは3%近い水準を確保し、自社株買いにも前向きに取り組んでいる。株価は2月中旬を境に動兆をみせるが、依然として出遅れ感が強い。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の結果発表と植田和男日銀総裁の記者会見に耳目が集まる。また、大引け後には2月の訪日外国人観光客数が発表される。海外では豪中銀の政策金利発表、3月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測調査のほか、米国では20日までの日程でFOMCが開催される。このほか、2月の米住宅着工件数、1月の米証券投資が開示、米20年国債の入札も予定されている。(銀)