明日の株式相場に向けて=全面リバウンドでも嵐が続く半導体関連

市況
2024年4月22日 17時00分

週明け22日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比370円高の3万7438円と反発。前週末に日経平均は先物に引きずられ1000円超の急落を余儀なくされたが、きょうはその巻き戻しの動きが顕在化した。75日移動平均線割れで投げ売りを誘ったところがいったん拾い場となる裏セオリーが機能した形だ。もっとも、自律反発とはいえ中身を見ると稀に見る変調な地合いであったといえる。個別株は幅広くリバウンド狙いの買いが流入、プライム市場の約90%の銘柄が値上がりするほぼ全面高商状となった。ところが、そうした中で相場の体感温度は低く、むしろ悪寒を感じるような地合いだったかもしれない。売買代金トップのレーザーテック<6920>がかろうじて小幅プラス圏に切り返したのみで、そのほか売買代金上位を占める半導体主力銘柄は文字通りの全面安だった。

売買代金だけみれば上位を独占し、大活況を呈する半導体セクターが、実際は一様に売り叩かれているという状況も異様な光景ではあるが、半導体以外の銘柄が赤一色、いわゆる9割の銘柄が上昇する相場というのは同じ日の出来事とは到底思えないほどの違和感がある。これを、どう解釈するかの問題だが、半導体関連が下値模索のオンパレードであっても、他の銘柄がこれに流されないことを「相場の強さ」として評価するのか、それとも半導体の弱さが「相場の先安懸念」を暗示するものと捉えるべきかは難しいところだ。

全体相場は4月新年度入りから急勾配の下り坂に遭遇した。日経平均は4月1日の始値が4万646円だったから、そこから前週末19日の終値3万7068円まで3578円の下落。これは下り坂というよりは“まさか”という崩落ぶりで、これを月初に予想した向きはほとんどいなかったと思われる。しかし、もう少し立ち位置を引いて眺めると、今年は3月22日に史上最高値4万888円(終値ベース)をつけたのだが、この時点で年初から7700円弱も水準を切り上げている。これもまた平凡な上り坂ではなかった。冷静に俯瞰すれば、今はまだ高値水準からの半値押しであり、まさかの上昇に見合う調整局面といえなくもない。全体相場の長期トレンドが終焉したとみなすのは早計である。

仮に全体相場が長期下降トレンドに移行した場合、これは中東情勢によるものではない。地政学リスクが相場の波動そのものを変えることがないのは過去の歴史が証明している。売りの口実に使われても、もし相場が他にトレンドブレイクの要素を孕(はら)んでいなければ早晩立ち直るはず。日経平均は今回と同様に、昨年9月下旬から10月にかけて75日線を下放れ、トレンド転換を印象づけた経緯がある。この時は三尊天井(三点天井)形成も喧伝され売り方を勢いづかせたが、その後に待っていたのは踏み上げ相場だった。

『メディア論』で知られる文学者マクルーハンは「人は前を見ているつもりで、実はバックミラーを見ている」という至言を残している。過去の軌跡を見ながら前方を見ている気分になるのは、未来を知り得ない人間に共通した“錯覚”である。例えばイランとイスラエルの紛争は確かに根深いが、ではロシアのウクライナ侵攻に関してどうだったかといえば、今なお終結のメドが立っていない。戦争が延々と続く中で米国や日本、そしてドイツやフランスなど欧州主要国は史上最高値を更新した。今の中東情勢に目を向け悲観しても、それはバックミラーを見て頭を悩ませているに過ぎない。これは米国の強い経済指標が早期利下げ期待を剥落させていることもしかり、である。

本当に狼がやって来るとすれば米利下げ期待の剥落ではなく、強いはずの米景気が失速するケース、サプライズ的なハードランディング懸念が浮上した時と思われる。言い換えれば米10年債利回りと2年債利回りが次にクロスする場面(逆イールド解消場面)で、株式市場は危殆に瀕する可能性があり、そのタイミングには注意を払っておきたい。

あすのスケジュールでは、午前中に2年物国債の入札が行われるほか、午後取引時間中に3月の食品スーパー売上高、3月の全国スーパー売上高が発表される。また、日銀から基調的なインフレ率を捕捉するための指標が開示されるほか、4月の月例経済報告も注目される。また、この日はニデック<6594>の3月期決算発表が予定されている。海外では4月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数(PMI)、4月の米PMI(S&Pグローバル調査・速報値)、3月の米新築住宅販売件数など。海外主要企業の決算ではテスラ<TSLA>の1~3月期決算にマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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