酒井一氏【急落の動揺残る日本株、底堅さ発揮し反転なるか】 <相場観特集>
―中東緊迫化と米エヌビディア大幅安で強まる警戒感、国内では決算発表が本格化へ─
週明け22日の東京株式市場で日経平均株価は反発した。前週末に下げ幅が一時1300円を超す急落劇をみせた後、いったん買い戻しの流れとなったが、朝方に下げに沈む場面があるなど、不安定な相場形勢となった。中東情勢の緊迫化に伴う動揺から時を経ずして、19日の米国株式市場でエヌビディア<NVDA>の株価が急落し、投資家の警戒感を強めている。こうしたなか、国内では日銀の金融政策決定会合が控えるほか、3月期の企業決算の発表も本格化する。調整色が強まった日本株はこの先、底堅さを発揮するのか。今後の展望について、水戸証券の酒井一シニアファンドマネージャーに今後の展望を聞いた。
●「目先は調整含みも、増配・自社株買い発表相次げばムードは好転へ」
酒井一氏(水戸証券 投資顧問部 シニアファンドマネージャー)
日本株は目先、弱含みで推移した後、値固めの局面に移行しそうだ。今後1ヵ月間での日経平均の下値のメドは3万5500円程度とみている。ただこれはあくまで保守的な想定だ。19日の米国株式市場ではエヌビディアが前営業日比で10%安と急落した。生成AI市場自体は中長期的に大きな成長を遂げるとの見方には変わりがない。しかしながら、ASMLホールディング<ASML>や台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の決算発表を受け、スマートフォンなどに向けた半導体の実需動向もあわせて意識されるようになり、これまでの過度な楽観が修正される局面に差し掛かっている。半導体関連株の需給調整はまだ続きそうだ。
米国では強い内容の経済指標の発表が相次いだことで、年内に利下げが行われないリスクや、場合によっては利上げが行われる可能性が指摘されるようになり、長期金利に上昇圧力が掛かっている。外国為替市場では34年ぶりの水準までドル高・円安が進行し、輸入インフレが進むなか、日本の産業界からも今の水準以上に円安が経済にもたらすマイナス影響を懸念する声が出ているが、4月25~26日に開かれる日銀の金融政策決定会合では、金融政策が変更されることはないだろう。注目点は会合後の植田和男総裁の記者会見だ。足もとの為替水準に関する所見などに対し、質問が行われることとなるに違いない。円安の進行によりマーケットでは日銀による追加利上げ観測が高まっていただけに、総裁の発言次第で為替相場は上下に振れることになるだろう。また、政府・日銀が円買い介入に踏み切り、ドル円相場が円高方向に振れた場合には、日本株に対する売り圧力が一時的に強まることも予想される。もっとも1ドル=145~150円の水準を維持できれば、中期的な観点で日本株にはプラス要因となると考えている。
今回の決算発表シーズンでは、自動車をはじめとした輸出系企業やインバウンド関連企業がどのような業績見通しを示していくのかという点に加え、各企業の株主還元姿勢も高い関心を集めることとなりそうだ。東京証券取引所による上場企業のPBR(株価純資産倍率)改革が進むなか、6月の株主総会シーズンにかけて、自社株買いや増配の発表が相次ぐ形となれば、市場のムードを好転させる要因となるはずだ。6月末をメドに日経平均は再び4万円に戻す展開となると想定している。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(さかい・はじめ)
2009年水戸証券入社後、リテール営業を経て、11年より投資顧問部にてファンドラップの運用に携わる。24年4月より現職。
株探ニュース