明日の株式相場に向けて=嵐を呼ぶ「SQ」と「決定会合」のシンクロ

市況
2024年6月4日 17時00分

きょう(4日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比85円安の3万8837円と3日ぶり反落。朝方に安く始まった後、下値をずるずると切り下げる軟調展開で一時330円あまりの下落を強いられたが、その後は買い戻され一時プラス転換も視野に入る戻り足を示した。結局戻し切れず、前日終値を下回る水準で着地したが、「思ったよりも押し目買い意欲は活発」(中堅証券ストラテジスト)という声も上がっていた。

今週は木曜日にECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見が予定されており、ここでは政策金利の0.25%引き下げが濃厚とみられている。これを拠りどころに欧州株市場は前週後半を境に戻り足にあり、今のところリスク選好ムードといえる。一方、米国株市場の方は、今週は重要経済指標が目白押しだが、アンカーとして控えるのが週末7日に発表される5月の米雇用統計で、この内容にマーケットの耳目が集まる。

雇用統計はどういう内容がポジティブなのか、これがまた難しい。前日発表された5月のISM製造業景況感指数は前月から悪化し、2カ月連続で分水嶺の50を下回り、市場コンセンサスにも届かなかった。当然長期金利は低下し、これでもしNYダウが上昇すればFRBが早期利下げを実施しやすくなったという講釈が大手を振るところだったが、実際はダウが一時400ドル超下げる場面に遭遇した。前日の米株市場は利下げのタイミング云々ではなく、景気減速への警戒感がクローズアップされる格好となった。

今週末の米雇用統計についても、市場では「米景気が強すぎればインフレ懸念を助長させ、利下げ期待の剥落で相場にマイナスに作用する。一方、景気が弱いという印象を与えるのもよくない。ソフトランディング観測の信頼性を希薄化させる悪材料となる。どちらにも寄らず、中庸であることがベスト」(ネット証券アナリスト)という。中庸な指標とはどういうものなのか、確証の持てる具体的な数字があるわけではないが、要は投資家にゴルディロックスを印象づける内容であれば、米国株市場は上昇に転じやすくなるということ。しかし考えてみると、それは結構難儀であることが分かる。針の穴を通すとまでは言わないが、株式市場が好感するストライクゾーンはかなり狭いようにも思えるからだ。

では日本株の場合はどうか。米国株の動きに左右されやすいとはいえ、最近は半導体関連株ひとつ取っても米株市場との連動性が失われている。特に、以前はエヌビディア関連のツートップとして脚光を浴びたアドバンテスト<6857>やディスコ<6146>が、最近は“エヌビディア祭り”が続いているにもかかわらず冴えない値動きが目立つ。これは、ひとえに国内要因に引きずられていると考えるよりない。日銀の金融政策が転換点を迎えていること、そして不安定な政治(政局)が、足もとで海外投資家離れを誘発しているという指摘が市場関係者の間からは聞かれた。

来週は米国でFOMC、国内では日銀の金融政策決定会合が行われる。FOMCについては政策変更なしで、パウエルFRB議長が利下げのタイミングに言及することも考えにくく、相場への影響は限定的であろう。それよりも今回は13~14日の日程で開催される日銀の決定会合のほうが肝である。結果が発表される14日がメジャーSQ算出日と重なることもあって、派手な「日銀プレー」を誘発する可能性がある。ここで、カギを握るのが空売り筋の動向だ。直近3日現在の東証合計の空売り比率は38%まで低下している。つまりショートがほとんど積まれていない状況で、相場は強気に傾いていることを示唆する。しかし、裏返せば現状は買い戻し圧力が働きにくい地合いであり、その分だけ売り方が仕掛けやすい環境ともいえる。今回の決定会合でいきなり利上げに動く可能性は限りなく低いが、国債の買い入れ減額が想定され、引き締めモードであることに変わりはない。例によって事前にアドバルーンを上げるにせよ、その過程での売り仕掛けを警戒しておく必要がある。

あすのスケジュールでは、4月の毎月勤労統計が朝方取引開始前に発表される。また、この日はマーケットでも注目度の高いIPOが1社予定されており、アストロスケールホールディングス<186A>が東証グロース市場に新規上場する。海外では1~3月の豪国内総生産(GDP)、5月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)、5月のADP全米雇用リポート、5月の米ISM非製造業景況感指数などが注目。また、カナダ中銀の政策金利発表も予定される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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