明日の株式相場に向けて=“1%ジャストの戻り”は気迷いの結晶
きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比379円高の3万8482円と反発。切り返しに転じたとはいえ1%ジャストの戻りに過ぎず、前日の欧米株高を受けたリバウンドとしては物足りない。通常なら後場は徐々に買い戻しの動きが加速し、次第高でその日の高値圏で大引けを迎えるのが、急落後のリバウンド局面としてはお決まりのパターンであった。きょうも取引終了間際に手仕舞い売りならぬ「手仕舞い買い戻し」の動きで日経平均が跳ねる形となったが、ショート筋を踏ませた感触はほとんどない。
週明け17日は先物主導の売りで思わぬ急落に見舞われたが、メジャーSQ通過後の仕掛けということもあって虚を衝かれた部分もあったかと思われる。問題は下げの背景が判然としないということだ。今月末のフランス国民議会(下院)選挙で極右政党の躍進が警戒されている。確かに政局不安の火種として、現地ではのっぴきならないネガティブな要素をはらんでいることは理解できるが、これを前日の日本株急落の材料に掲げるには正鵠を射ているとは到底思えない。仮に海外投資家が日本株の買いポジションを減らす動き、もしくは先物売りでヘッジをかけたとしても、それは別の理由がおそらく存在する。政局ならばよほど国内の方がいろいろと売りの取っ掛かりが多いはずで、逆に言えば敢えて欧州に理由を求めるほど、国内政治のマーケット全体に与える影響は希薄化していることの裏付けともなっている。
フランスの政情は日本にとって実はダミーで、実際は日銀が金融政策決定会合で国債買い入れ減額を発表したことが本丸という指摘も多い。しかし、この日銀の量的引き締めの選択肢については寝耳に水どころか、耳にタコができるほど投資家サイドは事前のリークで聞かされていた話だ。実際、決定会合直後は想定よりもハト派的という解釈が大手を振り、日経平均は強含みプラス圏で着地している。そして、週末は無風通過で一件落着に見えたものの、週明けに時間差で大きくマーケットは揺さぶられた。後付け材料として可能なのは前週末14日引け後の植田日銀総裁の記者会見を嫌気したという説。しかし、これは後付けというよりは“なすりつけ”のネタにされている印象もある。
先物絡みで振り回されているようにも見えるが、個別株に対しても気迷いムード満載で、物色意欲が減退している感は否めない。前日はプライム市場で全体の8割弱の銘柄が下落し、きょうは7割強の銘柄が上昇した。しかし、主力どころを見るとショート解消に伴うリバウンドは前場に見せ場を作り、後は惰性で流した感じとなった。後場は前場の余韻で日経平均が上昇をキープしたとはいえ、3万8000円台半ばまで上値を伸ばすのが精一杯。そこから先は胸突き八丁、戻り売りを浴びて退散するよりない状況だった。
半導体関連株は相変わらず跛行色が強く、一斉高でロケットスタートを決めても、ゴールテープを切るまでには脱落者(マイ転)が多数出てしまうのは見慣れた風景。米エヌビディア<NVDA>がアクセル全開でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が青空圏を舞い上がっても、東京市場の方は“笛吹けど踊らず”の状態から抜け出せないでいる。例えばエヌビディア関連の急先鋒であるアドバンテスト<6857>の5000円台半ばでのもみ合いを、以前のように絶好の買い場とは言い切れなくなっている。
19日の米国株市場がジューンティーンスで休場ということもあって、足もとで外国人投資家の売買に厚みが伴わない面もあるが、やはり個人投資家マインドも冷え込んでいる。信用買い残は増勢にあるが、それは今の値ごろ感からくるもので積極的に買い向かっているようには見えない。一方、空売り比率は直近17日現在で45.9%まで高まっているが、相場の転機を示唆するにはまだ少し距離がある印象だ。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に日銀金融政策決定会合(4月25~26日開催分)の議事要旨が開示されるほか、5月の貿易統計が発表される。午後取引時間中には5月の首都圏新規マンション販売が開示。また、午後取引終了後に発表される5月の訪日外客数にマーケットの関心が高い。なお、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にライスカレー<195A>が新規上場する。海外では5月の英消費者物価指数(CPI)、6月の米NAHB住宅市場指数、ブラジル中銀の政策金利発表など。この日は奴隷解放記念日の祝日に伴い米国株市場は休場となる。(銀)