明日の株式相場に向けて=「新TOPIX関連」の潮流発生
きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比62円高の3万8633円と3日続伸。前日の米国株市場が休場だったことで手掛かり材料難が意識されやすいところではあったが、こうなると投資家の視線は必然的に前日の欧州に向く。とりわけ仏CAC40と独DAX指数の注目度が高いが、いずれも軟調だったことで、朝方はリスク回避モードとなった。しかし、後場に入ると米株価指数先物(ナスダック100指数)が強さを発揮しているのを横目に買い戻しを誘発、日経平均は先物主導でほぼ一本調子に下げ幅を縮小し、午後2時前にプラス圏にたどり着いた。その後は狭いゾーンでもみ合ったが、大引けは帳尻を合わせてこの日の高値圏で着地している。何がどう作用したという相場ではなかったが、薄商いが象徴するように目先は売り買いともに力が抜けた状態にある。
方向感の見えにくい、つかみどころのない地合いが続くなか、テーマ物色の動きも鳴りを潜めている。だが、そのなかで一つ市場関係者の話題となっていたのが「新TOPIX」絡みの銘柄であった。日本取引所グループが前日にTOPIXの新たな改革案を公表、採用銘柄の時価総額基準を一段と厳格化し、2028年には現在よりも40%強少ない1200銘柄程度に絞り込む。同時に成長性のある企業を取り込むことを目的に、スタンダード市場とグロース市場からおよそ50銘柄が加わると伝わった。
過去にさかのぼるが、東証2部やマザーズから東証1部に市場変更された銘柄についてはTOPIX新規採用に伴い、指数連動型ファンド(パッシブファンド)の組み入れニーズが発生し、それがそのまま買い需要として株価に浮揚力を与えるという見方で物色人気につながるケースが多かった。今回も同様の理屈で、プライム市場以外から新規採用された銘柄は、“株高ボーナス”の恩恵に授かるという思惑が漂う。ここでマーケットの視線が向かったのが「スタンダード上場銘柄で時価総額上位にある銘柄」である。短絡的と言えばその通りだが、そもそも株価は思惑で動く。半分はマネーゲーム的な感覚で投資資金の食指を動かしたのは、スタンダード市場で売買代金第2位に位置する日本マクドナルドホールディングス<2702>や、第4位の東映アニメーション<4816>、第7位のワークマン<7564>、第9位のフクダ電子<6960>、第11位のセリア<2782>といった銘柄群である。
ちなみに、スタンダード市場の断トツの時価総額トップは1兆5000億円強の日本オラクル<4716>。また、時価総額上位10傑では、上記以外の銘柄では第3位がアコム<8572>、第5位に住信SBIネット銀行<7163>、第6位にハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>、第8位に三菱食品<7451>、第10位にナカニシ<7716>というラインナップとなっている。
このほか、最近の内需株の弱さによって投資家の関心が薄れているが、前日引け後に発表された5月の訪日外国人客数は予想通りとはいえ文句をつけようのない高水準だった。前年同月比で60%増の304万人で、3カ月連続の300万人超え。コロナ禍前の19年5月との比較でも約1割近く多い。この活況ぶりをスルーしてしまうのは、ひとえに株式需給の悪さによるが、これは半導体関連とも似通った部分がある。
しかし、目を凝らしてみると局地的ではあるが反応している銘柄も少なからずある。突然変異的な急騰相場を演じた藤田観光<9722>はインバウンドの切り口とは関係のないところで人気化したのだが、ホテル関連株に資金還流を促す契機となるかもしれない。CSSホールディングス<2304>などはその流れを暗示する動きともいえる。このほか、目先ノーマーク状態のワシントンホテル<4691>や投資指標面で割安感の強いツカダ・グローバルホールディング<2418>などに目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に発表される5月の全国消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われるほか、午後に5月の食品スーパー売上高が発表される。なお、この日は東証グロース市場にMFS<196A>が新規上場する。海外では各国で購買担当者景気指数(PMI)の開示が相次ぐ。6月の英PMI、6月のユーロ圏PMI、6月の独PMI、6月の仏PMI(いずれも速報値)、6月の米PMI(S&Pグローバル調査・速報値)が発表される。このほか、5月の英小売売上高、5月の米中古住宅販売件数、5月の米景気先行指標総合指数など。(銀)