【植木靖男の相場展望】 ─需給好転を待つ
「需給好転を待つ」
●膠着解消は値幅調整か、日柄調整か
日経平均株価が膠着状態に陥っている。短期投資家にとっては極めて深刻な状況といえる。いわゆる鯨幕相場に近い値動きを続けており、利益を得るチャンスは乏しかった。実際、6月に入って17日まで2日上げれば2日下げるといった具合で5勝6敗であった。こうした膠着状態が出現するのは市場に迷いがあり、上に行くのか、下に行くのか見方が分かれているからだ。手掛かり材料に乏しいときに表れやすく、株価はある限られたゾーン内に閉じ込められる。現状では上値の壁は3万9000円~4万円、一方、下値のそれは3万8000円処である。
ところが、驚くことに6月18日以降、3連騰となった。実にほぼ1カ月ぶりの3日連続高だ。
そもそも、今回の膠着の背景には、3月にかけての4万円大台乗せの際にみせた勢いあるエネルギーの解消、つまり後始末がある。
市場関係者の多くは、2025年3月期業績が会社予想ベースで減益になることを懸念材料としている。だが、1年先のことは誰にも分からず、下げのきっかけ材料にすぎない。
本当の理由は、4万円乗せのエネルギーの解消段階、つまり需給の変化である。4万円大台乗せの旗振りは海外筋であるが、彼らはここ4週連続で現物株を売り越している。逆に信用の買い残はNTT <9432> [東証P]にみられるように増えている。こうしたなか、東証プライム市場の売買代金は6月20日に今年最低となった。静かに、静かに買いエネルギーの後始末が進みつつあるかにみえる。
先行き需給面の好転はいつ頃になるのか。4万円大台割れからはや3カ月が過ぎようとしている。要は力づくで下げをみせて短期で需給のバランスを取るか、時間をかけて需給の改善を待つかの択一だ。週末にかけて3日連続高をみせたことは需給好転に向けての一つの示唆、値幅調整の予兆かもしれない。
だが、力づくの下げとなると、どのような状況で出現するかである。おそらく、米国株動向が鍵となろう。6月20日に米ナスダック指数が大きく下げた。それもエヌビディア<NVDA>、マイクロソフト<MSFT>など市場を主導してきたテック株が下げたことがきっかけだ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)をみるとこれまで大きく上昇してきたが、20日に一転して長大な陰線を引いている。これは気をつけるべき現象だ。杞憂にすぎなければ幸いだが、今後を見極めたい。
●データセンター、防衛のテーマ株のほか、目先妙味株は?
当面の物色動向をどうみればよいのか。エヌビディア一強支配の相場が続くのであれば、やはり値がさ半導体の一角が買われるが、裏を返せば他の銘柄はその陰に隠れがちになってしまう。だが、エヌビディアが強いのは世界的な生成AIブームのお陰である。だとすると、 データセンターの新増設から電力、銅、電線などは引き続き要注目だ。
さらにテーマとして防衛も注目したい。2023年の世界の軍事費は2兆4430億ドルと9年連続で増加し過去最高を記録したという。筆者はスクラップ&ビルドの歴史から間もなく紛争は終わり、復興の時代を迎えるとみるが、まだまだ防衛のテーマは残りそうだ。
こうした観点から銘柄を選ぶと、住友金属鉱山 <5713> [東証P]など非鉄株、三菱重工業 <7011> [東証P]やIHI <7013> [東証P]といった防衛関連、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]などの電力株が妥当だが、目先的には久しぶりにパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]、金融株から住信SBIネット銀行 <7163> [東証S]、物色難の折に触れて買われる海運から日本郵船 <9101> [東証P]、陸運から資産株ともいえるJR東海 <9022> [東証P]、好業績のエービーシー・マート <2670> [東証P]などが面白い。また、金利上昇で売られている不動産株から三井不動産 <8801> [東証P]などの安値拾いも一法とみられる。
2024年6月21日 記
株探ニュース