天昇電 Research Memo(3):長い間に蓄積された技術力と顧客からの信頼が強み(1)
■会社概要
c) 家電・OA機器
家電メーカーからの依頼により、主に液晶テレビや照明器具などの筐体や各種OA機器・精密機器・医療機器等の機構部品、機能部品を製造している。毎日目にするもの・毎日手にするものだからこそ、美しい外観と高品質を常に意識している。機能とデザイン性の両立が求められる家電製品の世界では部品においても高い外観品質と精度が要求されるが、天昇電気工業<6776>では多様な金型技術・成形技術を駆使することに加え、アセンブリー、塗装までも一貫して行うことが可能で、顧客の高度な要望に応えられる体制を整えている。
金型温度を瞬時に上昇・下降させて成形する技術は、ウエルドやフローマーク等の外観不良を改善できると同時に、金型への樹脂の転写性能を向上することで高光沢やシボデザインの製品をより丁寧に仕上げ、塗装を施さなくとも美しい外観を作り上げることができる。これらの成形技術に「射出圧縮成形」「ガスアシスト成形」といった特殊な成形方法を組み合わせることで、ヒケやソリといった不具合も軽減し、高い外観品質の維持を可能にしている。
d) OA部品
オフィス機器メーカーからの依頼により、外装品や機能部品の設計、成形、華飾、組立等のサポートを行っている。家電で培った外観を美しく仕上げる技術を生かし、オフィスの様々なシーンで同社製品が使われている。具体例としては、人間工学に基づき座り心地を追求した高級オフィスチェアがある。椅子の背もたれは、異材質成形技術を用いて硬い材質を骨格に柔らかい材質で被覆し、人間工学の理想を具現化することを可能にした。また、高い透明性が重視されるLED照明機器のレンズも挙げられる。成形技術のみならず経験から養われる熟練の目と徹底した品質管理体制から、高い透明性を持つ製品を生み出すことを可能にした。
(3) 特色と強み
a) 長い間に培われた技術力と顧客からの信頼
同社は創業当初からプラスチック製品の製造を手掛けており、この間に培われた技術力は高い。さらに単に最終製品を製造するための設備だけでなく、様々な設備を保有しており、これらのコンビネーションにより多くの顧客の多様なニーズに応えることができる。そのため顧客からの信頼の獲得につながり、新製品の企画段階から同社に声がかかることも多い。
b) 最先端技術と様々な生産設備
同社は単に製品を製造する射出成形機だけでなく、様々な設備を持っている。例えば、金型製作/設計設備、フィルム華飾設備、試作設備、印刷/ホットスタンプ設備、塗装設備、組立設備、測定/試験設備等があり、これにコンピュータを駆使した最先端の技術を組み合わせることで、常に顧客へ最良の提案ができる体制を築いている。
c) 特殊技術
同社は、顧客からの多様なニーズに応えられるよう、特殊技術も有している。主な特殊技術は以下のとおり。
i) ウエルドレス/光沢成形技術:特殊金型、成形技術を用いて塗装レスを実現し、漆器のような光沢を出す
ii) 特殊印刷(炭素繊維品塗装):独自の技術を使って炭素繊維(カーボン)への特殊塗装を行う
iii) フィルム華飾:真空・圧空技術によって製品へフィルムを貼り付け転写し、手触りの感触も表現できる
(4) 競合
射出成形製品の市場には多くのメーカーが存在する。しかし同社が手掛ける製品の多くは、価格が決め手となる汎用品ではなく、同社が企画段階から参画してそれぞれのユーザー向けに設計された製品が多い。したがって同社と真正面から競合する企業は少ないが、同社は射出成形製品だけではなく幅広い分野への参入を視野に入れている。
4. 主要な技術
(1) 表面華飾(加飾)技術
a) 3次元表面華飾技術(TOM)
真空/圧空技術により製品へフィルムを貼付・転写する。これにより、デザインだけでなく、手触りの感触も表現できる。
b) 水圧転写
水溶性フィルムを使用し、水圧により絵柄を転写する技術で、素材を生かしたデザインを表現できる。
c) 塗装技術
独自の塗装技術を駆使し、高光沢・高輝度塗装をはじめ、炭素繊維(カーボン)製品への特殊な塗装も手掛けている。主に自動車部品の塗装に用いる。今後、自動車のEV化が進むとさらに軽量化が要求され、プラスチック部品の需要が一段と高まると期待される。
d) 印刷/転写技術
スクリーン印刷、パッド印刷、ホットスタンプなど、様々な印刷/転写技術を保有している。平面や凹凸面といった形状に合わせることができるため、小さなものから大きなものまで多機種にわたって提案できる。フィルム華飾とのコラボレーションも可能であり、スマートフォンのケースなど、様々な分野での応用が期待される。
e) 漆器の光沢技術
特殊金型、成形技術を用いて、塗装レスを実現し、漆器のような光沢感を表現できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《SO》