金は上値重く推移、米FOMCで年1回の利下げ見通し <コモディティ特集>
金は6月、堅調な米雇用統計を受けて2286ドル台まで急落したのち安値拾いの買いが入ったが、米連邦公開市場委員会(FOMC)で年1回の利下げ見通しが示されたことに上値を抑えられた。その後は、予想以下の米小売売上高や米住宅着工件数を受けて2367ドル台まで戻したが、米総合購買担当者景気指数(PMI)の上昇をきっかけに戻りを売られた。CMEのフェドウォッチで米連邦準備理事会(FRB)の9月利下げを織り込んでいるが、米金融当局者の利下げに慎重な発言が目立ち、米大統領選前の利下げはないとみられている。当面は米経済指標で利下げ時期を見極めながら、方向性を模索することになりそうだ。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの緊張が高まっていることは下支え要因であり、全面戦争となれば金に逃避買いが入る可能性が出てくる。イスラエル軍がヒズボラの司令官を殺害したことで緊張が高まり、ヒズボラの指導者ナスララ師は本格的な戦闘となればイスラエルは安全ではなくなると述べ、キプロスや地中海沿岸に対しても警告した。一方、イスラエル軍の参謀総長は、ガザ最南部ラファのハマス旅団の壊滅が近づいているとの見方を示しており、停戦となれば緊張は一服することになろう。
●中国人民銀行の金購入停止もWGC調査で中銀の買いが続く見通し
中国人民銀行が保有する金地金は5月末時点で前月から変わらずの2264.33トンとなった。1年半続いた金購入が止まった。民間部門で不動産不況に対する懸念から金が安全資産として買われているが、史上最高値を更新するなか、人民銀が金購入を見送った。
一方、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の年次調査によると、1年以内に金準備を増やす方針の中央銀行が増える見通しとなった。29%の中銀が金準備高は増えると予想し、前年の24%を上回った。金準備高を増やす理由として「長期的な価値の評価やインフレヘッジ」、「有事のパフォーマンス」、「効果的な運用分散管理」が上位に挙がった。各国中銀の金買い方針に変わりがなければ下支え要因になるとみられる。
●ファンド筋の買い越しは買い戻しで拡大
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、6月25日に829.05トン(5月末832.21トン)となった。米雇用統計発表後の急落を受けて安値拾いの買いが入ったが、戻り場面で投資資金が流出した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは6月18日に24万3084枚(前週23万3926枚)に拡大し、2022年4月以来の高水準となった。売り玉が5月14日の7万3146枚から4万4063枚に減少しており、安値で買い戻されたことが背景にある。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース