翻訳センター Research Memo(4):専門性の高い産業翻訳に注力。機械翻訳と人手翻訳の融合が進む
■事業概要
1. 事業環境
国内の翻訳の市場規模は、約3,080億円と推計されており、産業翻訳が市場の大半を占めている。医薬・金融・自動車、電機、エネルギー、IT通信、小売業などの国内企業のグローバル展開や外資系企業の日本進出が需要発生のドライバーとなっている。こうした環境のなか翻訳センター<2483>は着実に成長してきた。得意とするのは、「専門性が高く、間違いが許されない」文書であり、薬品承認申請資料、特許明細書、取扱説明書などが挙げられる。産業翻訳ニーズの最近の特徴として「スピード化」「デジタル化」が挙げられる。自動車、医薬品、IT業界などをはじめ企業のグローバル化は加速しており、翻訳会社としても高いレベルの対応力が求められる。
また、AIの進展は業界に大きな変化をもたらしつつある。2016年11月にGoogleが発表したニューラル機械翻訳(NMT)は、それまで主流であったルールベース機械翻訳(RMT)や統計的機械翻訳(SMT)に比べて格段に翻訳精度を向上させ、業界を驚かせた。個人がニュースを翻訳する、ビジネスで意味を簡略的に把握するために翻訳するといった汎用的な用途では、Google翻訳などの機械翻訳が既に浸透しており、同社が外販を担う機械翻訳「Mirai Translator(R)」もNMTの手法を取り入れている。2022年11月には、ChatGPTが登場し、個人を中心に翻訳機能としても使われ始めている。一方で、翻訳の品質に関しては誤訳も発生するため、補助や概括の用途が主体と考えられる。産業翻訳では、これまで専門性の高い翻訳者による人手翻訳が主流であったが、近年は企業が保有する翻訳データの活用を目的にNMTの普及が進んでおり、翻訳業務の生産性は向上している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《HN》