【緊急特集】TOPIX最高値更新、大型バリュー株偏重の流れはいつまで続くか?

市況
2024年7月4日 17時08分

4日の東京株式市場で、東証株価指数(TOPIX)が1989年12月18日につけた最高値(2884.80)を上回った。日経平均株価も最高値を更新した。PBR(株価純資産倍率)が1倍を割る上場企業が山積する状況に東証がメスを入れた結果、海外勢による大型バリュー株への資金流入が続いている。

●消去法での日本株買い

6月下旬以降の日本株は明確な買い材料がないなかで、意外高の展開となった。あえて転換点を挙げるとすれば、6月27日の米大統領選候補者のテレビ討論会だろう。トランプ前大統領が選挙戦で優位に立ったとの見方が広がり、拡張的な財政政策に伴う財政悪化リスクへの懸念から、米長期金利に上昇圧力が掛かった。これを受けて海運や金融などバリュー株が選好され、全体相場を押し上げた。米国では昨年7月の最後の利上げからおよそ1年となるが、ここにきて経済の減速リスクも意識されるようになった。セゾン投信の瀬下哲雄執行役員は「景気とバリュエーションの観点で日本株が消去法的に選好されるようになった」と話す。

TOPIXが34年半ぶりに過去最高値を更新した半面、ドル円相場は1ドル=161円台と37年半ぶりの安値圏に沈んでいる。日本の長期金利は足もとでは1.080%。今年に入り上昇圧力が掛かっているとはいえ、89年12月当時の5.7%台と比べると低水準だ。

今年7月末には日銀の金融政策決定会合があり、追加利上げの可能性が一部で取り沙汰されている。ただ日銀が段階的に政策金利を引き上げたとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の直近の政策金利の水準との比較では、極めて低い水準にとどまるとの見方が市場では支配的だ。結果として低金利円で借り入れを行い、高金利の海外資産で運用する「円キャリー取引」が繰り広げられ、円相場を下押しする要因となっている。

急激な金融引き締めリスクに乏しいこと自体、東京市場は海外勢にとっては安心・安全な市場とも言える。上場企業に対し東証が資本コストや株価を意識した経営を促したことも相まって海外勢のマネーが大型株に流れた結果、TOPIXを規模別でみると「大型」の年初来の上昇率は27%となり、「中型」の14%、「小型」の13%を上回っている。テーマ性のある大型株の上昇力は目覚ましく、防衛関連と位置付けられる三菱重工業<7011>の株価は2.5倍と急騰。インバウンド関連の三越伊勢丹ホールディングス<3099>は2.1倍、事業構造改革の効果とAIの普及で電力関連事業の拡大が期待される日立製作所<6501>は83%高となっている。

●米大統領選の情勢と金利動向には不透明感

89年12月末との比較では、TOPIXの「小型」は21%高、「中型」が18%高なのに対し、「大型」はほぼ横ばいでパフォーマンスは劣後している。バブル崩壊後、ゼロ金利政策の導入、更にはマイナス金利政策の導入に至った国内の金利情勢を踏まえると、グロース株の多い中小型株の好パフォーマンスは妥当な流れと言える。

金利動向がグロース性の強い中小型株の方向性に大きな影響をもたらす要因であることは、今後も変わりがないだろう。日本の金利が低位で推移し続けるなら、カギを握るのは米金利だ。CMEフェドウォッチによると、今年末までにFRBが0.25%幅で2回の利下げを行う確率は46%と1カ月前の41%から上昇している。米国で景気減速懸念を背景に利下げ期待が一段と高まり、米金利の低下基調が鮮明となれば、中小型株の反転攻勢の道筋が見えてくる。

問題はその持続性である。米大統領選を巡る情勢は、なお流動的との見方が優勢だ。バイデン氏が撤退を決断した際に民主党側が打ち出す新たな候補者次第で、バイデン氏・トランプ氏の両者に対し不支持の立場をとる「ダブルヘイター」の票が民主党候補に流れ込むシナリオも存在する。政治情勢に米債券市場が振り回される状況がしばらくは続くだろう。また米国景気が本格的に腰折れとなった場合には金融市場に動揺が走り、日本株もバリュー・グロースを問わず売り圧力にさらされるに違いない。リスク要因が点在するなかで出遅れた有望中小型株にどのタイミングで投資をすべきか。これまで以上に投資家の手腕が問われることとなる。

出所:MINKABU PRESS

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