明日の株式相場に向けて=半導体株崩落と中小型株復活の真相
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比177円安の4万1097円と反落。前日の米国株市場でNYダウが740ドルあまりの急騰を演じ、このリスクオンの流れを引き継いで朝方は買い優勢に傾いたものの、その後は上値の重さが露呈、後場に入ると急速に値を消し下値を模索する弱地合いに変わった。ただ、TOPIXは日経平均とは対照的な値動きとなり、終始プラス圏で売り物をこなした。
米国株市場のみならず、東京市場でも「トランプ・トレード」が花盛りである。銃撃を受けながらもトランプ前大統領は無双の強運ぶりを発揮、突き上げた拳はドラクロワの描いた「民衆を導く自由の女神」を彷彿とさせ、語弊を承知で言えばまさに選ばれし者としてのカリスマ性を存分に発揮する舞台となった。市場では「日米ともに株価がバブル圏に足を踏み込んでいる可能性は否めないが、半導体バブルに代わってトランプ・バブルが最終ステージのメーンイベントとなる」(中堅証券ストラテジスト)という声すら聞かれる。
きょうの相場では三菱重工業<7011>を筆頭に、川崎重工業<7012>やIHI<7013>の 防衛関連の三羽烏が買われたが、特に金品提供問題で空売りの溜まっていた川重の踏み上げ相場が際立った。しかし、トランプ氏が11月の大統領選に勝利する可能性が高まったとはいえ、まだ難関がいくつも控え、道は決して平坦ではない。半導体製造装置関連株の崩れ足が前途に影を落としている。スコーピオン・キャピタルの売り仕掛けで暴落に見舞われたレーザーテック<6920>のみならず、ここにきて業界最大手東京エレクトロン<8035>の下げっぷりも大勢上昇トレンドの終焉を示唆するだけのインパクトがある。これは、バイデン米政権による半導体の対中規制強化の観測報道が嫌気されたという解釈だが「今さら」であり、トランプ相場の只中では、証文の出し遅れのような話しである。
半導体株崩落の真相は極めて強硬な政策スタンスをとる副大統領候補バンス氏の存在が影響しているという見方がある。「バンス氏はトランプ路線継承者というよりも遥かに過激で、特に対中政策については超のつく強硬派。日本の半導体製造装置メーカーにはかなりの打撃となり得る」(ネット証券アナリスト)と断言する。トランプ・トレードは足もとで相場の上昇エンジンとなっているが、バンス氏の存在によって思わぬ落とし穴にはまる懸念がある。「ここにきてのラッセル2000の急騰も、バンス氏の政策でビッグテックへの風当たりが強まるとの思惑が底流している」(同)という。この流れが海を渡って、日本のグロース市場の底入れに一役買っているとすれば皮肉な話ではあるが、ともあれ、今はトランプ・エフェクトで内需の中小型株が刺激される構図が浮き彫りとなりつつある。
中小型株では国際的にも安全保障の要衝となっているサイバーセキュリティー関連株に着目。防衛関連の裏銘柄で、本命はFFRIセキュリティ<3692>だが、タイミング的にはランサムウェア対策製品に注力の構えにあるセキュアヴェイル<3042>のリバウンド狙いも面白い。現状は滞留出来高の多い340~350円近辺をクリアできるかどうかは微妙だが、貸株市場を通じた空売りが高水準に溜まっていることで買い戻しによる浮揚力が働きやすい。また、直近IPO銘柄のカウリス<153A>などの底値買いも一法。
一方、新紙幣の発行で電子決済需要が喚起されている。ウェルネット<2428>はプリペイド型電子マネーや電子チケットに注力し同社独自技術で需要開拓が進んでいる。また、企業DX支援も中小型株の主戦場で実力株が目白押しだ。同分野の先駆的銘柄であるYE DIGITAL<2354>をマーク。不動産周辺では、ホテル分野に傾注するコスモスイニシア<8844>に注目したい。更にバイオ関連株にも動意株が相次いでおり、資金の回転は速くても、最近は打ち寄せる波のように断続的に資金が流れ込む地合いに変化している。連続陽線で静かに上値を慕う免疫生物研究所<4570>をチェックしておきたい。
あすのスケジュールでは、6月の貿易統計、7月の主要銀行貸出動向アンケート調査、1年物国庫短期証券の入札及び5年物クライメート・トラジション利付国債の入札、実質輸出入動向など。また、東証スタンダード市場にカドス・コーポレーション<211A>が新規上場する。海外では、6月の豪雇用統計、6月の英失業率のほか、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見、南アフリカの金融政策委員会、週間の米新規失業保険申請件数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の景気先行指標指数など。(銀)