雨宮京子氏【暴落続く日経平均、波乱相場の先行きを読む】(1) <相場観特集>
―円高加速、地政学リスクなど悪材料山積で下値メドは―
5日の東京株式市場は全面安商状となり、日経平均株価は3万1000円台まで一気に水準を切り下げた。世界的な株安で東京市場もリスクオフの地合いが加速している。米経済への警戒感が強まるなか、前週末の米国株市場でNYダウは一時約1000ドル安に売り込まれたほか、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も連日で400ポイントを上回る下げ幅を記録した。この流れを引き継いで週明けの東京市場でも投げ売りを誘発した。歴史的な波乱に見舞われている東京市場の今後の展望について、経験値の高い市場関係者2人に意見を求めた。
●「切り返しても上値は限定的、中期調整局面へ」
雨宮京子氏(雨宮総研 代表)
全体相場は当面は厳しい局面が続くと思われる。短期的には空売りの買い戻しやリバウンド狙いの押し目買いが入り、全体相場は切り返す場面はありそうだが、戻り売りを浴び中期的な上値余地は限定的と考えている。結論を先にすれば、向こう1ヵ月の日経平均のレンジは下値が2万8800円前後、上値3万7000円前後とみている。
日銀が金融政策正常化という名のもとに引き締め政策に急速に舵を切っている。これが唐突にタカ派に傾いた印象をマーケットに与え、ネガティブサプライズとなり投資家心理を急速に冷やした。一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)はこれまでの引き締めモードから本格的に緩和モードへと移行しつつあるが、米国株市場では米景気のハードランディングへの警戒感の方が足もとで強くなっている。
また、日米金利差の縮小に伴うドル売り・円買いで1ドル=143円前後まで円高が進み、半導体関連や電子部品株など輸出ハイテクセクターが牽引してきた相場は中期タームで調整局面に突入した感が強い。過去の例を引き合いに出すと、1980年代後半に起こったブラックマンデー暴落も、最高値奪回までに約2年を要したが、今回も4万2000円台復帰までは遠く、同じようなケースをたどる可能性もあり得る。
前週末に発表された7月の米雇用統計を受け米経済の急速な冷え込みが意識されるほか、為替の円高と合わせ日本の企業業績への影響が警戒される。更に中東の地政学リスクも加わることで、もう一段の下値を見ておく必要はありそうだ。「落ちてくるナイフ」はつかまないのが鉄則である。
目先は個別株も手を出しにくいが、全体相場の落ち着きを待って売られ過ぎた銘柄の安値を拾うスタンスで臨む。例えば、日銀の利上げ局面で叩き売られたメガバンクで三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や、円高メリットのある東京電力ホールディングス <9501> [東証P]やニトリホールディングス <9843> [東証P]といった銘柄に着目したい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
雨宮総研 代表。元カリスマ証券レディとして、日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスター、SBI証券投資情報部などを経て現在、日経CNBCに出演中。
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