明日の株式相場に向けて=中小型株復権で「人材とバイオ」に着目
きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比259円高の3万8211円と反発。日替わりで上下動を繰り返すが、全体商いが細るなか3万8000円台を猛然と突き進むようなパワーはないが、かといって3万7000円台を深く売り込むような悲観的なムードもない。そうこうするうちに株価のボラティリティも低下傾向となっている。半導体関連は総論として今は手が出しにくい。エヌビディアの決算を来週28日に控えている。同社の足もとの業績が飛ぶ鳥を落とす勢いなのは分かっているが、問題は今後の見通しである。見切り発車はできない。となれば、投資マネーの視線は自然と内需系銘柄に向く。
前日発表された訪日外客数は329万人と単月としては過去最高を記録。訪日客の急増でコト消費が刺激されている。例えば居酒屋などを含めた飲食関連はある意味でエンタメ的な要素があり、コト消費の延長という見方もできる。当然ながら、需要に対応してサービスを提供する側にすれば人手不足の問題がのしかかる。7月26日に鳴り物入りでグロース市場に新規上場したタイミー<215A>は、現代社会ならではのニーズに着目したスキマバイトサービス(バイト仲介アプリの運営)を展開するが、ここにきて株価は戻りトレンドに乗り、今週に入ってから連日で上場後の最高値を更新している。新値街道が7月の訪日外客数の発表とタイミングがほぼ合致しているのも、決して偶然とは言えない。
“タイミー効果”が他の銘柄にも波及する公算は小さくない。8月上旬の暴落局面でツレ安した銘柄も多く、その意味では時間軸的に今はバーゲンハンティングのチャンスともいえる。まず、戻り足が鮮明なツナググループ・ホールディングス<6551>をマーク。同社はアルバイトやパートに特化した採用代行業務を展開し、慢性的な人手不足に悩まされている小売りや飲食業界に重点を置いている点がポイントで、75日移動平均線越えから上値指向に勢いがつく可能性もある。また、クチコミ情報サイトを運営し、企業向け採用支援サービスも手掛けるオープンワーク<5139>は足もとの株価は調整を入れているが、押し目に買い向かって妙味がありそうだ。同社は21年12月期以降、大幅増益路線をまい進、24年12月期営業利益は前期比17%増と伸び率こそ鈍化するものの2ケタ増益で初の10億円台に乗せ、ピーク利益を更新する見通しにある。
同じく人材関連の低位株ではランサーズ<4484>の220円台のもみ合いは格好の仕込み場かもしれない。同社はIT系人材のマッチングプラットフォームを運営するが、こちらも需要と供給のバランスが極めてタイトで企業側の外注ニーズは高い。生成AI関連分野への布石も抜かりなく、25年3月期は2ケタ増収かつ33%営業増益を見込んでいる。
このほか、ここ最近はバイオ関連株への物色人気が再燃し、これがグロース市場の反騰機運にも貢献している。これはバイオ関連に限ったことではないが、8月上旬の暴落で、膨張していた信用買い残が投げ売りによって急激に収縮し、これによって株式需給面で上値の重石が外れたことが大きい。そのなか、激しい動きで目を引くのが、再生医療分野をフィールドとするセルシード<7776>。8月に入って全体パニック売り環境の中で信用買い残を逆に増加させるという異色の銘柄で、株価の上昇パフォーマンスも強烈だった。貸株市場を経由した外資系証券の空売りが高水準に積み上がるなか、買いを仕掛けている資金の方が強く、踏み上げ相場に発展した。同社株の動きは他のバイオ株に波及しそうだ。
商いは薄いが、DNAチップ研究所<2397>や免疫生物研究所<4570>の中段もみ合いは待ち伏せ買いの対象としては面白い。免疫生物研は5日・25日移動平均線のゴールデンクロスが目前であり、DNAチップも株価が上向けば5日・25日線GCが形成されるタイミングにある。また、バイオ関連のなかでもボラティリティの高さが際立つキャンバス<4575>も要マーク。600円台前半で瀬踏みを繰り返しているが、どこかで持ち前の瞬発力を発揮する可能性がある。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に開示される7月の全国消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。また、午後取引時間中には7月の全国百貨店売上高が発表される。海外では目立ったイベントは少ないが、米国で7月の新築住宅販売件数が開示される。また、ワイオミング州ジャクソンホールで開催されている経済シンポジウムでパウエルFRB議長の講演が行われる予定にあり、この内容が注目されている。(銀)