明日の株式相場に向けて=半導体の戻りか円高メリット株か
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1213円高の3万6833円と急反騰。前日までの7営業日で3000円以上の下げをみせていたが、きょうはその下落分の3分の1以上をまとめて返上し、一時は3万7000円台を視野に捉えた。大引け時点で値上がり銘柄数はプライム市場の94%を占めた。もっとも、これはAIアルゴリズムが主導する機械的なショートカバーによる影響が大きく、外部環境に大きな変化が生じたわけではない。日米の金融政策決定会合と自民党総裁選の行方が当面のビッグイベントとなるが、ここを通過するまでは相場も乱気流に揉まれる覚悟が必要となる。
今月は27日に投開票を控える自民党総裁選に否が応でもマーケットの視線が集中することになる。現時点の予想では得票数の多い順に小泉進次郎元環境相、石破茂元幹事長、高市早苗経済安全保障担当相というのが本線のようだ。そのなか、確固たる政策理念を持ち、政策論争でも頭一つ抜けているのが高市氏という印象が強い。出馬会見では「高市早苗氏の前に置かれたマイクの数の多さが目立った」(国内投資顧問系ストラテジスト)という。また、以前は会見で必ず掲げられていた日の丸が、今回高市氏のみだったということに、他候補とは一線を画すという指摘も出ていた。高市氏の経済政策の骨子は「税率を上げて税収を増やすという考え方」の全面否定である。アベノミクスを継承して日本を元気にするという高市氏の政策路線は実を伴うものであり、株式市場にとって好感度が高い。
しかし、自民党総裁の座に就くというのは永田町の力学に委ねられたもので、日本にとって最善の選択肢ではないことの方がむしろ多い。菅前首相の睨みが利いて小泉進次郎首相爆誕はかなり現実味を帯びている。そのシナリオに乗れば年内、最短で10月下旬にも解散総選挙が行われ、自民党勝利の構図を描けるというのが最大の理由だ。「(進次郎氏の新総裁選出を経て)国民支持をムード先行で取り込める時間帯に勝負をかける。株式市場的にも、海外投資家は郵政解散で聖域なき構造改革の旗印となった小泉純一郎元総理の息子ということもあり、日本買いを誘発しやすい面がある」(前出のストラテジスト)とする。
他方、米国では初の女性大統領としてハリス副大統領の可能性が高まったという見方が強まっている。暗殺未遂事件ではトランプ氏が強運を見せつけ、「もしトラ」ではなく「ほぼトラ」を引き寄せたようにみえたが、今回の討論会ではそれが覆されハリス氏がかなり優位に立ったという解釈である。米メディアの観測報道が鵜呑みにできないのは、2016年のヒラリーVSトランプでも実証済みだが、少なくともトランプ相場の先取りで上昇した銘柄群から足もとで投資資金が流出したのは事実だ。仮にハリス氏の勝利が色濃くなったところでリスクオフとは言えないはずだが、今後も波状的かつ仕掛け的な円高が誘発され、為替相場とリンクさせた日経225先物主導で振り回されるケースは増えそうだ。
SQ目前の大立ち回りが続く。きょうは円安連動で久々の急反発、半導体主力株が最後まで息切れせずに買いを引き寄せたことがこれまでとは違う風景である。しかし、これで主力銘柄の株価が本格的な底入れにつながると考えるのは時期尚早だ。23年年初以降の東京エレクトロン<8035>やディスコ<6146>を週足チャートでみて、ここから鋭角的に戻りに転じるイメージはどうにも湧かない。数カ月のもみ合いは必要であろう。半導体は中小型株の戻りが先行しそうで、狙うのであれば主力株以外に照準を合わせたい。
今が旬と言えるのが円高メリット株。時価総額上位の銘柄ではニトリホールディングス<9843>が象徴株の扱いになっているが、往年の仕手性を発揮してワークマン<7564>なども出遅れ修正に動き出す気配がある。このほか、円高メリットをテーマに目先マークしておきたい銘柄としては製糖で国内トップシェアのDM三井製糖ホールディングス<2109>、飼料大手のフィード・ワン<2060>、段ボール大手のトーモク<3946>、データセンターやラピダス関連でもある北海道電力<9509>などがある。
あすのスケジュールでは3カ月物国庫短期証券の入札、7月の鉱工業生産確報値など。また、この日は株価指数先物・オプション9月物の特別清算指数算出日(メジャーSQ)にあたる。海外では7月のユーロ圏鉱工業生産指数、ロシア中銀の政策金利発表。また、米国では8月の輸出入物価指数、9月の消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などにマーケットの関心が高い。(銀)