明日の株式相場に向けて=株高でも冷え込む投資マインド
きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比102円高の3万9380円と続伸。日経平均は朝方に大きく上昇して始まったが、その後は伸び悩む展開で後場寄り早々に3万9300円を下回り前日の終値に急接近、マイナス転換する寸前まで水準を切り下げる場面があった。米株高に追随する格好で日経平均やTOPIXなど上値慕いの動きを続けているが、個別株に焦点を当てるとどれも方向性が見えず中空を漂っているような状態。市場関係者も「買いたい銘柄が見当たらない相場」と口を揃える。
新政権発足でも物色テーマ不在というのが今の実態だ。米株高がストップすれば東京市場でも利食い圧力が一気に顕在化する可能性はある。石破首相の組閣人事で急浮上した防衛関連も三菱重工業<7011>を筆頭に上値が重く、かといって米エヌビディア<NVDA>の戻り高値更新で意気が揚がるかと見られた半導体セクターは、アドバンテスト<6857>の独り舞台の様相で他がついてこない。同社株は上場来高値圏で強さを発揮しているが、これについては「AI用半導体分野においてテスター(検査装置)が他の製造装置全般とは一線を画して需要が高いことが背景にある」(ネット証券アナリスト)と指摘する。ただ、半導体関連全般の人気復活には遠い。円安の恩恵も株価に作用していない。
では、内需株はどうか。8月の実質賃金が再びマイナスとなるなか物価高が個人消費マインドを冷やしている。きょうのイオン<8267>の急落などが、消費関連株の先行き不安を反映している。イオンの決算悪は皮肉にも賃上げが利益採算の悪化に拍車をかけたものだ。内需に資金を引き寄せる導線として期待された地方創生関連も買いが一巡し、ふるさと納税のチェンジホールディングス<3962>や産直通販サイト運営の雨風太陽<5616>の2銘柄の上値が重くなり、6連続ストップ高と爆発的人気をみせたセーラー広告<2156>は、前日から連続ストップ安モードに転じている。地銀株全般も冴えず、地方創生がテーマ性を帯びるような気配は感じられない。このほか、防災関連などもしかりである。
個別株については決算絡みでサプライズがあったものが単発高するパターンで、決算発表後に追撃しても妙味に乏しい。基本的に個別株は足もと様子をみるよりない相場環境といえる。今週はオプションSQ週ながら、全般商い低調で売り方の仕掛けも入らないような状況。その点では“閑散に売りなし”だが、買いも入れにくいというのが実態だ。
総選挙アノマリーが盛り上がりを欠いているのは、石破新政権が永田町の事情だけで成立した政権であることが見透かされている。インフレで庶民の生活が苦しくなっているところで、政治家の裏金問題が取り沙汰されたことは非常にバッドタイミングだった。加えて、その後の自民党総裁選も決選投票では政治家の保身が前面に押し出されたような結果で、総選挙での苦戦はやむなしである。衆議院の定数465議席に対し、現状は自民党が256議席で公明党と合わせて288議席。233議席でギリギリ過半数確保となるが、野党の足並みが揃わない中でさすがに56議席以上の減少(過半数割れ)には至らなそうだ。しかし、自民党の単独過半数割れはかなり濃厚のようだ。過去のデータでは総選挙後の株価上昇は自民党が単独過半数を確保することが事実上の条件で、その意味で今回は厳しい。
一つ光明があるとすれば、以前にも触れたが10月は外国人投資家の買い越すケースが際立って多い月であり、今回も米国株が強調を維持できればリスク許容度の上昇を背景に、アノマリーとしては一番期待できそうだ。ちなみに10月第1週(9月29~10月5日)は現物では4000億円近い買い越しで実に7週ぶりの買い攻勢に転じた。もっとも、先物では6000億円あまり売り越しており何ともいえない部分もあるが、先物売りは9月末の石破ショックの影響が反映された意味合いが強い。今後はそのアンワインドが全体相場に浮揚力を与える可能性があることも念頭に置いておきたい。
あすのスケジュールでは、株価指数オプション10月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日。また、朝方取引開始前に9月のマネーストックが開示される。午前中に3カ月国庫短期証券の入札が行われ、午後取引終了後には9月の投信概況が発表される。この日は東証グロース市場にオルツ<260A>が新規上場する。海外では韓国金融通貨委員会が行われるほか、9月の米卸売物価指数(PPI)、10月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などに市場の関心が高い。なお、香港市場は休場となる。(銀)