明日の株式相場に向けて=アドバンテストとレーザーテックの明暗
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比730円安の3万9180円と5日ぶり急反落。前日の寄り付きに4万円大台をあっさり回復した日経平均だったが、“うたかたの夢”だったかと思わせるような趣きである。きょうは朝方から先物主導で売りの集中砲火を浴び、取引を開始してわずか十数分後に3万9000円トビ台まで水準を切り下げた。前日の続きであれば4万円大台絡みの攻防というのが普通の流れだが、実際はそれよりも1000円下の水準で売り買いを交錯させた。
悪役となったのは日経平均寄与度の高い 半導体関連で、日経平均構成比率で第2位にランクされる東京エレクトロン<8035>が1銘柄で日経平均を240円あまり押し下げた。更に、プライム市場で売買代金首位となったレーザーテック<6920>は一時14%安と急落、売買代金だけでなく値下がり率でもプライム市場トップとなった。前日に1590円高と値を飛ばし、久しぶりにマーケットの視線を集めたのも束の間、きょうは3400円を超える倍返し以上の下げに見舞われ投資マインドをフリーズさせる格好となっている。
8月初旬の日経平均大暴落の残像が消えないなか、投資家にすればなかなか本腰を入れた投資はできない。黙って見ていればスルスル上がるが、積み上げた途端に崩されるパターンの連続ではテーマ株物色のような中期スタンスの買いは入れにくい。きょうの半導体関連にとって、出会い頭的な悪材料となったのが、オランダの半導体製造装置大手ASML<ASML>が誤って予定よりも1日早く発表した7~9月期決算だ。このフライング開示にマーケットはざわついたが、その内容もネガティブな要素をはらんでいた。7~9月期のEPSは市場予想を上回る一方、同期間の新規受注が事前コンセンサスから大幅に下振れた。25年12月期通期業績予想についても下方修正を発表し、売り攻勢を誘発。この日、ASMLは16.3%安と暴落したが、東京市場にもリスクオフの波が押し寄せた。
ASMLの決算の中身について市場では「生成AI用半導体向け装置は順調に伸びていることが確認できたが、それ以上にスマートフォン用メモリー関連の需要の落ち込みが全体収益にダメージ」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する。つまりAI用半導体向けは好調だが、それよりもパイが大きいメモリー全般については広帯域のHBMを除き、需要が低迷しているという現状が浮き彫りとなった。
そのなか、マスクブランクス検査装置でASMLと密接な取引関係を持つレーザーテクの下げが大きくなったのは半ば想定されたことだが、それ以上にアドバンテスト<6857>の底堅さが光った。これはアドテストがエヌビディアのGPU向け、つまりAI用半導体向けテスターで圧倒的な納入実績を有することで、他の半導体製造装置関連と一線を画す存在に位置付けられていることを示唆する。GPUはコアと称される演算回路の数が極めて多く、これに比例してテスター需要を大方の想定以上に強く喚起するという。
半導体関連については折悪しく、エヌビディア<NVDA>やアドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>などが製造販売する生成AI用半導体について、米政府が中東諸国を念頭に置いた国ごとの輸出規制を検討しているとブルームバーグ通信が報じたこともセンチメント悪化に拍車をかけた。まだその概要もはっきりせず、ここでの“検討報道”は売り方と組んでいるのではないかと思わせるようなタイミングであった。ともあれ、この押し目が半導体セクターにとって拾い場を提供しているのかどうかは、もう少し様子を見る必要がある。一つ言えることは、アドテストの相対的な優位性が一段と際立ってきていることで、今後もそのポジションが維持されるのかどうかも併せて注目となる。
あすのスケジュールでは、9月の貿易統計、8月の第3次産業活動指数、実質輸出入の動向などが開示される。個別企業の決算では国内ではディスコ<6146>が発表予定。また、台湾のTSMC<TSM>の決算発表に注目度が高い。海外ではトルコ中銀の政策金利発表、9月のユーロ圏消費者物価指数(改定値)のほか、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見に市場の関心が高い。このほか週間の米新規失業保険申請件数、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月の全米建設業協会(NAHB)住宅市場指数、9月の米小売売上高、9月の米鉱工業生産指数・設備稼働率、8月の米企業在庫、8月の対米証券投資など。米企業の決算発表ではネットフリックス<NFLX>が注目される。(銀)