来週の株式相場に向けて=トランプ流の「優勝劣敗相場」に突入か
8日の東京市場は、日経平均株価が一時400円を超える上昇となり4万円に接近した。しかし上値では売りに押され結局、前日比118円高の3万9500円で取引を終えた。
東京市場は中間決算の発表がピークを迎えつつあるが、7日時点では日経平均採用銘柄の連結PERは約16.1倍と割高ではないが、割安とも言いにくい水準。騰落レシオ(25日移動平均)も94%前後とこちらも中立的な水準にある。4万円が上値の節として意識されつつあるなか、大幅な円安進行による業績押し上げ効果などがなければ「相場の見通しに強弱感は対立しており、当面は高値圏での一進一退が続く」(市場関係者)との見方が出ている。
共和党トランプ氏が16年の米大統領選に勝利した後の「トランプ相場再来」が期待されているものの、「8年前とは景気サイクルが異なる」(アナリスト)との見方もある。当時は15年にチャイナショック、それに16年に英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)などがあり米国の景気は底から立ち上がる状況だった。しかし、今回は「米国は景気拡大の最終局面にあり、ここから大型の財政刺激策はインフレという形でしか吸収できないのではないか」(同)とも指摘されている。トランプ氏の財政拡大策は遠からず米金利上昇を伴うとの警戒感が強い。
トランプ氏の経済政策は、米国経済の「アニマルスピリッツ」を取り戻すこととも捉えられ、すでにナスダック指数の上昇などにそれは表れつつある。ただ、そこでは優勝劣敗が鮮明となる。16年のようにあまねく相場が上昇する「トランプ相場」が期待しにくいとなると、全体の中から恩恵銘柄を物色することになる。三菱重工業<7011>や川崎重工業<7012>のような防衛関連、フジクラ<5803>や古河電気工業<5801>のような電力設投関連は「勝ち組」となる一方、日産自動車<7201>やマツダ<7261>など自動車株は厳しい局面も予想される。長い目での優勝劣敗相場を勝ち抜くための眼が試されそうだ。
来週は経済指標では13日の米10月消費者物価指数(CPI)が注目されるほか、15日の米10月小売売上高なども関心を集めそうだ。また、14日にアプライド・マテリアルズ<AMAT>が決算発表を行う。国内企業の半導体関連では12日の東京エレクトロン<8035>、同日にはソフトバンクグループ<9984>が決算を発表する。14日には600社近い企業の決算発表が行われピークを打つ。
上記以外では、海外では12日にはドイツZEW景況感指数、13日に米10月財政収支、15日に米11月ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表される。国内では11日に10月開催分の日銀金融政策決会合の「主な意見」、12日に10月工作機械受注、15日に7~9月期国内総生産(GDP)が公表される。
11日にリクルートホールディングス<6098>、ブリヂストン<5108>、12日にINPEX<1605>、住友金属鉱山<5713>、13日に楽天グループ<4755>、TOPPANホールディングス<7911>、14日に三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、電通グループ<4324>などが決算発表を行う。来週の日経平均株価の予想レンジは3万8800~4万200円前後。(岡里英幸)