明日の株式相場に向けて=地銀株に師走の上昇旋風吹くか
名実ともに師走相場入りとなった2日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比304円高の3万8513円と反発。12月に入っても相変わらず五里霧中の相場展開で、きょうも朝方取引開始前に日経平均先物はプラスマイナスゼロの水準で、どっちに振れるか皆目見当がつかなかった。そして、寄り付きは前週末終値とほぼ同水準でスタートしたが、その数分後に160円ほど上昇したところで急反転、一気に下値を探る展開に変わった。取引開始後40分ほどで3万8000円台を割り込み、マーケットに緊張感が走ったものの、前場中盤を境に今度は急速な巻き戻しが入った。日経平均の5分足でみると朝方につけた大陰線と後場早々につけた大陽線が対比的であり、システマチックだが明確な理由が見当たらない。至近距離で相場と対峙すればするほどAIトレードに振り回される。後講釈で理屈を探す前に、もう次の動きが来るという感じでとにかく目まぐるしい。
為替市場の方は午前8時過ぎから一貫して円安方向に押し戻されており、ひと頃のような円安・株高のセットではなくなっていることが、最近の相場の特徴である。ひとつ言えるのは、半導体主力株はボリューム面ではディスコ<6146>とレーザーテック<6920>の順位が入れ替わったくらいで、依然として売買代金上位を占める銘柄が多いのだが、値動き自体は敗戦処理的なムードが拭えなくなっている。
対中国の半導体輸出規制がネックとなっているという見方だが、そもそも東京エレクトロン<8035>やレーザーテック、ディスコ、アドバンテスト<6857>といった銘柄が順繰りに最高値をつけに行く過程で、対中規制など耳にタコができるくらい聞かされてきた話である。株価が上がる時は少々の悪材料はノイズに過ぎず、地合いが悪くなると理由にされる。これは半導体関連に限ったことではないが、今は買い方が白けた状態で、売り方の動き(上値での空売りと下がったところでの買い戻し)が上げ下げの主動力となっている。
きょうはファーストリテイリング<9983>が朝方に大きく売られ日経平均押し下げ効果をもたらしたほか、資生堂<4911>なども下落が顕著で、中国関連株への逆風が意識された。日産自動車<7201>の最近の崩れ足も中国関連の側面で嫌気されている要素が大きい。例えば不買運動といっても、銘柄によっては多分に思惑先行の部分もあり、中国関連に位置付けられる銘柄で大きく値を下げたものの中には、買い場を提供しているケースも多いはずだ。しかし、日産自が会社解散価値の4分の1以下、PBR0.2倍台で買いが入ってこないという現実は、仮にイレギュラーであるとしても薄ら寒さを覚える。
一方、きょうの相場で光を放ったのは金融セクターだ。業種別値上がり率で33業種中1位が保険、2位が銀行であった。12月の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が強まっており、分かりやすく金利上昇期待で物色の矛先が向いた。もっとも、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>や第一生命ホールディングス<8750>などの大手を買うのが王道としても、短期トレード対象として妙味があるとすれば地銀セクターであろう。
きょうは 地銀株も全面高商状に買われたが、地銀株で値幅を取るうえでポイントとなるのは押し目買いを基本とすることだ。高値をつかむと引かされることも多く、陰線形成時に拾う方が有効なケースが多い。銘柄数が多く、株価も皆同じ背景で十把一絡げ(ひとからげ)で動くと言ってしまえば語弊もあるが、ファンダメンタルズよりも投資のタイミングに焦点を当てる方が実践的である。ただ、値ごろ感だけで選ぶと思わぬ落とし穴にはまるため、当然ながら業績内容は常にチェックしておかなければならない。個別では、堅実経営で知られる栃木銀行<8550>、大阪地盤でスタートアップにも傾注する池田泉州ホールディングス<8714>、福島県内2位の資金量を有し中小企業や個人向けで実績の高い大東銀行<8563>、同じく千葉県内2位で個人向けに強みを発揮する京葉銀行<8544>などを投資対象として目先マークしてみたい。
あすのスケジュールでは、11月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、午前中に10年物国債の入札が予定される。また、午後取引時間中(取引終盤)に11月の財政資金対民間収支が発表される。海外では10月の米雇用動態調査(JOLTS)が注目される。この日はクグラーFRB理事の講演が予定されており、その内容にマーケットの関心が集まる。(銀)