三井郁男氏【大納会まで5営業日、掉尾の一振なるか】 <相場観特集>
―日経平均は7日ぶり反発し一時500円超高、日米中銀イベント通過後の展望を探る─
日経平均株価は週明け23日、7営業日ぶりに反発し、3万9000円台を回復した。米国市場では物価指標の発表を受けて利下げペースが鈍化するとの見方が後退。12月に入ってからのNYダウの下げに一服感が出るなかで、日本株には円安基調も支えとなり、幅広く買い戻しが入った。日米中央銀行の金融政策決定会合を通過し、今年も大納会まで残すところ5営業日。年末にかけて株高の勢いが増す「掉尾の一振」の実現に期待が膨らむ時期に差し掛かっている。この先の相場展望について、アイザワ証券・投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏に話を聞いた。
●「目先はボックス圏で推移か、1月安値は押し目買いの好機に」
三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)
海外投資家がクリスマス休暇に入り、市場参加者が少なくなる局面にある。2025年は大発会が1月6日だ。国内休場中の海外市場の変動リスクを考慮すると、ポジションを一方向に傾けるのは難しい。年内は個人投資家による中小型株物色が中心の展開となるだろう。1月20日にトランプ次期米大統領の就任式が行われる。トランプ氏が自らのディールを有利に進めるための「口先介入」が相次いでいるが、就任式以降は新政権の具体的な政策が見えてくるようになる。トランプトレードがリセットされることによる米国株の調整リスクにも留意が必要だ。地政学リスクを含め、外部環境の不透明感が高まることとなれば、日本株に下押し圧力が高まっていく。ただし日経平均が3万8000円近辺まで下げた場合は、バリュエーション面での割安感が意識されることになる。
日銀は金融政策を遂行するうえで、春闘など賃上げ動向を注視する姿勢を示している。来年の春闘での賃上げレベルが今年と同じような水準となれば、所得環境の改善による消費の押し上げ効果が期待され、日本経済にとっては悪い話ではない。加えて、上場企業による来年の自社株買いの規模は、過去最高水準となった今年を上回る公算が大きい。企業業績の底堅さと需給環境を考慮すると、来年も株高が続くと想定でき、1月につけた安値は押し目買いの好機となるだろう。
企業による 設備投資も堅調に推移しそうだ。製造業の国内回帰や工場そのものの更新需要は、建設セクターに追い風となっている。選別受注の積極化など、利益創出に対する「こだわり」もゼネコン各社の姿勢から覗うことができ、大手の大林組 <1802> [東証P]や鹿島 <1812> [東証P]などに対する投資家の注目は一段と高まるだろう。関電工 <1942> [東証P]をはじめとする電力設備関連株はデータセンターや半導体工場の新設の潮流にあって、グロース株的なイメージを投資家に抱かせている。設備投資の観点ではファナック <6954> [東証P]やダイフク <6383> [東証P]などが候補に挙がるが、日立製作所 <6501> [東証P]も恩恵を受けるはずだ。電機大手のなかでは、三菱電機 <6503> [東証P]が防衛関連としても投資妙味を感じさせる。消費関連ではロイヤルホールディングス <8179> [東証P]が外食とともにホテル事業を展開しており、所得環境の改善によるプラス効果が期待できそうだ。ソニーグループ <6758> [東証P]や任天堂 <7974> [東証P]などゲーム関連企業についても、引き続き循環物色の対象となるとみている。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(みつい・いくお)
1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年近く続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。
株探ニュース