明日の株式相場に向けて=「ホンダ・日産」サプライズ統合で化ける株

市況
2024年12月24日 17時30分

きょう(24日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比124円安の3万9036円と反落。前日の米国株市場では主要株価指数が総じて高く、エヌビディア<NVDA>やブロードコム<AVGO>をはじめ半導体セクターが大きく買われた。これを受け東京市場でも朝方はアドバンテスト<6857>を筆頭に時価総額上位の半導体製造装置関連が一斉高に買われたが、打ち上げ花火のように早々に値を消す展開となった。クリスマス休暇で海外マネーの参戦が見込めず、薄商いのなか日経平均は狭いゾーンで弱含みもみ合いに終始した。

そうしたなかも、きょうはホンダ<7267>が全市場ベースで断トツの売買代金をこなし、株価もマドを開けて買われる異彩人気となった。これは日産自動車<7201>との経営統合の協議に入ったことを正式に開示したことに加え、返す刀で上限1兆1000億円という大規模な自社株買いを発表したことが背景にある。日産自も6%の大幅高。前週18日のストップ高以降も着実に投資資金が流れ込んでいる。

もっともホンダ、日産自の経営統合は素人目にも違和感が強く、果たして補完し合えるようなメリットがあるのか疑問に感じる人も多いはずだ。市場関係者は「日産自に対して台湾の鴻海精密工業が買収に向けた動きを強めていた。経営不振の日産救済というよりは経済産業省主導で買収阻止のために時価総額などの拡大を図った、いわば企業防衛の要素が強いようだ」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する。産業的観点では意味の乏しい合併でも、企業防衛を目的とした会社規模拡大を第一義とするものであれば合点がいく。

日産自は電気自動車(EV)分野など技術で強みを持っているが、25年3月期は期中2度にわたる業績予想の修正を行い営業利益段階で前期比74%減の1500億円と低迷が見込まれている。同社のPBRはつい最近まで0.2倍台だった。会社解散価値の約4分の1の水準に株価が売り叩かれた状態で、時価総額にして1兆数千億円程度の日産自を買収することは、売上高30兆円規模の鴻海にすれば極めて安い買い物となる。円安進行がアダとなり、ここぞと日本企業や、都心部の土地などを外資に買い漁られてしまう状況は歓迎できるものではない。近未来に次世代自動車という巨大マーケットが想定されるなか、自動車産業の要衝に触手が伸びるとなると、これは由々しき事態といっても過言ではない。

関潤氏といえば日産自時代に現社長とトップの座を争い、結果として会社を追われる形となった元ナンバー3で、ニデック<6594>(旧日本電産)に移籍した後、現在は鴻海のEV事業の最高責任者となった人物である。「日産をよく知る人物が巨大外資に鞍替えし、社内派閥争いでガタガタになった古巣へのリベンジ買収をかけている構図」(前出のアナリスト)という状況となった。これを阻止する動きが経産省主導のホンダとのスクランブル合併ということになる。ところが、「この合併もキャッシュリッチの鴻海にすれば買収の妨げにはならない。むしろ日産自のつもりがオマケでホンダもついてきたという状況で渡りに船というオチがつく。しかもオマケの方が商品価値は高い」(同)とする。

今後の自動車業界再編の動きにも注目が集まるが、外堀を越えていきなり本丸でこれだけ大きな動きが生じると、周辺銘柄への株価面への影響もかなりのマグニチュードとなり得る。俗な言い方をすれば変身銘柄の宝庫と化す条件を内在させている。そして、自動車部品セクターにおいては、日産自並みに超低PBRに放置されている銘柄が少なくない。今回三菱自動車工業<7211>を引き込む格好となったとしても、センターを務めるのはホンダにほかならず、この場合、「ホンダ系部品メーカー」は要注目となる。PBR0.1倍のエフテック<7212>を筆頭に、同0.3倍台のジーテクト<5970>、同0.5倍弱のエイチワン<5989>は、いずれも有配企業として驚くほど評価不足といってよく、今回の案件で株価の水準訂正に向けた動きが燎原の火のごとく広がるケースも考えられる。

あすのスケジュールでは、11月の企業向けサービス価格指数が朝方取引開始前に開示される。午後取引時間中には10月の景気動向指数の改定値が発表されるほか、11月の外食売上高が開示される。また、植田日銀総裁が経団連審議会で講演を行う予定でその内容に耳目が集まる。また、東証スタンダード市場にMIC<300A>と、アルピコホールディングス<297A>が新規上場する。海外では、クリスマスの祝日に伴い米国市場が休場となるのをはじめ、アジアや欧州株市場も休場となる国が多い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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