明日の株式相場に向けて=世界で奏でる「金利上昇」狂騒曲の危険度

市況
2025年1月9日 17時30分

きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比375円安の3万9605円と続落。今年は大発会に日経平均が600円近い下げでスタートし波乱含みのスタートとなったが、翌日は776円高と急速に切り返し、胸をなでおろした投資家も多かったのではないかと思われる。しかし、年前半はなかなか難しい相場展開を強いられそうな気配が漂っている。今週に限れば、AIアルゴリズムが闊歩するなか、先物主導で振り回されるのは想定の範囲内。週末に米国では12月の米雇用統計、それに先立って国内ではオプションSQ算出を控えていることもあり、思惑が錯綜しやすい時間軸にあった。

「外資系証券のオプション建玉をみると、日経平均4万円以上を期待する向きが多数派で、大発会翌日の7日に日経平均寄与度の高い半導体関連株への仕掛け的な買いもそうしたニーズを反映するものだった。ただ、ちょっと無理筋だったようだ。外資系の中では弱気のポジションを取るゴールドマン<GS>などは3万9500円ラインがベストプライスで、足もとではこの水準に日経平均が誘引されている」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。売り方の立場で主張する最大の“武器”は中国を除く「世界的な金利上昇」である。英国では政府の国債増発も影響して債券売りが加速、10年債利回りが4.8%目前まで上昇した。これは2022年の「トラス・ショック」と称される市場混乱時の水準を上回った。既に英国の長期金利はリーマン・ショックに遭遇した08年以来の水準まで上昇、一方で為替市場ではポンド売りに拍車がかかった。資本逃避の匂いを放つ危険な兆候だ。

米国では今月20日のトランプ政権移行後の関税強化の動きに債券市場が戦々恐々としている。前日は10年債利回りが一時4.7%台前半まで上昇し、約9カ月ぶりの高水準に達した。背景となったのは、米大統領就任が秒読み段階に入ったトランプ氏が、幅広い関税導入を速やかに進める目的で「緊急事態宣言を検討している」とCNNが報じたことで、にわかにざわつく状況となった。緊急事態宣言と関税がどうリンクするのか、一瞬耳を疑うが、これは国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくもので、IEEPAは「異例かつ重大な脅威がある場合」に、大統領が緊急事態を宣言して、外国為替や輸出入に規制をかけることができると定められている。ちなみに導入事例はまだない。

関税強化はトランプ流ディールの「見せ札」という解釈もあるように、公約通りアメリカ・ファーストを前面に押し出す手段にほかならない。しかし、これは同時に米国のインフレ再燃に向けた警戒感を強く喚起させるものとなっている。市場では「(米長期金利は)5%がデッドラインとして意識される。益利回りとの比較で、この水準に至っても株式の相対的な割高感が許容され続けることは考えにくい」(前出のマーケットアナリスト)とする。

問題は国内である。日銀は今後どういう舵取りをするのか。きょう朝方に発表された24年11月の毎月勤労統計調査では、名目賃金は前年同月比3.0%増と35カ月連続のプラスで、基本給にあたる所定内給与は2.7%増と32年ぶりの高い伸び率を記録した。しかし、物価の上昇には勝てない。名目賃金は上昇を続けても、物価の変動(前年同月比3.4%増)を反映した実質賃金は4カ月連続のマイナスとなっている。しかも、統計数字と庶民の体感温度とはかなりのカイ離があり、足もとのインフレはとても3%台で収まっているような感触はない。他方、植田日銀総裁は米トランプ政権が及ぼす経済に対する影響を警戒している旨の発言をしており、とすれば日銀が今月23~24日の金融政策決定会合で利上げカードを切るには、なかなか合理的な説明が難しい印象を受ける。

現状でマーケットは1月の会合において日銀が追加利上げを決定するシナリオを50%程度織り込んでいる状況にある。したがって仮に見送りの場合は、それなりのサプライズ効果があり、為替市場ではドル高・円安が加速する公算が大きい。例えば1ドル=160円を突破する形で加速度的に円売りが進んだ際に、株式市場は素直にポジティブ材料として捉え続けるのかどうか、これについては未知数の部分がある。

あすは株価指数先物オプション1月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日。このほか、11月の家計調査、12月上中旬の貿易統計、3カ月物国庫短期証券の入札、消費活動指数、11月の景気動向指数(速報値)など。海外では12月の米雇用統計に注目度が高い。このほか1月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)も発表される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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