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【エヌビディア②】すべてはデニーズから始まった<Buy&Hold STORIES-5->

特集
2025年1月14日 13時00分

Buy and hold Stories

エヌビディア<NVDA>
第1章Part2

第1章 ジェンスン・フアンとは何者か? 海を越えた異才が目指したもの

2.すべてはデニーズから始まった

【タイトル】©gguy - stock.adobe.com

激動のシリコンバレーでキャリアをスタート

1984年、21歳でオレゴン州立大学を卒業したエヌビディア<NVDA>創業者、ジェンスン・フアンは、大学時代に修めた電子工学と数学の知識を生かせる職場を求めて、大学のあるオレゴン州ポートランド近郊から南に1000キロ下ったカリフォルニア州シリコンバレーのある企業に就職する。インテル<INTC>と並ぶアメリカの代表的な半導体メーカーで、のちにグラフィックチップを巡ってエヌビディアのライバルともなるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>だ。フアンがAMDで働き始めたのは83年のことで、在学中からインターンを始めていたようだ。

AMDでフアンは、次世代型マイクロプロセッサの設計エンジニアとしてキャリアをスタートさせた。2年後の85年には同じくシリコンバレーの北側に本社を構える半導体企業、LSIロジック(現在はブロードコム<AVGO>傘下)に移籍。同社は日本での知名度は高くないが、アメリカ半導体企業の老舗でシリコンバレーの始祖とも言われるフェアチャイルドセミコンダクター(のちにオン・セミコンダクター<ON>が買収)出身者が79年に設立したスタートアップで、83年のナスダック上場時には、当時、技術系企業最大のIPOと騒がれた。同じくフェアチャイルド出身のジェリー・サンダースが設立したAMDとは同根の、当時は半導体のメインストリームを走っていた企業だ。

フアンはLSIロジックで、エンジニアとしてのキャリアだけではなく、マーケッターやマネージャーなども歴任した。特筆すべきは、同社が他の半導体メーカー同様、自社でウエハの製造を行う一方で、ある分野では東芝などの外部メーカーに製造を委託する方式を採用しており、ファブレス企業の先駆けとも言われていたことだ。さらに同社は当時、ソニー(現ソニーグループ <6758> )が開発を進めていた、「プレイステーション」に搭載されるグラフィックチップの製造を担っていたというから、ここでのキャリアがその後のフアンの人生に少なからぬ影響を与えたことは確かだろう。

この時期、フアンはロリ・ミルズと結婚。その後、2人の子供を授かっている。スタンフォード大学の大学院に通い、電子工学の修士号を取得したのもこの時期のことだ。日中は最先端テック企業で働き、夜は大学院で学び、そして休日には家族と過ごすという、シリコンバレーのビジネスエリートの理想像とも言える多忙な毎日を送っていたのだ。

80年代後半、シリコンバレーを中心とした世界のハイテク産業は激動の時代を迎えていた。80年代に入ってそれまで半導体の技術革新をリードしていたテキサス・インスツルメンツ<TXN>、インテルなどのアメリカ企業が、電卓やラジオ、テレビなど家電製品向けの技術開発で急速に力を付けた日立製作所 <6501> 、富士通 <6702> 、NEC <6701> 、東芝などにキャッチアップされ、日米半導体摩擦が激化。アメリカでは官民挙げての"日本企業叩き"が始まっていた。

パソコンの普及はまだずっと先の話で、インテルによるロジック半導体、CPU(中央演算処理装置)の開発も始まったばかり。半導体はDRAMなどのメモリーが主流だった。さらにこの頃、アメリカの有力メーカー同士でも熾烈な競争が繰り広げられ、より低コストでの製品開発を目指して生産拠点をアジアに移す動きが始まっていた。のちにこの流れが半導体製造のファブレス化を進め、台湾を世界のハイテク製造拠点へと押し上げるとともに、半導体の世界的なサプライチェーン構築へと繋がっていく。

一方、そうしたハイテク産業の核心的な部分とは別のところで、注目すべき技術革新が芽生えていた。グラフィック・コンピューティング技術の急速な進化である。そしてこの流れを導いたのは、アーケードゲーム機や家庭用ゲーム機で次々に世界的なヒット作を生み出した任天堂 <7974> 、セガ(現セガサミーホールディングス <6460> )、タイトー(現スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 傘下)などの日本のゲームメーカーと、これらのゲームを愛用した世界中の若者たちだった。

サブカルチャーに属するゲームと、最先端技術が集結するシリコンバレーの組み合わせには、あまりピンとこないかもしれない。だがコンピューターの黎明期に、多くの若き技術者たちをこのジャンルへと引き寄せるきっかけの一つとなったのは、ディスプレイを通してゲームに興じることができるという、人類が初めて味わう体験にあったといっても過言ではない。

例えばスティーブ・ジョブズは、世界初のゲーム専門会社、アタリでシステム開発者としてキャリアを積み、アップル<AAPL>の創業へと結び付けた。アマゾン・ドット・コム<AMZN>を創業したジェフ・ベゾスがコンピューターに覚醒したのも、少年時代に学校に忍び込んで夢中になった原始的なコンピューターゲーム体験によるものだった(「ウォール街の常識を覆したベゾス流キャッシュフロー経営とは」を参照)。もちろん、フアンも学生時代、ゲームには熱中していたという。彼らはゲームという新しい体験を通して、デジタル領域の創造性を刺激されたのかもしれない。

夢の始まり…デニーズで共有した若き技術者3人の思い

そんな時代を背景に、エヌビディアの物語が本格的にスタートする。まず創業時のエピソードとして挙げられるのが、これまで様々なメディアが伝えている、3人の若き技術者たちによる、デニーズ<DENN>での会社設立へ向けての作戦会議だ。

いま、シリコンバレーでの起業家たちのミーティングと言えば、

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