人的資本経営でビジネスチャンス拡大、「企業研修」関連が躍動の季節 <株探トップ特集>
―個々の社員に合わせた研修増加、リスキリング機運の高まりも追い風に―
4月は新生活がスタートするシーズンだ。大企業の多くは4月1日に入社式を行い、今年も多くの新社会人が誕生した。入社式を行った企業のなかには、入社式後に宿泊を伴う入社時新人研修を行う企業もあり、リクルートスーツに大型のスーツケースを引く若者も街には多く見られた。
このような入社時に行う新入社員研修以外にも、近年はキャリア形成のための企業研修が増加している。以前であればキャリアは入社した会社とともにあり、主に会社主導で一律に実践的なスキルを習得するような研修が多かったが、現在は個人のキャリア自律によってなされるべきだという傾向にある。企業研修も個々の社員に合わせたキャリア研修を行う機会が増加。 企業研修に関わる企業のビジネスチャンスも増えていることから、関連銘柄に注目したい。
●時代によって変化する企業研修
企業研修は時代によって変化している。2000年代初頭に多く見られたのがOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)といわれるもので、現場で実務に当たるなかで、さまざまな状況に対応できる幅広い専門性を身に付けさせることが目的だった。08年にリーマンショックにより経済状況が悪化すると、企業は研修を内製化してコストダウンを図るようになり、「人的資産の最大化」といった言葉も聞かれるようになった。
15年ごろからは、「タレントマネジメント」や「エンプロイーエクスペリエンス」といった概念が台頭。個々の従業員が経験から得られる価値を、いかにして向上させるかに重きが置かれるようになった。あわせて一斉に同じ研修で同じ教育を行うのではなく、個々の社員に最適化させた研修も登場し、自分で考え動く力を養うことを狙いとした「アクティブラーニング」もこのころから広がり始めた。
●市場規模は緩やかに拡大中
こうした研修の変化に伴い、企業研修の市場規模も緩やかに拡大している。矢野経済研究所(東京都中野区)が昨年8月に発表した「企業向け研修サービス市場に関する調査を実施(2024年)」によると、23年度の企業向け研修サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前の年度比4.3%増の5600億円と推計されている。
同社によると、新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行したことで、回復基調にあった集合研修(クラスルーム形式)の需要取り込みが加速。また、コロナ禍において集合研修の代替サービスとなってきたオンライン研修なども、潜在需要を引き出しながら堅調に推移したことがマーケットを牽引したという。
24年度についても、人的資本経営に取り組む企業の増加に合わせて研修サービス需要の拡大が見込めるとして、前年度比3.6%増の5800億円に拡大したと予測。また、各種スキル向上に向けた研修サービスへの需要は、たとえ経済が減退した状況下でも堅調に推移すると見込む。
●リスキリングも追い風に
また、22年に当時の岸田文雄首相がリスキリング(学び直し)支援として5年間で1兆円を投じると表明したことを皮切りに、リスキリングに対する機運が高まっていることも、市場の拡大に貢献している。従業員が新しい技術やスキルを学び、習得していくことで、新たな雇用が生まれる部門へ円滑に労働力を移動させることは企業にとってもメリットがあり、国が推進する人的資本経営に取り組むうえでも導入する企業が増えている。
少子化が進み就労人口の減少も避けられないなか、離職防止のためにも企業研修は重要度を増している。市場規模の拡大は当面続きそうだ。
●企業研修の関連銘柄
インソース <6200> [東証P]は、組織に講師を派遣するオーダーメイド型研修である講師派遣型事業と、1人から参加できるオープンセミナー型研修である公開講座事業が主力。足もとでコンテンツ数、講師数は順調に増加しており、25年9月期第1四半期連結営業利益は14億5900万円(前年同期比37.5%増)と大幅増益で着地した。特にDX関連のサービスラインアップの拡充に取り組んでおり、通期では同55億2000万円(前期比11.8%増)と2ケタ増益を見込む。
リスキル <291A> [東証G]は、企業向けの社会人教育事業が主な事業。ビジネススキル全般に関する「biz研修」と、IT未経験者向けのエンジニア・DX研修の「tech研修」の2種類のサービスをそれぞれ1社研修・公開講座・動画講座の3つの方法で提供している。25年3月期は単独営業利益6億6700万円(前の期比65.9%増)を予想しているが、第3四半期までの累計では同6億7400万円と通期計画を超過して着地している。
Schoo <264A> [東証G]は、法人向けのオンライン動画研修サービス「Schoo for Business」の提供が主な事業。汎用的なビジネススキルから専門スキルまで幅広いカテゴリの9000本以上のコンテンツを有し、研修から主体的なキャリア形成、学び続ける組織づくりまで体系的に支援している。25年9月期は、単独営業利益6億4800万円(前期比5.6倍)を予想。第1四半期は同1億2200万円で、会社側によると季節性を踏まえて想定通りの進捗としている。
アルー <7043> [東証G]は、オンライン研修の実施を中心に従来の集合研修など、状況を選ばない研修を提供。また、中国やシンガポールで海外現地法人向けの教室型研修も提供している。24年12月期連結決算は、既存顧客の大型リピート剥落の影響や海外派遣研修の外注費増加などで営業損益は6400万円の赤字に落ち込んだが、25年12月期は営業利益9100万円と黒字転換を見込む。
ライトアップ <6580> [東証G]は中小企業向け支援を主な事業としており、足もとではDXソリューション事業のAI活用研修が拡大している。25年3月期第3四半期累計連結営業利益は2億6500万円(前年同期比3.3倍)と大幅増益で着地。通期は同6億3100万円(前の期比97.6%増)を見込む。
ティーケーピー <3479> [東証G]は、全国に2000室超の会議室・宴会場・レンタルスペースなどを展開する貸会議室の大手。貸会議室・フレキシブルスペースの利用の2~3割が研修向けで、足もとではこれら研修向けや懇親会向け需要の堅調が売上高を牽引している。25年2月期の連結営業利益は59億円(前の期比28.0%増)を推定。決算発表は4月14日を予定している。
このほか、高校生に特化した新卒採用支援事業を主力に企業向け新人育成定着支援研修サービスなども提供するジンジブ <142A> [東証G]、次世代経営幹部候補や内定者から入社5年目までの若手の育成を支援するセルム <7367> [東証S]などにも注目したい。
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