手がかりがひしめく原油相場、次のテーマを探る局面に <コモディティ特集>
ブレント原油やウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)など、世界的な指標原油は安値圏で低迷している。石油輸出国機構(OPEC)プラスが自主減産の解消を急ぎ、追加増産していることが背景だ。7月も日量41万1000バレルの増産となる可能性が高い。アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は「需要は回復し、我々を驚かせようとしている」と述べているが、供給過剰を意識せざるを得ない。
一方、ウクライナ戦争の更なる長期化リスクや、イランと米国の核開発協議、イスラエルと米国によるガザ制圧・再建リスク、米国や日本のソブリンリスクなど、トレンドを生み出す可能性が高いテーマがひしめいている。米国がドライブシーズン入りすることや、供給過剰見通しによる原油安で米国の生産量が下振れする可能性が高いことも相場の軸となりうる。
●高まり続ける地政学的リスクが与える影響は
先週末、ウクライナとロシアは、双方がドローンやミサイルによる攻撃を実施した。報道によるとかなり大規模な衝突で、停戦協議が継続するのか不透明である。停戦を仲介しているトランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領は正気を失ったと述べた。口ぶりは明らかにウクライナ寄りである。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ米大統領は今週にもロシアに追加制裁を科すことを検討しているようだ。
米国とイランの核開発協議は先週末に5回目が終わったが、合意に近づいているのか不明である。米国はイラン国内でウラン濃縮を完全に停止することを要求している一方、イランはこれを拒絶している。ルビオ米国務長官によれば、イランがウランを濃縮することがイスラエルにとって脅威であるという。第1期のトランプ米大統領は、包括的共同作業計画(JCPOA)を一方的に放棄してイラン制裁を再開した経緯があり、イランにとってこの人物が信頼できる交渉相手であるとは思えないが、対話の行方を見守る必要がある。関税政策で朝令暮改を繰り返すトランプ米政権と合意することに何か意味があるのだろうか。
報道によると、イスラエル軍は今後2ヵ月以内にガザ地区の75%を制圧し、現地のパレスチナ人を3つの地域に封じ込める作戦を始めると伝わっている。プーチン大統領のウクライナ攻撃を非難するトランプ米大統領は、イスラエルとともにパレスチナ人の虐殺を続け、それでも生き残ったパレスチナ人を強制的に国外へ移住させてガザ地区を再建する計画だが、イランを含めた中東各国、あるいは世界はこの史上最大の非道を最後まで見守るのだろうか。
●トレンドを生むテーマがひしめくなか模様眺めの局面
最近の原油安を受けて、世界最大の産油国である米国では生産量が減少する見通しである。米原油生産の中心地であるパーミアン盆地では掘削リグが279基まで減少し、前年同時期の312基から下振れしている。原油相場が損益分岐点付近まで下落し、投資意欲が萎縮している可能性が高い。7月2日に米ダラス連銀が発表するエネルギー調査では、市況悪化による石油企業の悲鳴が一段と強まっているだろう。
OPECプラスの増産に抗う余地はなさそうだが、エネルギー相場の下落は産油国を圧迫していると同時に、消費を刺激する。米国のドライブシーズンにおける需給ひっ迫の可能性はかなり低いとしても、インフレに苦しむ米国の家計にとって、物価高と切り離されて低水準で推移するガソリン価格は数少ない救いである。イランやロシアを巡るリスクが相場を刺激しないとも限らない。原油価格のトレンドは弱気だとしても、手がかりを俯瞰しつつ、相場を眺める局面が続くか。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース