主要産油国が自主減産を完全に解消、生産枠と生産量の乖離が浮き彫りに? <コモディティ特集>
石油輸出国機構(OPEC)プラスの主要8ヵ国が日量166万バレル規模の自主減産の解消を決めた。10月から生産枠を毎月日量13万7000バレル引き上げる。この主要8ヵ国は4月から日量220万バレルの自主減産の解消を開始しており、来年には自主減産がすべて巻き戻されることになった。OPECプラス全体では日量200万バレルの協調減産が残されているが、主要産油国の最近の動きからすれば、自主減産だけでなく、協調減産の巻き戻しもいずれ視野に入るだろう。来月からの日量13万7000バレルの生産枠引き上げは小幅であり、今年4月から9月にかけてと同様に、巻き戻しが加速する可能性は想定すべきである。
●生産枠の拡大分ほどには生産量は増えていない
OPEC月報によると、4月のOPECプラス全体の生産量は日量4092万バレルで、7月は同4194万バレルだった。主要産油国は増産しているものの、生産枠超過分の補償などもあって、生産枠の拡大分ほどには実際の生産量は増えていない。ロシアの生産量は、ウクライナ軍による石油関連施設への攻撃や西側の経済制裁もあってやや限定されている。日量166万バレルの自主減産も含めて、すべての自主減産が巻き戻された後、実際の生産量がどれだけ増えているのか不透明である。
OPECプラスは4月から増産しているものの、ブレント原油やニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物など指標原油の推移からすると、市場参加者が懸念しているような供給過剰はまだ現実となっていないように見える。中国が原油在庫を積み増していることが相場を支えているのだろうか。イランとイスラエルの12日間戦争や、米国によるイラン核施設への攻撃もあって原油相場は荒ぶったが、増産が始まった4月以降の相場は安定している。主要産油国が原油価格の低迷による石油収入の落ち込みを供給量の拡大で補っているとすれば、その戦略は奏功しているようだ。
●実際の生産能力を確認する好機
上述したように、OPECプラスが全体として実施している日量200万バレルの協調減産は今のところ継続する見通しだが、自主減産が完全に巻き戻される過程で、OPECプラス中核国の実際の生産能力がある程度はっきりとする。主要産油国は生産枠を変動させて市場参加者と対話し、相場を安定させてきたが、2022年10月に開始された日量200万バレルの協調減産のほか、足元で話題となっている自主減産の長期的な効果は不明であり、自主減産の解消によって実際の生産能力を確認することは有意義であると思われる。
2022年以降の協調減産や自主減産が相場を支える場面はあったと思われるものの、サウジアラビアやロシアなど主要産油国が期待していたほどの効果が得られたのか疑問である。各国の生産能力に基づくベースラインを決め、生産枠を定めて減産を実施するこれまでの枠組みは、生産能力とベースラインの乖離によって、表面上の数字だけ独り歩きしがちである。設備投資不足が強まっている近年なら、なおさらである。実際の生産量がベースラインを下回っている場合、生産枠の引き下げ(=減産)は実質的な意味をあまり持たない。
実際のところ、OPECプラスの余剰生産能力はどれだけあるのだろうか。主要8ヵ国が自主減産を解消する段階で、生産枠まで増産できるのか確認する好機が訪れている。中核国のなかの中核国であるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が十分に増産できないような恐ろしい事態はありえないとしても、ウクライナ戦争で損害が積み重なっているロシアに生産枠の達成は難しいかもしれない。クウェートやイラクの設備投資は十分なのだろうか。生産枠からいったん離れて、OPECプラスの現実の姿をできる限り確認したい。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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