日経平均7万円台突入、「相場の賢人」の戦略が示す有望株選別のヒント <株探トップ特集>
―急騰と急落を繰り返す株式市場、FRB姿勢転換で攻守の手腕が強く問われる局面に―
日経平均株価が7万円台に突入した。ただし、その過程では幾度かの急落と急騰を繰り返すなど、ボラティリティ(価格変動性)の高い相場環境が続いている。高値波乱への警戒感がくすぶるなか、世界の主要な投資家らが防衛的なスタンスを取りつつ、ネットインフラやプラットフォーム・ビジネス銘柄に巨額資本を振り向けている事実は無視できない。この先の投資戦略を練るうえで、「相場の賢人」のポートフォリオは大きなヒントをもたらしていると言える。
●「利下げ幻想」の霧散と「利上げ傾斜」へのパラダイムシフト
米連邦公開市場委員会(FOMC)では大方の予想通り、政策金利は据え置かれたものの、会合参加者の今年末の金利見通しの中央値は3.4%から3.8%に引き上げられた。利上げ観測が強まるなか、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長が金利予想を示さなかったことも明らかになり、市場に動揺が走った。議長の記者会見後、トランプ米大統領がイランと戦闘終結の覚書に署名したと伝わったことで、投資家のリスク許容度が高まり、日経平均は史上最高値を更新することとなったが、6連騰中の日経平均の上げ幅は7000円近くに上り、相場の過熱感は一段と高まっている。
ウォーシュ新体制のもと、FRBが大きな転換点を迎えることになった事実は、過小評価するべきではないだろう。2026年初頭まで「年内複数回の利下げ」を確実視し、指数が過去最高値を更新してきた米株式市場において、このシナリオは完全に崩壊しつつある。その一因となったのは、皮肉にも米国経済の「想定以上の強さ」であった。直近の米サプライマネジメント協会(ISM)の各種景況感指数、米労働省が発表した雇用者数は、堅調な数字を示している。このうち5月の非農業部門雇用者数は17万2000人増となり、市場予想を大きく上回ったほか、過去2カ月分(3月・4月)の数値については合計で9万3000人も上方修正された。
この「労働市場の途切れない強さ」は、賃金インフレの定着につながる。利下げという潤沢な流動性の供給を期待して割高なバリュエーションを維持してきた株式市場にとって、金融政策の逆流は、この先のボラティリティを高める主因となるに違いない。
●フォーム13Fが示す「防衛的資本」の行方
こうしたマクロ環境の激変を前に、ウォール街の「スマート・マネー(賢い資本)」を動かす主要な投資家たちはどう動いたのか。その回答は、26年5月中旬に米証券取引委員会(SEC)へ提出された第1四半期(1~3月)の「フォーム13F(保有有価証券報告書)」に克明に刻まれている。
大口の投資マネージャーたちに義務付けられたこの開示資料を分析すると、一部の主要な投資家たちに共通のスタンスが浮かび上がってくる。彼らは全体として「圧倒的な売り越し」を決め込み、株式市場のポジションを縮小させて現金を確保する、極めて防衛的な姿勢を鮮明にしている。その筆頭が、投資の神様ウォーレン・バフェット氏が率いたバークシャー・ハサウェイ<BRK.B>だ。同社は長年維持してきたポートフォリオの大胆なスリム化を断行した。
バークシャーの株式保有総額は、25年末の約2740億ドル(40銘柄)から、26年第1四半期末には約2630億ドル(29銘柄)へと大幅に減少した。保有銘柄数を一気に3割近く削減し、ポートフォリオ全体の規模を縮小させたという事実は、彼らが市場環境を「極めて警戒すべき高リスク地帯」と判断したことの何よりの証拠である。
この動きはバークシャーに限ったことではない。他の主要投資家も、金利の先高観とインフレの再燃を前に、これまで積み上げてきた中小型株やシクリカル(景気敏感)株を容赦なく処分し、マクロ経済の嵐から資本を守るため防衛的に資金を退避させている。これが直近に発表されたフォーム13Fの底流にあるひとつの共通テーマであった。
●巨額資本が集中する先
しかし、金融市場の真の面白さは、全面的な退避行動の「裏側」にこそ存在する。彼らは株式市場全体に対しては財布の紐を固く締める一方で、「これこそが次世代の社会・経済の不可欠な基盤になる」と確信した特定の銘柄に対しては、貯め込んだ巨額のキャッシュを惜しげもなく、驚くほどの規模で集中投下しているのである。その資金の向かう先こそが、アルファベット<GOOG>というメガ・プラットフォーム企業であった。
デジタルインフラで覇権を持つプラットフォーマーは、強固な継続課金モデルと価格決定権を併せ持つ。景気の波に左右されにくく、法人の基幹業務や個人のインフラとして毎月確実にキャッシュが流入するビジネスを運営し、原材料費や人件費の高騰(インフレ)を、自社の製品・サービス価格に速やかに転嫁できるだけのシェアを確保している。
日本市場においてこの条件を満たす銘柄を挙げるとすれば、NTT <9432> [東証P]などの通信インフラ企業や、国内で圧倒的シェアを持つ SaaSプラットフォーム系企業ということになる。特にAI時代において、最も価値を持つのはアルゴリズムではなく「独自に蓄積された生データ」だ。日本固有の商習慣や生活基盤のデータを独占的にプラットフォーム内に囲い込んでいる企業は今後に大きく期待できるだろう。
米国市場が利上げに怯え、ボラティリティを高めることになれば、日本市場は無傷でいることはできない。日本銀行の断続的な利上げ観測や円安の揺り戻しを含め、26年後半の日本株市場は、これまでの「何を買っても上がる全面高相場」から、冷酷な「選別相場」へと移行する可能性もある。投資家が取るべき戦略は、市場全体のボラティリティに怯えて全てのポジションを解消することではない。ウォール街の巨頭がアルファベットの成長性に自らの命運を賭けたように、日本市場の「代替不可能なインフラ企業」を峻別し、嵐の最中にこそ冷徹に仕込み、ポートフォリオの核(コア)として据えることである。
フォーム13Fが明かしたウォール街の御託宣はシンプルだ。「全体には怯えよ、しかし本物のインフラからは逃げるな」。この教訓を胸に、我々は株式市場で真の勝者となりうる銘柄を見つけ出し、急落の度に買い仕込むといった作業を続けなければならない。以下に有望株をピックアップする。
●代替不可能なデジタルインフラを構築する注目5銘柄
ラクス <3923> [東証P]はクラウド経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」を展開。プロダクトの導入社数と単価を伸ばしつつ、解約率は低い水準に抑えている。クラウド事業の成長継続から、27年3月期経常利益は前期比17.5%増の205億円に伸びる見込みだ。4期連続で過去最高益を更新する予想で、「SaaSの死」の連想売りは過去の話となり、株価は3月を底に持ち直した。
Finatextホールディングス <4419> [東証G]は日本国内において極めて参入障壁が高いとされる「証券・保険の基幹システム」をクラウド化するBaaS(Brokerage as a Service)プラットフォームで事業を拡大。金融インフラの従量課金収益とビッグデータ解析の収益が急拡大している。27年3月期経常利益は前期比77.5%増の33億500万円と、3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。
企業間取引をデジタル化するプラットフォーマーのインフォマート <2492> [東証P]は、26年12月期第1四半期(1~3月)の経常利益が前年同期比64.4%増の9億5100万円に拡大した。フード業界に続く新たな業界特化型のサービスとして「コンストラクション(建設)事業」の強化を進めるべく、建設業者向け建築図面・現場管理アプリのスパイダープラス <4192> [東証G]と資本・業務提携契約を締結。2月には第一ライフグループ <8750> [東証P]との資本・業務提携も発表しており、今後の飛躍が期待されている。
JMDC <4483> [東証P]は健保組合などの医療データを匿名化し製薬・保険会社に提供するビジネスを展開。保有する日本最大級の医療実態ビッグデータは、製薬会社のエビデンス創出やAI創薬において「替えの利かないインフラ」となっている。27年3月期最終利益は前期比4.9%増の71億円に伸びる見通し。オムロン <6645> [東証P]とは親子上場の関係にある。
アイスタイル <3660> [東証P]は化粧品・美容の口コミサイトを運営。購買行動や美容に関するレビューを日本最大規模で蓄積する同社の「@cosme」のデータベースは、国内外の化粧品メーカーにとってマーケティング上の生命線となっている。同社はネット上の行動ログや口コミだけでなく、リアル店舗での購買データも統合している点に強みがある。26年6月期第3四半期累計(25年7月~26年3月)の経常利益は前年同期比19.4%増の30億2500万円。通期計画の38億円に対する進捗率は79.6%と順調だ。
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