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柏原延行(丸三証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

特集
2025年9月22日 10時00分

日米の株式相場が好調だ。S&P500種株価指数など米国の主要株価指数が最高値を更新。米株高を受けて日経平均株価も最高値を更新した。日本では石破茂首相の辞任表明を受けて、新たな経済政策への期待も浮上している。もっとも、トランプ関税の影響を受ける世界経済の見通しは不透明だ。米国では国境管理の厳格化などを受けたインフレへの懸念も根強い。トランプ米大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」と豪語したロシアによるウクライナ侵攻は収束のメドがつかず、イランを中心とした地政学的リスクも残る。

金融・資本市場が「トランプ相場」の様相を呈する中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第41回は、丸三証券の柏原延行常務執行役員に話を聞いた。

●柏原延行(かしはらのぶゆき)

丸三証券株式会社 常務執行役員 投資信託部長 チーフ・グローバル・ストラテジスト。1962年生まれ。大阪大学基礎工学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科修了。メガバンク系運用会社にて、一貫して運用部門でキャリアを重ねる。株式運用部長、企業調査部長、執行役員などを歴任。2019年 丸三証券株式会社入社、2021年より現職。

柏原延行氏の予測 4つのポイント
(1)半年後の日経平均株価は4万7000~4万9500円程度
(2)半年後のS&P500株価指数は6900~7300ポイント程度
(3)米国の経済政策が株高を後押し、日本の政局は見極め必要
(4)注目するのは米国株以外の地域を含む出遅れ感のある中小型株

――トランプ米政権による高関税政策にもかかわらず、日米株価は高水準で推移しています。一方で今後のインフレ懸念などリスクも指摘されています。半年後(2026年3月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。

柏原:私は半年後の日経平均株価を4万7000~4万9500円程度だと考えています。半年後の米S&P500株価指数は6900~7300ポイント程度で推移すると予測しています。

●日経平均株価(日足)

【タイトル】

――今後半年間は日米の株式相場は上昇を続けるということですね。予想の背景を教えて下さい。

柏原:米政権が7月にトランプ減税の恒久化などを盛り込んだ「減税・歳出法案(OBBB、一つの大きく美しい法案)」を成立させたことが大きいです。なかでも私が評価しているのが、適格固定資産の即時償却です。減価償却は5年などの長期間をかけて実施できるのが一般的な税制ですが、今回は100%即時償却です。こうした法人実効税率を引き下げる措置が企業の機械設備などの設備投資を活性化させ、米経済や株価を押し上げていくと考えています。

アイルランドでは1990年代後半から2007年まで急速な経済成長が続き、「ケルトの虎」と呼ばれました。高成長の背景には12.5%という世界的に低い法人税率がありました。米国でも法人税の実効税率が下がることにより、設備へのAI(人工知能)の導入や高性能の機械の導入が盛んになり、生産性向上やサプライチェーンの改善、収益拡大、雇用の安定につながると考えられます。

――米国ではインフレ懸念がくすぶっており、米国のGDP(国内総生産)の7割を占める個人消費に悪影響があるとの指摘もあります。

柏原:たしかにリスクはあります。ただ、個人消費は物価水準よりも雇用の影響を強く受けます。企業収益が拡大し、雇用が安定していれば、個人消費が大きく低迷するとは考えていません。米物価も比較的落ち着いています。8月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比2.9%と市場予想通りでした。

●米国消費者物価指数(CPI)上昇率の推移

【タイトル】

――米国のインフレ率が落ち着いていれば、米連邦準備理事会(FRB)も利下げをしやすくなります。

柏原:FRBは17日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で9カ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げました。2026年3月末までに再び利下げを実施するでしょう。市場は早めに利下げの影響を織り込むことになると思います。

トランプ大統領は大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長をFRB理事に指名しました。7月のFOMCではボウマン金融監督担当副議長とウォラー理事が金利据え置きに反対票を投じました。ミラン氏が加われば、正副議長を含む7人の理事のうちトランプ氏が指名した3人が利下げ支持になります。

――トランプ大統領はクック理事の解任も表明しました。クック理事が解任され、トランプ大統領が別の利下げ派の理事を指名すれば、利下げ支持は4人になります。利下げの環境が整えば、トランプ氏の望む利下げが過度に続くリスクはありませんか。

柏原:FRBが過度な金融緩和をするとは考えていません。高インフレの中でトランプ氏が「利下げしろ」と言っても、理事会がそのまま言うことを聞くとは思えません。米CPIは落ち着いているものの、上昇するリスクは一定程度あります。通貨価値を守ることも金融政策の重要な役割ですから、FRBは政治との折り合いをつけつつ、適切な金融政策を実施していくと考えています。

――米国がドルの基軸通貨としての価値を守っていくようであれば、ドル安政策は打ち出しづらいですね。

柏原:基軸通貨であることは大事ですが、ドルの過大評価は米国の製造業に大きな負担をかけています。安全保障の観点からいえば、弾薬などを作れないIT大手だけでは勝てません。足元で地政学的リスクは高まっており、米政府は製鉄など製造業の強化が必要だと考えているでしょう。このため、適度な利下げをして適正な為替水準を維持し、規制緩和を実施し、製造業を支援していくということになります。

――日本では石破茂首相が辞任を表明し、10月に自民党総裁選が実施される予定です。石破首相の辞任表明後、日経平均株価は大幅に上昇しました。今回の日本の政局が株式相場に与える影響をどう考えますか。

柏原:誰が次の首相になったとしても、中長期の株価への影響は政策次第です。短期的な株価の反応はあるにせよ、新政権が誕生しても明確な政策の方向性を市場が織り込むのは、すぐには難しいと思います。

――株式市場で注目するセクターは。

柏原:中小型株です。このところは米ビッグテックに資金が集中していますが、小さい規模の銘柄の成長性が高いことは株式市場の基本です。また、分散投資という意味でも米国以外の地域を含む中小型株への投資は大事です。なかでもテクノロジー以外の内需株、例えば情報通信や防衛関連、機械といったセクターの内需中心の銘柄に注目しています。

(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。

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