金は高値もみ合い、米利下げ織り込みも来年の見通しを確認 <コモディティ特集>
金の現物相場は11月、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しが支援要因になった。米金融当局者の利下げに慎重な発言に上値を抑えられたが、FRB理事らが利下げ支持を表明すると押し目を買われた。12月に入り10月21日以来の高値4264ドル台をつけたが、10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げを織り込むと、もみ合いとなった。労働市場の減速リスクが利下げの要因だが、インフレ高止まりに対する懸念が残っており、今回の米FOMCは前回同様、意見が割れるなかで利下げが決定されるとみられる。CMEのフェドウォッチで、今回の利下げ確率は87.4%(前月66.9%)となっている。来年は6月と10月に利下げが実施され、年末のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は3.00~3.25%になることが見込まれている。米FOMC後に各省庁から発表される経済指標で労働市場やインフレに対する見方を確認したい。
10月の米企業の人員削減数は前月比183%増の15万3074人となり、10月として22年ぶりの高水準となった。また、11月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は50.3と10月確報値の53.6から低下し、約3年半ぶりの低水準となった。米労働市場の大幅な減速や消費者心理の悪化が懸念されたことが12月の米FRBの利下げ観測につながった。ただ、9月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月から11万9000人増加し、事前予想の5万人増を大幅に上回った。失業率は4.4%と前月の4.3%から悪化し、約4年ぶりの高水準となった。米政府機関の一部閉鎖の影響で10月分は公表されず、11月分は12月16日に発表される。11月のADP全米雇用報告によると、民間雇用者数は3万2000人減と予想外に減少した(事前予想は1万人増)。10月の米企業の人員削減数は前月比53%減の7万1321人と減少はしたが、企業の採用計画の低迷が続いた。一方、9月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.8%上昇し、前月の2.7%上昇から小幅に伸びが加速した。事前予想と一致したが、2024年4月以来の大幅な上昇率となり、インフレ高止まりに対する懸念が残った。11月の米消費者物価指数(CPI)は12月18日に発表される。
●ウクライナ和平の行方も焦点
ロシアのプーチン大統領と米政権のウィットコフ特使が12月2日、モスクワで会談し、ウクライナ和平案について協議した。妥協に至らなかったが、米政権のケロッグ・ウクライナ担当特使は6日、ウクライナ戦争の終結に向けた合意は2つの主要な問題の解決にかかっているとの見方を示した。ドンバスなどの領土問題とロシアの管理下にあるザポロジエ原発と指摘した。ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、米国代表者との協議について容易なものではないとした。汚職で辞任したウクライナ大統領府長官は「ゼレンスキー大統領が領土割譲に署名することはない」と述べており、ロシアが実効支配する地域をウクライナが手放さなければ、どちらかが力尽きるまで戦闘が続くことになりそうだ。
一方、仏独首脳は米国が進めるウクライナ和平案に対し、ロシア寄りと反発している。ウクライナは数ヵ月以内に資金繰りが悪化する見通しで、欧州連合(EU)はロシアの凍結資産を裏付け資産とした融資などを検討している。ただ、ロシアのメドベージェフ前大統領はEUがロシアの凍結資産を奪えば、開戦を正当化する行為とみなす可能性があると述べた。ロシアの凍結資産活用の動きを受け、新興国の中央銀行は外貨準備分散のために金を購入している。
●米利下げ見通しで金ETFが買われる
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、12月8日に1049.11トン(10月末1039.20トン)となった。米FRBの利下げ見通しを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは11月4日時点で20万2307枚(前週20万4664枚)となった。米政府機関閉鎖が終了し、発表が再開されたが、正常化するのは来年1月23日の見通しである。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース