桂畑誠治氏【一時5万円台割れ、錯綜する思惑の先に見えるのは】 <相場観特集>
―東京市場は日銀の金融政策にらみ先行き警戒ムードが続く?―
15日の東京株式市場は日経平均株価が大幅反落、一時5万円大台を割り込む場面があった。前週末の米国株市場ではNYダウなど主要株価指数が揃って下落、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の下げが目立った。AI半導体関連に売り圧力が強く、この流れが東京市場にも波及している。今週末に日銀の金融政策決定会合も控えており、様子見ムードが強い。ただ、プライム市場でみても値上がり銘柄数の方が圧倒的に多く、売られているのは一部の主力大型株に限られている。年末から来年1月にかけての相場展望について、今回は第一生命経済研究所の桂畑誠治氏に意見を聞いた。
●「足もと不安定な値動きも下値リスクは恐れずに」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
前週末12日に日経平均株価は700円近い上昇をみせたのだが、週明けは一転して売り優勢に傾き、前週末の上昇分を吐き出す格好となっている。ただ、中期的に見てそれほど悲観に傾く要素は少ないといえ、基本は押し目買いの姿勢で報われる公算が大きそうだ。
今週18~19日の日程で行われる日銀金融政策決定会合では0.25%の利上げの可能性が高く、マーケットでもこれについてはほぼ完全に織り込んだ状態といってよさそうだ。注目すべきは植田和男日銀総裁の記者会見となるが、ここでは利上げについてもゆっくりしたペースで行う考えを示すとともに、基本的には実質金利がマイナスであることを主張し、マーケットの不安を煽るようなことはないとみられる。今回の決定会合で利上げを行ったとして、次回は来年の6月か7月ごろになる可能性が高そうだ。
一方、米国株市場の方は足もとで一部 AIや 半導体関連などの割高感が指摘されるものの、FRBによる金融緩和路線が強気相場の拠りどころとなる。次期FRB議長の人事にマーケットの関心が高く、現状はケビン・ウォーシュ氏とケビン・ハセット氏の2人に絞られた感があるが、どちらが選ばれても来年の金融政策については緩和的なスタンスが期待され、1月から2月にかけて次期議長がトランプ米大統領に指名された段階で、米株市場は上昇しやすい環境となる。実際は、どちらが議長に選出されても金融緩和政策が進むとは限らないのだが、いったんは好感する方向に作用しそうだ。NYダウの上値は5万ドル近辺、下値は4万6500ドル程度のゾーンを見込んでいるが、基本は強基調が維持されるとのシナリオだ。
米国株が堅調であれば、当然東京市場にも追い風となり得る。ここからの下値リスクは限定的と見ておきたい。年を跨いだ向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては下値が4万8000円程度、上値は最高値近辺である5万2500円前後を想定している。
物色対象としてAIや半導体関連の主力銘柄は、長い目で見た場合は時価近辺は拾っておいてよさそうだが、当面はスケジュール的にも株価にポジティブに働く材料は見込みにくく、短期スタンスで結果を期待するのは難しい面もある。他方、相対的に優位なのは銀行株で、ゆっくりとしたペースであっても中期的に金利が上昇傾向にある以上、順張りで対処できる。また、高市政権下での減税効果などを背景に、外食などを中心とした消費関連株なども継続注目の対象となる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
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