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逆風下の中小型グロース、インフレ時代に選別する2つのカギ

特集
2026年2月6日 10時45分

プロに聞く 気になる話題
東海林潤 三菱UFJアセットマネジメント チーフファンドマネジャーに聞く~1回完結

登場する銘柄
セイコーG<8050>、日本ドライ<1909>

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この記事を読んで分かること
1. 中小型グロースに今後吹く追い風
2. 逆風下に慎重に見るべき銘柄選別のポイント
3. 経営者の資質を見極める判断基準

大型グロース株や値がさ株が牽引する日経平均株価は最高値の更新が続く一方で、中小型グロース株は出遅れ感が否めない。

TOPIX(東証株価指数)をスタイル別で見ると、2024年末から足元までの1年超の騰落率は「Smallグロース」が+25%。一方の「Smallバリュー」は+48%と、グロースの伸びはバリューの半分程度になる。

その背景には、東証のPBR改革でバリュー株への関心が集まりやすいことや、日銀が利上げに舵を切ったことなどがある。金利上昇に伴い割引率が上がる局面では、将来の成長期待から株価が割高水準にある中小型グロース株の評価は下がりやすくなる。

こうした向かい風の局面で、運用のプロは中小型グロース株にどのように向き合っているのか。ボトムアップで中小型株をメーンとする投資信託を運用する三菱UFJアセットマネジメントの東海林潤チーフファンドマネジャーに話を聞いた。

(聞き手は真弓重孝、高山英聖/株探編集部)

東海林潤さんのプロフィール:
2012年、三菱UFJ投信(現・三菱UFJアセットマネジメント)入社。株式運用部では一貫して国内の中小型グロース株を担当している。調査・運用経験は10年超。担当ファンドは「Jオープン(小型株)」など。

バリュー優勢の状況が続く

――中小型グロースは厳しい状況が続いています。中小型グロースを中心に組み入れるファンド(投資信託)の運用担当者として、足元のマーケットをどう見ていますか。

東海林潤さん(以下、東海林): 当ファンド「Jオープン(小型株)」では、時価総額1兆円程度までの企業を「中小型」と位置づけています。

その中から、中長期で成長が期待できるグロース銘柄をボトムアップ・アプローチで選別し、各銘柄の組み入れ比率を精査したうえで現在は約90銘柄を運用しています。

こうした投資戦略を取る立場の感想としては、近年はバリュー優位の相場が続き、中小型グロース株に対しマネーが積極的に向かいにくい状況が続いています。

■「Jオープン(小型株)」の概要

名称Jオープン
(小型株)
運用会社三菱UFJ AM
形態――
設定2017年2月
為替ヘッジ――
基準価額2万6568円
純資産総額62億3800円
信託報酬(年率)1.34%
リターン(3年)12.99%
標準偏差(同)11.83
シャープレシオ(同)1.08
新NISAの対象成長
みんかぶ投信

注:26年2月4日時点。
三菱UFJAMは三菱UFJアセットマネジメント。

――2024年末から足元までのTOPIXのスタイル別指数を見ると、「TOPIX500」や「TOPIX Small」のバリュー指数は40%半ばから後半の上昇となった一方、同グロース指数についてはその半分以下の上昇に留まっています(下のグラフ)。

東海林: グロースとバリューをどのように定義するかにもよりますが、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などのバリュエーション(企業価値評価)指標で切り分けた場合、水準が高いグロース株は、金利上昇の影響を受けやすくなります。

理論株価の算定に用いられる割引率が上昇することで、バリュエーション水準が割高となりやすいグロース株には不利に働きます。

また東京証券取引所が23年から取り組む改革は、結果的にバリュー株への関心を高めました。東証改革の本質は企業価値の向上を促すことにあります。企業の収益力のさらなる強化を求める点で、その対象はバリュー株もグロース株も同じです。

しかし、改革が始まると「PBR1倍割れ」や「株主還元」に関心が高まり、株価水準が底上げされるとの期待などから、マネーはバリュー株に流れていきました。

さらに米国の金融当局が22年3月から利上げ政策に転換し、勢いも強かったことで円安が急速に進み、輸出企業の多い大型株が選好されやすい地合いとなったこともあります。

足元では日米の為替介入の思惑から一時的に円高に振れていますが、円安に向かう要因が根本的に解消されたわけではありません。為替動向からも、内需株の多い中小型グロースに資金が向かいやすい環境とは言いにくい状況です。

■グロース相場とバリュー相場のスタイル別騰落率(2024年末~)

【タイトル】

出所:東証。注:期間は26年2月5日まで

「情報・通信業」へ積極投資してきたが…

――「Jオープン(小型株)」のパフォーマンスは、2024年末から足元までの約1年間で27.7%と、参考指標の小型株指数「ラッセル・野村スモールキャップ」(34.4%)を7%ポイントほどアンダーパフォームしています。

東海林: 参考指数対比で見ますと、中長期的に高い成長が期待できると判断した情報・通信業などのグロース株への積極的な投資がマイナスに影響しました。

バリュー優勢の相場環境の中で、「ポートフォリオをバリューに寄せれば成績が上がる」可能性はあるかもしれませんが、ブレずに中長期で持続成長が期待できる企業のピックアップを徹底してきました。

■「Jオープン(小型株)」と「ラッセル・野村スモールキャップ」のパフォーマンス比較

【タイトル】

出所:『QUICK』、注:2024年末=0%、月次ベースで期間は26年1月19日まで。

銘柄数は、中長期の成長が期待できる銘柄を積み上げた結果

――ポートフォリオに組み込む銘柄数を絞り、競争優位性がより強い銘柄に資金を寄せて高いパフォーマンスを狙うという戦略もありますが。

東海林: 足元の組み入れが約90銘柄になっているのは、銘柄分散を意識したというより、中長期の成長が期待できる銘柄を積み上げてきた結果です。

一方で、中小型株は大型株に比べて、不測の事態に巻き込まれた際、流動性などの面でリスク管理上の配慮がより求められます。特定の銘柄に資金を集中させることがファンド全体の利益になるのかを、慎重に見極める必要があります。

今後の注目は「実質賃金のプラス転換」「地政学」「グロース市場改革」

――こうしたファンドの運用方針を踏まえたうえで伺います。2026年は、中小型グロースに追い風が吹くとしたら、どのようなシナリオが考えられますか。

東海林: 主に3つあります。実質賃金のプラス転換と、地政学リスクの高まり、東証によるグロース市場改革の進展です(下の表)。

1つ目の実質賃金について、政府は2025年度末にかけて物価の上昇ペースが落ち着き、プラス転換するという見通しを出しています。さらに26年度の実質賃金の上昇率は25年度から1%程度のプラスになる見込みです。物価上昇率が低下する中で、名目賃金の伸びが維持されるためだとされています。

実質賃金が改善して国内消費が盛り上がれば、内需株の比率が高い中小型株にマーケットの関心が向かう可能性があります。

2つ目の地政学リスクに関しては、特定の国・地域で政治的緊張が高まるのは非常に残念ですが、市場の見方としては外需株より内需株が選好されやすくなります。その結果、中小型グロースへの関心が高まる要因になり得ます。

■中小型グロース株の追い風要因

要因注目点
実質賃金のプラス転換国内消費が盛り上がれば、内需株に資金が向く可能性
地政学リスクの高まり外需株より内需株が選好されやすくなる可能性
東証グロース市場改革プライム・スタンダード市場改革での成果を受け継ぐか

――3つ目のグロース市場改革は、東証が上場維持基準を「上場10年で時価総額40億円」から「上場5年で時価総額100億円」に引き上げ、また「高い成長を目指した経営」への対応を要請するものです。ただし、時価総額の新基準導入は2030年の決算期からで、即効性を期待しにくい面もあります。

東海林: 基準の適用を30年より前倒しにすべきという意見もありますが、企業側から見れば、今日明日の一朝一夕で取り組めるものではない面もあります。適用までに時間はあるものの対応を目指して改革に着手する動きが始まり、その効果が新基準の適用前から表れることも期待できます。

当ファンドの運用対象は「中長期的な成長を期待できる企業」です。その点で、時価総額の新基準導入の時期よりも、一連の改革によってグロース上場企業が中長期の成長に今よりも真剣に取り組むことに意味があると見ています。

――Jオープンの組み入れ銘柄の市場別割合は25年末時点で、東証プライム銘柄が81.5%であるのに対し、グロース銘柄は9.5%です。このポートフォリオからは、グロース市場改革の恩恵は限定的になるのでしょうか。

東海林: 当ファンドが組み入れ候補にするのは、成長企業であることが一丁目一番地になります。どの市場に上場しているかは大きな問題ではありません。

足元のポートフォリオでグロース銘柄の割合が低いのは、魅力的な成長企業がプライム銘柄に多く存在するからに過ぎません。

東証改革では、いわゆる「PBR1倍割れ銘柄」や「親子上場の解消」「政策保有株の解消・縮減」などが一定の効果を発揮してきました。

この流れがグロース市場改革に受け継がれ、成長期待の高いグロース上場企業が増えれば、より積極的にリサーチを行う可能性があります。

東証は今年から「高い成長を目指した経営」の要請に対応しているグロース上場企業のリストを公開しています。こうした資料も確認しながら、投資機会を逃さないようにしたいと考えています。

■上場区分別の資産構成割合

上場区分Jオープン
東証プライム81.5%
東証スタンダード7.4%
東証グロース9.5%

出所:月次リポート(25年12月)。
注:国内株式のみ

銘柄選別のポイントは「維持する部分」「変えていく部分」を区別

――今後、好成績を残すためにどんな戦略を立てていますか。

東海林: 銘柄選別の根幹となるものは維持しながら、そのうえで時代の変化に合わせて調整すべき点は見直していきます。

改めて当ファンドの銘柄選別の根幹を整理すると、主な条件は

・グロースドライバー

・独自性の高いビジネスモデル

・高い競争優位性

――になります。理想は3つすべてを備える企業ですが、いずれか1つでも際立っていれば投資対象に加えています。

最初の「グロースドライバー」は、経済の構造変化や産業政策などの追い風があり、製品・サービスの需要の伸びが中長期的に期待できるかどうかを指します。産業政策を例にすると、足元は経済安全保障の観点からAI(人工知能)や半導体、航空・宇宙などの産業強化が掲げられています。

「独自性の高いビジネスモデル」と「高い競争優位性」については、共通する部分もありますが、当ファンドでは区別しています。

前者については業界内で独自のポジションを築き、収益性を高めやすい事業構造であることを指し、後者については一定の競合が存在しても、差別化要因を持ち持続的な成長を見込めることを指します。

■Jオープン(小型株)の組み入れ上位10銘柄

順位銘柄名<コード>業種割合
1バイセル<7685>卸売業2.8%
2メイコー<6787>電気機器2.8%
3セイコーG<8050>精密機器2.6%
4日本ドライ<1909>機械2.6%
5楽天銀<5838>銀行業2.4%
6インフロニア<5076>建設業2.3%
7Genky<9267>小売業2.3%
8中国塗<4617>化学2.3%
9カチタス<8919>不動産業1.9%
10デクセリ<4980>化学1.9%

出所:月次リポート(25年12月)

今後の鍵は「インフレ定着・金利上昇」に即した選別

――これらの根幹を維持しつつ、銘柄の選別スタイルをどう時代に適応させていきますか。

東海林: 時代の変化で何より大きいのは、日本が約30年続いた「デフレ・超低金利」局面を脱し、「インフレ定着・金利上昇」へと環境が変わりつつある点です。

こうした変化を踏まえ、銘柄選別では次のポイントを慎重に確認しています。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 「インフレ定着・金利上昇」局面で見るべきポイント

 

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