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米・イラン核協議は行き詰まりへ、イラン強気の背景にあるものとは? <コモディティ特集>

特集
2026年2月18日 13時30分

今月6日から米国とイランの核開発協議が始まった。外交的な協議であるとはいえ、米国はエイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群を中東に展開し、追加で最新鋭の空母であるジェラルド・R・フォードも向かわせており、イランに対する軍事的な圧力は十分である。ジェラルド・R・フォードは今月中にも中東に到着する。

米国は軍事的な威嚇だけでなく、経済体な圧力も欠かしていない。米国はイランと取引を行っている国からの輸入品に追加関税を課すこと発表しているほか、イスラエルと米国はイランの中国向け原油販売などに関してイランに最大限の圧力をかけることで合意したと報じられている。米国がイランの海洋封鎖を検討したとの報道もあり、イランの弱体化を狙った動きには事欠かない。昨年に続き、米国のイラン攻撃があるのかどうか今のところ不透明だが、できる限り経済的に疲弊させてから軍事行動を実施するのが定石だろう。

米国の経済的・軍事的な攻撃の最終目標は、イランの反米政権の破壊だと思われる。米国の最も重要な同盟国であるイスラエルにとってイランは最大の脅威であり、イスラエルのパレスチナ併合に向けた障害である。極右が目指す大イスラエル構想のなかでパレスチナ接収は計画の入口だ。

●まるで噛み合わない両国の主張

米国がイランに政権を転換するよう主張したところで言い分が通るはずもなく、両国はとりあえず核開発について協議するようだ。イランとしては核兵器を保有しないことをすでに確約しており、ウラン濃縮レベルの制限を提案し、米国に制裁緩和を求めていく方針だ。イランは平和的な核開発を続ける方針である。

ただ、米国の要求は核開発問題に限らない。ルビオ米国務長官は「合意に達するためには、弾道ミサイル計画、核計画、代理勢力への支援が議論されなければならない」と述べている。また、イスラエルのチャンネル14によるとトランプ米大統領は、核開発計画の完全な停止、濃縮ウランをイラン国内から撤去すること、ウラン濃縮能力の排除、ミサイルの射程距離を300キロメートルに制限すること、フーシ派など代理勢力の支援停止、イランに対する強度の監視体制の確立を望んでいるという。イスラエルのネタニヤフ首相のイランに対する要求とほぼ一致する。

●米国債の不安定化リスクを抱える米国は攻撃を開始できない?

イランは最小限の提案で、米国が実施している経済制裁を和らげたいようだが、今のところ米国と主張の溝はかなり深い。というよりも、まるで噛み合っていない。イランの提案は強気で、中東戦争に備えているようにしか見えないが、イランは米国が攻撃を開始できないと踏んでいる可能性がある。なぜならば、中東最大の軍事大国であるイランと米国が全面的に衝突した場合は戦争の長期化が予想され、イランは米国が戦費の拡大や債務不安に耐えられないと想定していると思われる。トランプ米政権のもとでも米国の債務残高は膨張を続けており、米国債利回りが急激に上昇する場合、自滅するのは米国である。米国の債務不安は 金相場を押し上げドル離れを促し、米国債市場への資金流入を限定する可能性が高く、中東戦争は原油高を誘発しインフレ懸念も相まって米国債市場を圧迫する。インフレ懸念は金相場も刺激する。

中東戦争は原油や金相場に資金流入を促し、ドル相場や米国債市場を不安定化させる可能性が高いという読みがイランを外交的に強気にしているのではないか。交渉はイラン有利で進みやすいと思われる。ただ、米国がイランの主張を受け入れる可能性はかなり低い。イランの主張に基づいて合意したところで、米国やイスラエルが得るものはないためである。イランもこの点については重々承知しているだろう。

何事においても軍事力を全面的に利用する米国にとって「力こそが正義」である。米国による強制的なベネズエラの現状変更を世界が受け入れたように、イランで何が起ころうとも世界は米国の主張を容認するだろう。中東最大の反米政権が消えて石油を中心とする膨大な資源が手に入るなら、トランプ米大統領はリスクに目をつむる可能性がある。米国債市場がはらむリスクは金融史上最大だが、米政府は債務残高を抑制することなく、むしろ気兼ねなく膨張を加速させており、米国債市場の不安定化をいつまでも乗り切れると高をくくっているのではないか。トランプ米政権の選択肢は最初から一択であると思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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