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億トレ・ガチホ企業~JALCOの強さと課題-最終回
| JALCO<6625> |
・前回記事「電子部品とサヨナラしたら『利益500倍』『株価10倍』」を読む
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| この記事を読んで分かること |
| 1. 業態転換で成功したポイント |
| 2. 株主還元の考え方 |
| 3. 中興の祖が裸の王様になるのを防止する方法 |
田辺社長がEBITDAを重視するのは、借り入れ調達が大きい不動産業ゆえの面もあるが、原点は前身のジャルコにある。いくら電子部品という成長産業に身を置いていても、キャッシュを生み出せない限り経営は立ち行かなくなることを肌で感じた。
その結果としてキャッシュ重視の経営に舵を切ると、株価は2011年の底値30円台から、足元では400円前後に大化けした。
シリーズ最終回は、保有資産1兆円を目指す成長途上の段階でも「累進配当政策」を採用した理由や、長期政権で裸の王様にならないように心がけている点などについて、田辺社長自身の言葉で語ってもらった。
メーカー時代のJALCOは「今と真逆」
――田辺社長がJALCO<6625>の経営に加わったのは2009年6月、トップに就任したのが11年2月です。当時のJALCOは電子部品メーカーで、11年3月期は8期連続の赤字と厳しい状況が続いていました。
田辺順一社長(以下、田辺): メーカー時代はコネクターなどの開発・製造を手掛けてきました。いつ倒産してもおかしくない状況で、時価総額が6300万円まで落ち込んだこともあります。
苦境に陥ったのは外部環境の影響を受けた部分もあるかもしれませんが、最大の要因は売れるかどうか分からない段階で先行投資し、開発を進めなければならない事業構造だったことです。
着実に回収できるメドが立たない中での先行投資は、今振り返っても、非常に恐ろしい状況でした。
■JALCOの田辺順一社長

現在のJALCOのビジネスは、当時とは真逆です。主力であるパチンコホール(以下、ホール)の不動産事業は、どれくらいのリターンを見込めるのかを想定したうえで収益物件を取得できます。その想定もこれまでの実績の延長線から大きくそれる可能性は低く、その点で確度を高められるものです。
加えてホール物件は、ほかの不動産と比べても安定しています。商業施設や賃貸マンションのようにテナントが頻繁に入れ替わることが少なく、入れ替えに伴うコストもかかりにくい。
さらに言えば、パチンコは嗜好性が高く、常連客がつきやすい業態です。そのため稼働率も比較的安定しやすい傾向があります。
――JALCOの保有不動産には商業施設もありますが、ホールと同様の高利回りを安定して見込めるのですか。
田辺: 商業施設への投資はホール不動産に本格進出するにあたって経験を積むために始めたものです。そうした経緯もあることから、現時点で当社にとって重要なのは、あくまでもホール不動産の収益性になります。
■『株探プレミアム』で確認できるJALCOの通期業績の長期・成長性推移

「偏差値55の稼働率」でも、着実に稼げる市場構造
――業態転換で最初にホールを取得したのが14年3月期。この年に11年ぶりの黒字を計上すると、それから今期を含めた13期のうち営業減益となったのは2期に留まっています。
田辺: 減益を極力回避して来られたのは、稼働率を重視して物件を取得してきたことが大きい。
当社がターゲットにする稼働率は、原則32%以上です。全国の平均稼働率は足元で28%ですから、それを4%ポイント上回る水準になります。偏差値でいえば、平均より少し上の「55」以上を狙うイメージです。
32%というと、それほど高くないように感じるかもしれません。しかし、全国の約6700店舗のうち、75%が黒字経営です。こうした環境下では、平均を少し上回る稼働率の物件を押さえられれば、安定した家賃収入を確保できるのです。
――稼働率は、地域によって高低がありますか。
田辺: 都道府県別に見ると、平均稼働率が比較的高いのは、沖縄県もありますがやはり東京都や神奈川県といった大都市圏です。具体的には東京は30%、神奈川は31%と、全国平均の28%を2~3%ポイント上回っています。
一方、鳥取県や島根県は低めで、稼働率は22~23%と全国平均を5~6%ポイント下回っています。こうしたエリアでの物件は、慎重に見極めています。
稼働率以外で、注視しているのが「安定性」です。直近の稼働率が良くても、過去に大きく落ち込んだ時期がある場合は、今の好調が維持できるのか他の物件以上に精査します。
こうした基準で選んできた結果、保有物件の中には、3時間分の売り上げで1カ月分の家賃をまかなえる「超優良ホール」も出てきています。
■ホール物件の保有状況
| 展開エリア | 16都道府県 |
| 店舗数 | 36店舗 |
| 保有金額 | 767億円 |
出所:IR資料。注:25年末時点
課題は、価値の伝わりにくさ
――ホール物件を資産として積み上げてきた一方、大きな転売収入などがある年とない年では業績に凸凹が生じ、業績に安定感が欠ける印象もあります。
田辺: 当社のビジネスは、良くも悪くも「分かりづらさ」が特徴です。その分かりづらさがあるからこそ、参入企業が増えず、ブルーオーシャンで戦えている面があります。当社の課題は、こうした事業価値が市場に浸透しにくい点です。
前期末の保有不動産は時価で約770億円あり、そのうち約100億円が含み益です。ただ、この含み益は売却した段階で、その価値が具体化します。
この現状も踏まえて進めているのが、私募REIT(不動産投資信託)構想です。物件の一部を売却して含み益を現金化し、収益力の高さを分かりやすい形で示していきたいと考えています。
注目してほしいのは、キャッシュを生み出す力
――JALCOは、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を期首自己資本で割った値を重視しています。なぜ、この指標なのでしょうか。
田辺: 我々はKGI(重要目標達成指標)として掲げています。この値は、株主から預かったお金で、どれだけのキャッシュを生み出したのかを示します。機関投資家が注視する指標の1つですが、投資家に限らず経営者にとっても重要な指標と考えています。
目安は15%以上で、これまで最低値でも14%台と、ほぼ基準は守ってきました。直近5年での最高は44%台です。今後は決算期によっては60%に届くこともあり得るでしょう。
当社が効率よくキャッシュを生んでいるのか。その把握は、この指標を見て判断できると考えています。
株主還元は責務
――生み出したキャッシュの使い途として、配当政策についてうかがいます。JALCOは減配しない「累進配当」を採用していますが、成長途上にある段階では「成長投資を優先すべき」との考えもできます。
田辺: 株式会社は株主から預かったお金で事業をしていますから、稼いだキャッシュをしっかり還元していくことは重要です。
我々の姿勢は、自己資本に占める利益剰余金の割合に表れています。2025年末時点で自己資本は172億3500万円、そのうち利益剰余金は27億6300万円と16%です(下の表)。
当社のような銀行借り入れが多い会社は、還元に回さず利益剰余金を積み上げて自己資本に厚みを持たせた方が信用力を高められ、資金調達に有利に働くという考えもあります。
ただ、先に触れたように当社には、大きな含み益を持つホール物件という担保があります。運営するホールに「見えないキャッシュ」があるのであれば、利益を必要以上に貯め込むことは不要で、株主に還元するのが使命だと考えています。
――田辺社長は資産管理会社を含めると保有割合が約30%になる大株主です。株主還元を受け取ることは、業績を向上させるモチベーションになりますか。
田辺: 私に限らず、当社株を持つ社員にとってもモチベーションの向上につながります。
当社は社員が当社株を保有する際に、年収の6倍まで支援する制度を設けています。保有額が多ければ、それだけ株価の上昇や配当の増加の恩恵を受けます。
当社は上場企業といっても、伝統のある大企業と比べれば人材力で大きく劣ります。そのビハインドを少しでも縮めるには、社員が株主と同じ目線を持つことは欠かせないと考えています。
■『株探プレミアム』で確認できるJALCOの長期の財務推移

――配当性向の目安は。今期を含む直近3年で1株配当が18円で推移する一方、EPS(1株当たり当期純利益)は0.6~39.3円と振れ幅があり、配当性向は安定していません。不動産業の中でビジネスモデルが比較的近いヒューリック<3003>やロードスターキャピタル<3482>は目安を提示しています(下の表)。
田辺: 目安とする配当性向の水準は定めてはいません。24年以降の配当総額は年間20億円前後で、家賃収入から経費を差し引いた利益でまかなえる水準です。キャッシュベースで払えるかどうかを重視しています。
とはいえ、財務会計上も無理なく払える状態にしておく必要があります。そのためにはある程度の剰余金を残しておくことも大切です。
税引き後利益で50億円ほどを確保し、その中から20億円を配当するというのが、現在の理想の姿と考えています。それらを踏まえると、配当性向は40%程度が妥当ではないでしょうか。
■JALCOと同業の比較
| 項目 | 指標 | JALCO <6625> | ヒューリック <3003> | ロードスター <3482> |
| 成長性 | EBITDA成長率 | 21.8% | 12.1% | 25.9% |
| 効率性 | ROA | 3.4% | 3.4% | 6.4% |
| 安全性 | 自己資本比率 | 29.1% | 28.5% | 20.9% |
| 株主還元 | 配当性向 | 累進、40%以上 | 29年までに45% | 15%以上 |
出所:『QUICK』、取材および各社IR資料。
注:成長性、効率性、自己資本比率は実績5期平均。銘柄名は略称。
経営者として日頃心がけていることは?
――田辺社長は新生JALCOの経営を15年ほど率いてきました。中興の祖が長期で実権を握ると、裸の王様になってしまうリスクがあります。最近も、上場企業で長期政権にまつわる騒動が起きましたが、どのように自分を律していますか。