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【米著名投資家①】 “投資の神様” Wバフェットの正統後継者 グレッグ・アベル(バークシャー・ハサウェイCEO)

特集
2026年6月19日 10時00分

<13Fで読み解く米著名投資家の売買戦略>

【タイトル】

グレッグ・アベル(左)とウォーレン・バフェット(©AP/アフロ)

◆「100%満足している、彼以外の選択肢はない」

米著名投資家と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、「投資の神様」ウォーレン・バフェットだろう。1930年、米中西部のネブラスカ州オマハで生まれ、コロンビア大学ビジネススクール在学中に「バリュー投資の父」ベンジャミン・グレアムに師事、1965年に経営不振に陥っていた繊維メーカー、バークシャー・ハサウェイ<BRK.B>(以下、バークシャー)の経営権を取得した。

1967年の保険会社ナショナル・インデムニティー買収を契機に、保険事業から生まれる潤沢なキャッシュフローを投資に回す独自のモデルを確立。グレアム流の割安株投資を出発点にしながらも、優れた企業を長期保有するスタイルへと進化し、同社を世界有数の投資企業へと育て上げた。短期の値動きに左右されず、本質的価値に基づいて投資判断を下す姿勢と、その哲学を体現する質実な人柄は、今なお多くの投資家の規範となっている。

そんなバフェットが選んだ正統後継者がグレッグ・アベルだ。1962年、カナダ・アルバータ州エドモントンで生まれ、1999年、幹部として在籍していたミッドアメリカン・エナジー社がバークシャー傘下となると、その実務能力の高さがバフェットの目に留まり、ミッドアメリカン・エナジーのCEO(最高経営責任者)に抜擢。同社を急成長に導き、その後、太陽光や風力発電など再生エネルギー分野への積極投資を主導。2018年にバークシャー副会長へ就任すると、非保険事業全体を統括する立場で実績を積み重ねてきた。そして2026年1月、ついにバークシャーCEOに正式就任。バフェット自身が「100%満足している。彼以外の選択肢はない」と語る、紛れもない正統後継者である。

◆バークシャーの経営思想を体現、アベルへの高い期待

もっとも、アベルは従来の意味での「スター投資家」ではない。華々しい投資判断で市場の注目を集めてきたタイプではなく、むしろ現場に根差したオペレーターとして評価されてきた人物だ。だが、バークシャーにおけるCEOとは単なる経営者ではない。巨額の資本をどこに配分するかを決める「究極の投資家」でもある。その意味で、アベルの時代とは、すなわちバークシャーの新たな資本配分の時代の始まりを意味する。

後継者を選ぶにあたり、バフェットが最も重視したのは「バークシャーの文化を守れるか」だったという。バークシャーはウォール街の常識とは異なる「分権型経営」を思想の核に持つ。グループ傘下の企業には最大限の自治を与え、基本的には本社は口を挟まない。この哲学を実践するためには、単に資本を配分することとは次元が異なる、人間観や経営観、相互の信頼関係が必要になる。

バフェットは間近で観察する中で、アベルが傘下企業の経営者との人間関係を丁寧に築き、バークシャーの経営思想を体で理解していることを確信していった。「彼は私よりも多くのビジネスを理解している」。バフェットがそう語るほどの信頼を寄せているのだ。

◆2025年はアップル株の追加売却が話題に、その意味するところは

2025年のバークシャーの「13F」は、バフェットからアベルへの移行期、「ポスト・バフェット体制」がどのように展開されていくのかを占う上でも多くの注目を集めた。最大のトピックは、2024年に引き続いて進められたアップル<AAPL>の保有株数削減だ。第1四半期時点で3億株あった保有数は、第4四半期には2億2791万株まで減少。評価額ベースでも666億ドルから619億ドルに圧縮され、ポートフォリオにおける保有比率も26%から23%まで引き下げられた。

2016年に初めて投資を行って以来、バフェットの盟友、故チャーリー・マンガーの助言もあってアップルは長らく同社のポートフォリオの象徴であり続けてきた。それだけにこの動きは市場に少なからぬインパクトを与えた。

だが、これは同社への信頼が揺らいだというより、むしろバフェットの一貫した投資哲学の延長線上にあると見るべきだろう。すなわち「企業の本質的な潜在価値と株価の乖離が縮小すれば売る」という極めてシンプルな原則である。アップルの事業そのものに対する信頼は揺らいでいないものの、株価の上昇によって期待リターンが相対的に低下した局面では、資本をより有利な場所へ再配分する。この判断自体は、むしろバフェット流の王道と言える。

対照的に一貫して買い増しを続けたのがシェブロン<CVX>である。インフレ耐性とキャッシュフローを重視するバフェット流の定石に加え、アベルが得意とするエネルギーインフラへの傾倒が鮮明になっている。第1四半期の1億1861万株から第4四半期には1億3015万株へと着実に積み増した。エネルギー安全保障への意識の高まりや、割安な配当株への回帰という文脈で読み解くことができる。

【2025年 1Q】総評価額:2598億769万ドル
順位社名<ティッカー>評価額保有比率保有株式数(前期比)
1アップル<AAPL>666億3900万ドル26%3億株(→)
2アメリカン・エキスプレス<AXP>407億9085万ドル16%1億5161万株(→)
3コカ・コーラ<KO>286億4800万ドル11%4億株(→)
4バンク・オブ・アメリカ<BAC>263億5556万ドル10%6億3157万株(↓)
5シェブロン<CVX>198億4235万ドル7.7%1億1861万株(→)
【2025年 2Q】総評価額:2575億2177万ドル
順位社名<ティッカー>評価額保有比率保有株式数(前期比)
1アップル<AAPL>574億4760万ドル22%2億8000万株(↓)
2アメリカン・エキスプレス<AXP>483億6078万ドル19%1億5161万株(→)
3バンク・オブ・アメリカ<BAC>286億4125万ドル11%6億526万株(↓)
4コカ・コーラ<KO>283億ドル11%4億株(→)
5シェブロン<CVX>174億7845万ドル6.8%1億2206万株(→)
【2025年 3Q】総評価額:2673億3450万ドル
順位社名<ティッカー>評価額保有比率保有株式数(前期比)
1アップル<AAPL>606億5611万ドル23%2億3821万株(↓)
2アメリカン・エキスプレス<AXP>503億5901万ドル19%1億5161万株(→)
3バンク・オブ・アメリカ<BAC>293億0673万ドル11%5億6807万株(↓)
4コカ・コーラ<KO>265億2800万ドル9.9%4億株(→)
5シェブロン<CVX>189億5544万ドル7.1%1億2206万株(→)
【2025年 4Q】総評価額:2741億6008万ドル
順位社名<ティッカー>評価額保有比率保有株式数(前期比)
1アップル<AAPL>619億6173万ドル23%2億2791万株(↓)
2アメリカン・エキスプレス<AXP>560億8837万ドル21%1億5161万株(→)
3バンク・オブ・アメリカ<BAC>284億5127万ドル10%5億1729万株(↓)
4コカ・コーラ<KO>279億6400万ドル10%4億株(→)
5シェブロン<CVX>198億3713万ドル7.2%1億3015万株(↑)

※保有株式数の前期比は5%未満の増減は→、5%~50%の増減は↑↓、50%以上の増減は↑↑・↓↓で表現。

◆現金比率を高めた2026年以降の「次の一手」とは

これらバークシャーのポートフォリオの変化は何を示しているのだろうか。「13F」には表れていないが、実はバークシャーが2025年を通してポートフォリオの変更とともに進めていたのが、現金及び短期国債の積み上げである。バークシャーは上場会社でもあるため、財務報告書(「10-K」)も公開されている。

それによると、いつでも換金できる短期国債を含めた待機資金は、2024年の3307億ドルから2025年には3691億ドルへと増加し、過去最高の水準にまで積み上がっている。一方、株式の総評価額は3538億ドルから2716億ドルへと大幅に減少している。待機資金が過去最高の水準まで積み上がり、一部では「この1年は何もしていないのではないか」という批判すら聞かれるようになった。

だが同社にとって待機資金とは、「将来の機会に対するオプション」であり、同時に「市場の過熱感を測る温度計」でもある。魅力的な投資対象が見当たらないときに無理に資金を投じないという姿勢は、長期的な資本効率を維持するうえで不可欠だからだ。

加えて、現在の金利環境も見逃せない。短期国債であっても一定の利回りが確保できる状況では、現金保有の機会コストは相対的に低下する。つまり、「短期国債を持つこと自体がリターンを生む」環境が整っているのである。このように考えると、待機資金比率の上昇は消極的な防御ではなく、むしろ次の一手に備えた積極的な戦略と位置付けることができる。

興味深いのは、2025年に見られた一連のポートフォリオ調整が、アベルの人物像と自然に重なって見える点である。アベルは派手な賭けに出るタイプではなく、着実にリターンを積み上げる実務家だ。バークシャーの資本配分は、そうした性格を徐々に帯び始めている可能性がある。

もっとも、現時点でのポートフォリオは依然としてバフェットの影響下にある。本人も「なお意思決定に関与している」ことを認めており、2025年の動きはアベル単独の判断というより、両者の共同意思決定と見るのが妥当だろう。アベルもまた、CEO就任後初の株主向け書簡で「バークシャーの真の資産は『文化』にある」と述べ、その継承を明確に打ち出している。

こうして見てくると、バークシャーの投資戦略は世代交代を行っても、その根底にある哲学は変わらないことが分かる。生活必需分野への長期投資を軸としつつ、過熱感のある領域ではポジションを調整し、機会が訪れるまで資金を温存する。この姿勢は一貫している。

一方で、日本の5大商社株の買い増しや東京海上ホールディングス <8766> への出資など、「13F」には表れない動きも含め、バークシャーの投資領域は着実に広がりを見せている。こうした非開示領域を含めて同社の戦略をどう読み解くかは、今後の大きなテーマとなるだろう。本連載では、「13F」を手がかりに「バリュー投資」の総本山とも言えるバークシャーの投資動向を追い、バフェットの正統後継者、アベルがいま、どのような銘柄に注目しているのかを伝えていきたい。

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