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【特集】藤代宏一氏【2021年も年末相場が接近、強調展開は続くか】(1) <相場観特集>

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

―欧州で新型コロナ再拡大も底堅さ発揮、ここからの展望は―

 週明け22日の東京株式市場は、前週末に欧州株市場が全面安となったことに加え米国株市場でもNYダウが下値模索の動きを続けたことから、朝方はリスク回避ムードとなった。ここにきて欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大が警戒されている。ただ、押し目買い意欲も旺盛で、日経平均は下値に対しても底堅さを発揮、売り一巡後はプラス圏に浮上した。東京市場の年末相場に向けての思惑が交錯するなか、今後どういった動きが予想されるのか、第一線で活躍を続けるベテラン市場関係者2人に話を聞いた。

●「米テーパリング加速論の浮上が不透明要因に」

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

 株式市場を巡る環境を眺めると、日本国内は順調だ。新型コロナウイルス感染者数は減少しており、今後の消費の回復も期待できる。また、半導体不足も一時に比べて緩和しており、12月から来年1月にかけて自動車生産の拡大も見込めるだろう。それとともに機械受注の増加も予想される。

 ただ、その一方で海外情勢には不透明要因が強まっている。特に、気になるのは米国でテーパリング(量的緩和の縮小)加速の議論が浮上していることだ。ブラード・セントルイス地区連銀総裁に加え、クラリダFRB副議長、それにウォラーFRB理事などがこの意見を表明している。来月14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て、場合によっては来年4月など春までにテーパリングを終了させ、年半ばから利上げに踏み切るということも考えられないわけではない。来月初旬の米雇用統計などの経済指標やFRB高官発言などには、一段と注目する必要があるだろう。また、欧州を中心に新型コロナの感染が再拡大していることは、もちろん懸念材料となる。

 こうしたなか、今後年末にかけての日経平均株価は3万円前後を中心とする一進一退を見込んでいる。日経平均株価は3万円をいつ回復してもおかしくない。ただ、海外要因に不透明感があるなか、上値は重く3万円を一気に超えていくことは難しいと思う。とはいえ、世界経済は回復基調にあることは変わらず、日経平均株価の下値は底堅いとみている。米テーパリングの行方次第では、ハイテク株などは影響を受ける可能性があるだけに、当面はバリュー株が相対的に優位となる展開を予想する。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。

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