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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─海運、商社など商品市況高はまだ続く

株式評論家 植木靖男

「海運、商社など商品市況高はまだ続く」

●市場を揺さぶる悪材料の根源はインフレ

 東京市場はウクライナ情勢の悪化で2月14日、15日と総崩れとなったが、それによく耐え、16日には大きく切り返した。このため、はっきりした方向性が見え難い中、当面はレンジ相場、つまりもみ合いに転じることになりそうだ。
 
 ところで大発会以降、手を替え品を替えて"悪材料"はふつふつと湧いてくるかのように吹き出してくる。いずれの悪材料も共通しているのは、"インフレ"に直結していることだ。

 新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱から始まって、半導体不足、物流の混乱に加えて、脱炭素の潮流の副作用とも言うべき石油生産への設備投資減、ウクライナ情勢の悪化などで原油高が続いたことがそうだし、人手不足に伴う賃金上昇などでモノの需給は次第に引き締まってきている。今年の経済分野の流行語大賞は「インフレ」で決まりだろう。

 さて、米国の1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.5%上昇と12月の7.0%を大きく上回った。40年ぶりの高さというが、それだけでその凄さがうかがい知れる。

 当然ながら、こうした状態を受けて国の中央銀行が動き出す。中央銀行の最大の使命はインフレを抑制することにある。米FRB(連邦準備制度理事会)には、これまで過剰に資金を市中に出しすぎたとの思いがある。しかし、一方で市場を潰したくないとの思いもある。結局、この3月にテーパーリングを終了する方針のようだ。

 とはいえ、逆にいえば、この期に及んでまだ3月までは金融のジャブジャブを続けることになる。カネを市中に出し続けるのだ。結果としてFRBは3月にも市場により衝撃を与える売りオペを実施することになるのかもしれない。

 ところで、こうした話は欧米でのこと。わが国はどうなるのか。欧米が金融引き締めに走る中、日銀は逆に金利上昇を抑えるべく0.25%の利回りで無制限に国債を買い取るという。 このため、日米金利差が拡大し、円安は今後さらに進むとみられる。日銀はどうするのか。

●新年最初にして最後の買い場が到来か

 さて、当面の日経平均株価はどう展開するのか。直近の上昇からすれば、中段のもみ合い、もしくは1月安値の2万6170円(終値ベース)を下回ることなく、底値もみ合いとなって、しかるべき日柄を経過した後に上昇に転じることになるとみられる。

 もっとも、下げの中段のもみ合いであれば、もみ合いを下放れた後は予想を上回る強烈な底入れを見せるはず。この機を逃してはいけない。新年の最初にして最後の買い場とみてよいであろう。

 では、その時期はいつ頃になるのであろうか。要は、いまの中段のもみ合いの長さ次第ということか。近々、米国ではFRBの売りオペの議論も俎上に乗ってこよう。それを株価に織り込むところが焦点。存外、3月にかけてといったあたりか。

 当面の物色の流れはどうか。ここ1~2週間の動きではっきりしていることは、グロース株はしょせん戻り相場であり上値は重いことだ。戻り相場で利益を出すのは至難の業。米国でもむしろバリュー株に分があるようだ。東京市場でも同様で、上昇基調にあるのは海運、空運、鉄鋼、重工業などだ。

 そこで今回は、年内に活躍しそうな銘柄として、ANAホールディングス <9202> を挙げたい。小さくても好材料を探そうとする段階に入ってきた。貨物輸送の好調などがそうだ。市場の目が優しくなってきたのだ。日本製鉄 <5401> も、材料探しに市場は躍起だ。
 
 また、三菱商事 <8058>。商品市況株の代表は 商社だ。三菱重工業 <7011> 。誰も関心を見せず、かえって面白い。そして、海運株の日本郵船 <9101>。1万円乗せで新相場か。

2022年2月18日 記

株探ニュース

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