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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」―(19)トレンド転換の判断に役立てたいMACDとボリンジャーバンド

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)


◆日経平均をボリンジャーバンドとMACDで分析すると……

 ここでは日経平均株価のチャートを2021年3月から表示しました(図2)。まずは2021年8月頃の「MACD」と「シグナル」を見てみましょう。売られすぎとされる「ゼロライン」の下でゴールデンクロスして「買いサイン」が出ました。この時の株価を「ボリンジャーバンド」で見てみましょう。

 株価は基本的にミッドバンド(基準となる移動平均線)を中心とした比較的に狭い変動幅の中で収まる確率が高いとされています。株価がミッドバンドの上のプラス圏にある場合、プラス1σ(シグマ)からプラス2σ、プラス3σと外側に近づくほど買われすぎとされています。反対にマイナス圏にある場合は、マイナス1σからマイナス2σ、マイナス3σと外側に近づくほど売られすぎとされます。

 株価は当初、ミッドバンドよりも下に位置していましたが、その後上昇に転じ、プラス2σとプラス3σの間を推移しながら9月14日の高値3万0795円まで上昇していることがわかります。しかし、株価は上昇すればいずれは下落します。結局、3万0795円で天井を打って下落に転じます。

 この時の「MACD」は、株価の上昇とともにゼロラインよりも上のプラス圏へと上昇し、買われすぎの水準にありました。その後は株価の天井打ちとともにデッドクロスし、売りサインが出現しました。そして、株価下落とともに「MACD」も「シグナル」も下落に転じています。


図2 日経平均株価 ボリンジャーバンド+MACD(2021年3月~9月)
【タイトル】

 次に、22年1月の日経平均株価を見てみましょう(図3)。株価は1月初めから下落していることがわかります。年初は「ボリンジャーバンド」ではミッドバンドより上のプラス圏にありましたが、そのままミッドバンドを下に抜けてマイナス圏へ突入し、マイナス2σとマイナス3σの範囲内で推移して下落していきます。

 この時の「MACD」を見てみましょう。1月初めに「MACD」と「シグナル」はほぼゼロラインあたりに位置しています。この時の株価は2万9000円くらいでしたが、「MACD」と「シグナル」はゼロラインを上に放れることなくデッドクロスして、売りサインが灯りました。その後は、株価の下落に歩調を合わせて、「MACD」と「シグナル」の両方が下落していることがわかります。

 「MACD」と「シグナル」は21年9月の時にはプラス圏でデッドクロスしていたので「買われすぎだった」と素直に考えることができましたが、22年1月の時のように、ゼロライン近辺やマイナス圏でもデッドクロスする場合があります。テクニカル的には過熱感が感じられないポイントでもシグナルが出現している点には注意が必要です。


図3 日経平均株価 ボリンジャーバンド+MACD(21年12月~22年3月)
【タイトル】

 では、22年3月の株価の動きを見てみましょう。株価は「ボリンジャーバンド」のミッドバンドより下で推移し、3月9日には2万4681円まで下落しました。その後、2万5000円前後で推移しており、「そろそろ下げ止まるのかも」という風にも考えられます。次に「MACD」で見てみましょう。「MACD」と「シグナル」はどちらもゼロラインよりも下で推移しています。2月半ばにデッドクロスして売りサインが出て以降、「MACD」と「シグナル」の下落が続いています。足元の株価は少し落ち着いてきていますが、この時点ではまだゴールデンクロスが出ていません。

 どこまで下がるのかという状況でしたが、3月16 日にようやく買いサインとなるゴールデンクロスが表れました。その後はあっと言う間に2万8000円台まで上昇し、「あの株価下落は何だったのか?」という状況ではありますが、このようにMACDを活用することで売買タイミングを客観的に分析することができます。

 「MACD」で買いサインが灯っておらず、「下降トレンドが終了した」とは言えない状態では無理に売買する必要はありません。少しでも安く買えればもちろんよいわけですが、不安が拭えなければ、株価の動きに一喜一憂することになりかねません。株価は高値圏からすでに十分安い水準まで下がってきているわけですから、慌てて買いに動く必要はありません。「MACD」で買いサインが表れてから売買しても、まったく遅くはないこともわかります。

 なお、株探のチャートでは、チャート上に表示される十字線を目標のポイントに合わせることで、日にちと株価を参照することができます。「MACD」でゴールデンクロスやデッドクロスしているポイントに十字線を合わせてみると、株価の底や天井とこれらのシグナルが表れるタイミングがピタリと合っているわけではないことがわかります。「MACD」は指数平滑移動平均線ですから、どうしても株価の天底から遅れてシグナルが出現することがわかります。

 ロシアとウクライナの戦闘がこれほど長期化するとは思ってもみませんでした。世界経済に与える影響は当初想定していたものより大きく、そして長期化する可能性が考えられます。「まさか!」の事態が起こるのが株式投資ですから、自ら過剰なリスクを取る必要も、焦る必要もまったくありません。過度に悲観的に、そして楽観的になることなく、複数のチャートを組み合わせて客観的に株価のトレンドを確認しながら売買戦略を立てていきたいですね。

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