明日の株式相場に向けて=「先負」尽くしの総選挙日程に嵐の予感
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比395円安の3万8937円と反落。相変わらずというべきか、ボラティリティばかり高くて方向性がまるで見えないという展開が続いている。これは日本株市場に限ったことではないが、理屈では説明不能な要素が多い。市場筋からは「(全体相場の値動きは)狂った計器を思わせる針の振れ方」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。国慶節による長い休日を終え、休場明けとなった中国・上海株は大幅上昇をみせたが、寄り付き天井で日足では上ヒゲのない大陰線を形成した。他方、香港ハンセン指数は急落し、こちらも大陰線を引いた。
中国株市場が休場の間、暴騰する中国ETFが話題を集めたが、この日はMAXIS HuaAn中国株式(上海180A株)上場投信<2530>がストップ安ウリ気配で最後まで値が付かず、上場インデックスファンド中国A株(パンダ)E Fund CSI300<1322>も暴落、中国H株ブル2倍上場投信<1572>やNEXT NOTES 香港ハンセン・ダブル・ブル ETN<2031>なども大幅に下落した。一方で、iFreeETF 中国科創板 50(STAR50)<2628>、iFreeETF 中国グレーターベイエリア・イノベーション 100(GBA100)<2629>はいったんストップ高に買われたが、その後は一転してウリ気配に変わり、そのままストップ安に直行。文字通りハシゴを外された格好となった。
「国慶節明けに10兆元(日本円にして約210兆円)規模の経済対策を打ち出す可能性があると中国人著名エコノミストが発言し、思惑が独り歩きしてミーム化した。足もとでその反動が出ている」(ネット証券アナリスト)とマーケット関係者は指摘する。もっとも、これらの銘柄群は流動性に難があり、ほぼ局地戦の仕手株のような銘柄で観賞用に過ぎないわけだが、裏を返せば東京市場には投資マネーが食指を動かすような銘柄が他に見当たらない。話題性が失われた市場ということがいえる。
石破新政権発足を受け何か政策期待で買おうという雰囲気は、正直今のマーケットからは感じられない。防衛関連の旗艦銘柄である三菱重工業<7011>は売買代金こそ上位を維持しているが、上値はどうにも重い。脇を固めていた川崎重工業<7012>、IHI<7013>も今一つの値動きで、組閣人事を経て一丁目一番地とみられた「防衛関連株」に対するマーケットの視線も直近は半信半疑のムードが漂っている。半導体関連もアドバンテスト<6857>が孤軍奮闘しているとはいえ、そのほか東京エレクトロン<8035>やディスコ<6146>、レーザーテック<6920>など主力どころの株価は冴えない。かといって、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクの上値を買い進む動きは限定的だ。
解散日から総選挙の投開票日までの期間で日経平均株価は上値を指向するという「総選挙アノマリー」に期待する向きは少なくない。圧倒的な確率で日経平均は上昇するケースが多かった。しかし、前回の総選挙は2021年の10月、岸田首相が政権発足から10日後という戦後最短の解散に打って出たが、投票日までの株価はマイナスパフォーマンスと稀少な例となった。今回も石破新政権の不人気ぶりから、その稀少なパターンを踏襲する可能性がある。奇をてらって拙速に解散することは少なくとも王道ではなく、石破首相自らがその考えを示していたはずであった。
なお、今回のケースでは解散日の10月9日、公示の15日、そして投票日の27日、この3日間がいずれも六曜の「先負」に当たるという偶然にしても作ったような日柄であることが、市場でも話題となっていた。前言を翻しなりふり構わず解散に踏み切った石破首相だが、六曜が示す「先んずれば負ける」という結果が待っているとすれば出来過ぎか。
あすのスケジュールでは、この日は臨時国会の会期末、衆院解散日となる。午前中に6カ月物国庫短期証券の入札が行われ、午後取引終了後には9月の工作機械受注額が開示される。海外ではニュージーランド中銀の政策金利発表や、インド準備銀行(中銀)の政策金利発表に耳目が集まる。米国では8月の卸売在庫・売上高が発表され、FOMC議事要旨(9月17~18日開催分)の内容が注目される。米10年国債の入札も予定されている。このほか、ジェファーソンFRB副議長の講演が行われる予定でマーケットの関心が高い。韓国市場は休場となる。(銀)
株探ニュース