明日の株式相場に向けて=売り方不在?のイベントドリブン
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比258円安の3万8876円と反落。前場は朝方に320円あまりの下げをみせ、プチ波乱の様相をみせたが、その後は押し目に買い向かう動きが顕在化し下げ渋った。
今週は、日本時間今晩に開示される5月の米消費者物価指数(CPI)や、あす未明に公表されるFOMC、更に日銀の金融政策決定会合とビッグイベントが目白押しだが、そうしたなか、きょうは“SQ週の魔の水曜日”に当たるだけに、投資家サイドも思わず身構えてしまうところ。振り返って前日の欧州株市場は文字通りの全面安に売り込まれた。欧州議会選における極右政党の台頭に伴い政局不安が取り沙汰されている。これで米国株市場が崩れ足となればちょっとした世界同時株安モードであったが、ここでリスクオフの流れは堰き止められた。米株市場では持ち高調整の売りを引き金に利食い急ぎの動きとなったのは朝方だけで、ナスダック総合株価指数はすぐにプラス圏に浮上、NYダウは戻し切れなかったものの下値は固く、0.3%安と“お湿り”程度の下げにとどめた。個別株ではエヌビディア<NVDA>は小安く引けたが、それを忘れさせるパフォーマンスを演じたのがアップル<AAPL>で、7%を超える急伸をみせマーケットに漂う弱気ムードを一掃した。
こうなると、東京市場も売り方が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)できるほどのネガティブな相場環境には程遠い。朝方に先物主導で若干揺さぶられたものの、そこから一段の実需売りを誘発するには至らなかった。メジャーSQ直前の駆け引きも「コールオプションの強気の建玉が4万円近辺で目立つ」(中堅証券ストラテジスト)という。投資家の体感温度を表す空売り比率は11日現在で38%台と6日ぶりに40%台を割り込んだ。空売り比率は40%台後半になると、下値に対する思惑がかなり強い状態で、ショート筋の露骨な揺さぶりが入るケースも多いが、40%を切ると売り勢力はほぼ離散しているようなイメージだ。目先は買い手控えの中も「閑散に売りなし」という商状を呈している。
最近は全体相場の上値の重さに辟易している投資家も少なくないはずである。6月に入ってからは商いも低調だが、ニューマネーとして期待された投資経験の浅い投資家層が興味を失っているという状況が見て取れる。例えばネット証券大手の話では「新NISAの買い付けは(個別株に投資する)成長投資枠で1月と比較して6割減の状況」としており、証券業界を取り巻く新NISA導入当初の喧騒は雲散霧消したような状態である。しかし、売りで利ザヤを稼ごうと画策するショート筋も少ない。きょうも“魔の水曜日”の片鱗をのぞかせたのは前場の取引開始後1時間程度で、後場は薄商いのなか、終始底堅さが発揮される地合いとなった。すべては今週のビッグイベントを通過した後、ということらしい。
ただ、こういう「待ち」の場面は次に予想されるテーマ買いに目ぼしをつけておくタイミングでもある。最近は半導体や生成AI、あるいはそこから派生したデータセンターといったお決まりのテーマとは路線の異なる「ペロブスカイト太陽電池」関連株の一角が人気化しており、物色裾野が広がる可能性がある。貼合加工で高い技術を持つフジプレアム<4237>はペロブスカイト太陽電池分野に照準を合わせており、早晩頭角を現しそうだ。また、特殊潤滑油で強みを持つ化学品メーカーのMORESCO<5018>もペロブスカイト素子にダメージを与えない高性能の封止材を開発中、本格開花への期待が大きい。
7月3日から新紙幣の発行が開始されるが、これも経済効果は非常に大きい。インフラ面では券売機などの市場に分かりやすい追い風となるが、既に日本でも普及が進むキャッシュレス決済を加速させる呼び水となる可能性に着目。ネットスターズ<5590>やビリングシステム<3623>の押し目などをマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、4~6月期法人企業景気予測調査がいずれも朝方取引開始前に財務省から開示される。午前中に3カ月物国庫短期証券の入札も予定されている。午後取引終了後には5月の投信概況が発表される。海外では4月のユーロ圏鉱工業生産のほか、5月の米生産者物価指数(PPI)、週間の米新規失業保険申請件数に注目度が高い。また、米30年国債の入札が行われる予定。このほか、この日はウィリアムズ・NY連銀総裁が経済団体のイベントで発言機会があり、その内容にマーケットの耳目が集まる。(銀)
最終更新日:2024年06月12日 17時09分
株探ニュース