明日の株式相場に向けて=個別材料株のピンポイント戦略
きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比298円安の3万8556円と続落。4万円大台はおろか、3万9000円台ラインもなかなかクリアできない状況となっている。前日は米国株市場でNYダウは下げたものの、日経平均と連動性の高いナスダック総合株価指数が最高値を更新、個別ではエヌビディア<NVDA>が値を飛ばし早くも1100ドル台へ突入、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も最高値をつけ、加えて1ドル=157円台の円安というリスクオンのオンパレード。東京市場でも半導体セクターにはこの上ないフォローウインドが吹いているはずなのだが、目の前にはその風にうまく乗れない現実がある。
国内でも長期金利の上昇基調に歯止めがかからず、日銀の追加利上げに向けた動きを警戒しているという解釈だが、正確に言えば相場が嫌気しているのはそこではない。現状では、日銀の利上げは早くて7月。そして年内は10月にあと1回行うかどうかというところで、0.25%の引き上げ2回と仮定すると合計で0.5%の引き上げ、水準としては0.6%というのが、おそらくは年内マックスのタカ派シナリオである。これを延々と嫌気し続けるというのもナンセンスだが、問題は利上げと経済実態が見合っていないということにマーケットは懸念を抱いている。
利上げは「強い景気」があってこそで、今はどう見ても日本の内需は疲弊している。「鉄道株の下げが異常」(ネット証券アナリスト)という指摘もあるが、これは何を意味しているかといえば、インフレ環境でも簡単に値上げできない鉄道業界の弱み。その延長線上には個人消費の冷え込み、つまりスタグフレーションを警戒している。
難しい地合いだが、そうしたなかも投資マネーはしたたかで全方位型の物色に切り替わってきている。きょうはGLOE<9565>がストップ高に買われたが、これは一部メディア報道で、「自民党のスポーツ立国調査会がeスポーツの普及、振興や選手強化を推進することを盛り込んだ提言」をまとめたことが伝わり、これを材料視したもの。 eスポーツのテーマ性自体は色褪せることはないが、株式市場においてここ最近はテーマ買いの対象から外れていたことで新鮮味があった。6月ごろに策定される“骨太の方針”で反映される可能性があり、関連株をチェックしておく価値はありそうだ。個人投資家が参戦しやすい中低位株では、eスポーツに注力姿勢を明示しているカヤック<3904>や、同分野のプロモーションに携わるテー・オー・ダブリュー<4767>などに目を配っておきたい。
また、きょうは総じて利食われたものの、ここ電力株への物色人気が急激に盛り上がった。半導体工場やデータセンター増設に伴う電力需要の拡大と、それに付随する電力エネルギー確保を目的とした原発再稼働への思惑が買いの根拠である。周辺銘柄では東京エネシス<1945>が中段で売り物をこなし上放れの機が熟しているようにも見える。今期減益予想とはいえ、PBR0.6倍台で4%近い配当利回りはバリュー株の要素も十分に兼ね備えており買いやすさがある。同じく電力株周辺では電力制御システムなどを手掛ける正興電機製作所<6653>も押し目買い妙味がありそうだ。4月11~12日と4月30日に大商いで急動意をみせ、上ヒゲをつけたが2点天井とはならなかった。その後は商いを減少させつつも株価を切り上げていることがポイントで、良好な株式需給を反映している。
これ以外では低PBR株の宝庫である地銀株にも視線を向けておくところ。内需セクターの停滞ムードはネガティブ材料ながら、熊本や北海道など巨大半導体工場を中心とした“城下町景気”の恩恵を受けるエリアは別格。ラピダス関連で北海道電力<9509>が株価を変貌させたが、この北海電が大株主に名を連ねる北洋銀行<8524>は要マーク。北海道地銀最大手にしてPBR0.4倍台と依然として解散価値の半値以下に放置されており、夏場に大勢3段上げに向かう公算も小さくない。
あすのスケジュールでは、2年物国債の入札、4月の建機出荷が発表される。海外では4月のユーロ圏失業率、1~3月の米実質国内総生産(GDP)改定値、週間の米新規失業保険申請件数、4月の米仮契約住宅販売指数などにマーケットの関心が高い。また、南アフリカ中銀が政策金利を発表する。このほか、ウィリアムズNY連銀総裁が講演を行う予定でその発言内容が注目される。(銀)
最終更新日:2024年05月29日 17時02分
株探ニュース