明日の株式相場に向けて=予測不能、AI主導の不規則バウンド相場
3連休明けとなった13日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1207円高の3万6232円と続急騰。後場は先物主導のインデックス買いによる典型的な高値引けとなった。人間はその英知のもとに科学技術を飛躍させ、数々の不可能を可能としてきたが、今もって一寸先の未来すら覗くことができない。きょうのような相場ではそれを思い知らされる。一つ言えるのは、人間が技術の粋を集めて創り出した人工知能(AI)に、多くの投資家が振り回されているという事実だ。
全体株価は上なのか下なのか、上がるとすればどのくらい上値が期待できるのか、逆に下がる場合にはどのくらい下値が深いのか。こうした短期的な相場の波動は、実際に取引が開始されないことにはどうにも分からない。いったんハイボラ相場のスイッチが入ってしまうとトレーダー泣かせのAIが支配する地合いに翻弄されるよりない。きょうは、東京市場が連休中に米国株がハイテク株中心に堅調な動きをみせたことや、外国為替市場で1ドル=147円台で円安水準が保たれていたことから、追い風局面には違いなかったが、日経平均が1000円を超えるような大幅高の可能性に言及する声は皆無だった。よくて3万5000円台後半、ここまで上値を伸ばせれば御の字というところであったと思われる。
真相は株式需給にある。前週末の日経平均株価はしっかりだったが、週初に史上最大の下げ幅に見舞われた残像が残るなか、投資家のマインドはリスクオフに傾いていた。3連休前で、しかもイランとイスラエル間の緊張が極度に高まっており、イスラエルへの報復攻撃が近々に行われる公算が大きいとの見方が広がっていた。更に「気象庁が警鐘を鳴らした南海トラフ地震への警戒感もかなり強く、これに対応して週末はにわかにショートを積み上げる動きが観測された」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。おそらく過激なショートポジションを組んだのはAIのなせる業で、きょうはその無機質なアンワインドの動きが、日経平均やTOPIXの上げ足を加速させる格好となった。
気が付けば日経平均は前週初の4451円の崩落に遭遇する前の水準を上回ってきた。しかし、この1000円超の急騰が相場の底入れ転換を担保するものではない。8月5日に開けたマド埋めを果たしたが、もう一つ上の8月2日に開けたマドを埋めるまでは疑心暗鬼の相場が続く。ただ、今はトレンドを予測すること自体が難しくなっている。全体相場が上昇すれば、それなりの理由をテキスト化し、下落すればそれに見合う講釈をつける。人間によるその作業が自ら相場の方向感を見えなくしている。AI取引が支配するなかでは、何も考えずに突っ込み買いの吹き値売りを徹底させた方が結果としてリターンは大きい。これは総論的な見地だが、そういうケースが繰り返されてきた。
一方、個別株戦略では人間の知恵が生きる。今後も含め「生成AI特需」が本物かどうかは置くとして、半導体関連、特にディスコ<6146>やレーザーテック<6920>のような主力銘柄には上値のしこりがかなり高水準である。下げ過ぎ是正のリバウンドにつくという割り切りであれば話は別だが、上場来高値もしくは今年の高値をクリアするような相場はここ1~2年のタームでは難しそうだ。
当面はここまで相場がなかったセクターや銘柄に資金が流れる方向が読める。目先的には決算発表をほぼ通過したことで、業態を問わず好業績銘柄については分かりやすく選別が可能だ。きょうは通期業績予想の上方修正を発表した淀川製鋼所<5451>が大きく買われたが、注目すべきは5.4%の配当利回りである。高配当利回り株は、中堅建設株に意外に多く、25年3月期46%増益予想の淺沼組<1852>が5.1%と高く、株価も値ごろ感がある。また、大型株では直近の株価下落によって、再び配当利回りが5%弱まで切り上がったJT<2914>なども拾い場となっている可能性がある。
あすのスケジュールでは、国内で目立ったイベントはないが午前中に5年物国債の入札が予定されている。また、午後取引終了後に7月の投信概況が開示される。海外ではニュージーランド中銀の政策金利発表、7月の英消費者物価指数(CPI)が注目されるほか、4~6月期のユーロ圏実質域内総生産(GDP)の改定値、6月のユーロ圏鉱工業生産が発表される。米国では7月のCPIにマーケットの関心が高い。なお、米主要企業の決算発表ではシスコ・システムズ<CSCO>の5~7月期決算が予定されている。(銀)
株探ニュース