明日の株式相場に向けて=レーザーテック嵐の中で最高値へ
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比535円安の3万3140円と3日ぶり大幅反落。日銀金融政策決定会合の後に日経平均は上げ足を一気に強めたとはいえ、マイナス金利継続はほぼ想定通りだった。ただ、“チャレンジング発言”の余波が想定以上に大きかった。植田日銀総裁の参院財政金融委員会における「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況となる」との発言は、会合後の記者会見で「自身の仕事への取り組み姿勢について述べた」とするいかにも面妖な説明があったが、では「年末から来年にかけて」何がチャレンジングなのかを考えた場合、机の上を綺麗にするとか、毎日瞑想するとか決してそういうことではないはずだ。「海外投資家の中には植田総裁お得意のジョークかと揶揄する人もいた」(投資顧問系エコノミスト)という。
仮に百歩譲って植田総裁の説明が本当としても、今回の経緯を見れば明らかなように海外ファンド筋の“誤解”を生んだことは確かだ。日経平均が2営業日で900円以上、バブル後最高値3万3753円をザラ場で上回るほどのパフォーマンスを示したのは、実需買いではなく偏(ひとえ)にショート筋が積み上げた空売りの買い戻しによるものだ。ここ最近は先物によって日経平均がピンポン玉のように軽く跳ねる相場となっているが、その“軽さ”は下げる時も同様の理屈で、きょうの500円超の下げはそれが如実に反映された。
好事魔多しというが、トヨタ自動車<7203>及びアイシン<7259>などきょうのトヨタファミリーの下げをみると、株式投資に油断は禁物ということが改めて認識される。これは個別銘柄だけではなく全体相場にも同様のことがいえる。株式需給面では来週前半にかけて損益通算目的の売りも出やすく、日経平均は7月につけたバブル崩壊後高値をザラ場で超えても、終値で更新できない状態のまま23年相場を終える可能性が出てきた。ただし、相場は安いところで買って高いところで売るのが不動のセオリー。その意味で実質新年相場入りとなる来週28日までに、仮に深押しがあればそこは好機と前向きに捉えたい。
投資マネーの関心は半導体関連に向かっている。きょうは前日の米国株市場でSOX指数がきつい下げに見舞われたこともあって、東京市場でも半導体製造装置大手など主力銘柄は軒並み安くなった。しかし、その中でレーザーテック<6920>は一時950円高の3万6100円まで買われ、約2年ぶりに上場来高値を更新。嵐の中での最高値更新という荒業をみせマーケットの耳目を驚かせた。これについて市場では「AIアルゴリズム取引によって個人投資が翻弄されている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。
レーザーテクは東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>といった他の半導体主力株とは値動きが連動しない特異性を持つが、ここ最近は個人の空売りが顕著で、直近信用倍率は0.9倍台、日証金では逆日歩がついた状態にある。きょうのような全体崩落相場で、大きく上値を伸ばしショート筋を慌てさせることも多い。日経225採用だが、意外にも同社株の日経平均構成比は1.4%に過ぎず、東エレクやアドテストと比較しても大差で小さい。その割に売買代金は常にプライム市場で断トツの水準をこなしておりギャップの大きさが際立つ。「先物主導のインデックス売買の影響を受けにくいことと、その出来高流動性の高さからアルゴ取引の格好のターゲットとなっている」(同)という。個人投資家の常識や思惑とは逆に動くケースも多く、きょうもそれを地で行く展開となった。
レーザーテクは別格としても半導体関連は投資家の注目度が高い。前日の当欄で取り上げたジェイ・イー・ティ<6228>が大幅高となった。引き続き野村マイクロ・サイエンス<6254>の強さも光る。また、穴株では今月初旬にも取り上げたエヌエフホールディングス<6864>が上値指向を強めている。同社は量子コンピューター関連の一角でもあるが、半導体テスター用に高精度の計測制御デバイスを手掛けておりマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、11月の全国消費者物価指数(CPI)、日銀金融政策決定会合の議事要旨(10月30~31日開催分)、11月の食品スーパー売上高、11月の全国スーパー売上高など。また、東証スタンダード市場に早稲田学習研究会<5869>、東証グロース市場にヒューマンテクノロジーズ<5621>が新規上場する。海外では11月の英小売売上高、11月の米個人所得・個人消費支出、11月の米耐久財受注(速報値)、12月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)、11月の米新築住宅販売件数など。(銀)
最終更新日:2023年12月21日 17時02分
株探ニュース