明日の株式相場に向けて=トランプ・エフェクトで防衛関連株に潮流
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比193円高の3万8414円と反発。前日の400円超の下げで嫌なムードが漂ったが、一段と下値を叩くような相場環境ともいえず、きょうは前日の米ハイテク株高を受け、とりあえずセオリー通り自律反発に転じた。ただ、売買代金は連日で4兆円を下回り様子見ムードは拭えない。
現地時間20日に米国でエヌビディアの決算発表が予定されており、その内容に世界の耳目が集まっている。市場コンセンサスのハードルは高く、直近の同社株のチャートはおじぎした格好となっているが、どの程度の好決算なら再び最高値圏を舞い上がることができるのかフタを開けて見ないことには分からない。足もとの業績内容はもとより次世代半導体ブラックウェルに対する評価がカギを握る。エヌビディアの決算通過後、半導体関連はハイボラティリティな相場が想定されるが、一つ確かなことはブラックウェルが消費する膨大な電力と発熱にマーケットの関心が向いていることだ。したがって、 データセンターの冷却や光電融合技術に絡む銘柄に物色の矛先が向かいやすくなる。データセンターの冷却に際し空調ではなく、液体冷却のニーズが急速に高まる可能性がある。大手では水冷モジュールで実績が高いニデック<6594>に注目。更に水冷式冷却配管システム「サーマルソリューション」を手掛ける三櫻工業<6584>にもスポットライトが当たりそうだ。また、光電融合技術では精工技研<6834>以外に、相対的にチャートの出遅れが目立つsantec Holdings<6777>の水準訂正妙味が大きそうだ。
前日にも触れたが、防衛関連株にも動意する銘柄が増えてきた。第2次石破内閣も国防族で固められているというイメージに変わりはないという点がひとつ。そして、それ以上に防衛予算拡大はトランプ米次期政権の足音を感じさせるテーマとなっている。
米国では来年1月下旬に就任するトランプ次期大統領が講じる水面下での動きがマーケットに影響を及ぼしているが、東京市場でもトランプ・エフェクトによる投資資金の潮流が個別銘柄の物色動向に色濃く映し出されている。そのなか、防衛関連は投資資金が流れ込む入り江としては最も分かりやすく大きい。文字通り三菱重工業<7011>が旗艦銘柄だが、売買代金はこなしているものの、目先は上値が重くなっている。しかし実際のところ、こういう中長期タームの投資テーマに乗る主力どころの銘柄は、株価の上値が重い時あるいは軟調な場面こそが買い場となる。きょうは三菱重に代わり、前日取り上げたもう片方の銘柄である日本製鋼所<5631>の方が商いを伴い急騰を演じた。特段の材料がリリースされたわけではないが、このタイミングで大陽線を形成して年初来高値を更新してくるあたり、流れに乗っているというよりない。
中小型株ではIMV<7760>も動兆著しいが、防衛関連としての切り口でみると時価はまだおとなしい水準だ。もとより、業績面で目を見張る伸びを示し売上高・利益ともに過去最高水準で、8倍台のPERは見直し余地が大きい。27年9月期にトップライン180億円という中期経営計画を開示するなど、近未来に向けた布石も抜かりがない。
こうなると、他に同じ上げ潮に乗る銘柄を探す動きが活発化するのが相場の特性である。“リアル防衛関連”が人気化するなか意外と見落とされがちなのが、“リアルじゃない方の防衛関連”というと語弊があるが、かつて代名詞的に買われていた石川製作所<6208>や豊和工業<6203>などにも物色の矛先が向く公算が大きくなってきた。業績面も好調でその点は買い安心感がある。ただ、石川製は今月12日大商いで急騰を演じ上ヒゲで直近高値をつけており、時間軸的にみて、ここをクリアしていくのはそれなりのエネルギーが必要だ。売買代金を横にらみにタイミングを待ちたい。一方、豊和工は同じく12日に上ヒゲで6年半ぶりの高値を形成したが、商いが最も膨らんでいるのは1100円台でちょうど今と同じ株価水準。この高値圏もみ合いを抜ければ、実質的な青空圏で意外高の可能性も高まる。
あすのスケジュールでは、10月の貿易統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中には10月の首都圏マンション販売、10月の主要コンビニエンスストア売上高が発表される。午後取引終了後に開示される10月の訪日外国人客数にも市場の注目度が高い。海外では11月の中国最優貸出金利のほか、インドネシア中銀も政策金利を発表する。欧州では10月の英消費者物価指数(CPI)に耳目が集まる。(銀)
株探ニュース