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ワコム Research Memo(7):好調なエントリーモデルを擁するディスプレイ製品がけん引役に

特集
2019年6月6日 16時37分

■ワコム<6727>の今後の見通し

2. ブランド製品事業の見通し

ブランド製品事業の2020年3月期は、売上高48,650百万円(前期比7.1%増)、セグメント利益4,010百万円(同120.1%増)と大幅増収増益を予想している。

各製品で入り繰りはあるが、結果的にディスプレイ製品の増収がブランド製品事業セグメント全体の増収をけん引する構図となっている。ディスプレイ製品は同社の製品群の中ではプロ向けのペンタブレットと並んで最も競争力が高い製品領域だが、前期、同社はそこにエントリーモデルを投入した。これは市場から好評をもって迎えられており、同社のなかで新しい市場が切り拓かれようとしている。これがけん引役となって増収計画の実現可能性は十分高いと考えている。ブランド製品事業セグメントの売上高が計画に対して未達となるとすれば、エントリーモデルのディスプレイ製品以外の在庫水準が前期末時点では高かったとみられる(前期第4四半期業績の下振れを反映していたと考えられる、会社帳簿上の在庫および売上計上後に流通販路で保有される在庫の両方を合計した水準)ことから、それら製品に対する顧客ニーズのグリップ力が会社計画通りには回復せず、売上未達となるケースであろう。

利益については、前期比2.2倍の計画となっている。この伸び率だけを見るとハードルが高いようにも見えるが、2020年3月期の売上高セグメント利益率の想定は8.2%となっている。管理部門等の費用の配賦方法変更の影響が約5%とみられるため、従来ベースだと約13%台の売上高セグメント利益率に相当すると推測される。これは2018年3月期のブランド製品事業セグメントの売上高セグメント利益率(13.4%)と同じ水準であり、十分実現可能性はあると考えられる。同社は中計における重点取り組み事項として販管費の最適化や組織/オペレーションの改革を掲げて取り組み中であるが、これらは無駄やミスをなくしてコスト構造を改善することが目的だ。これらの進捗も考え合わせると、セグメント利益の計画が達成される為には、所期の売上高を達成することが大変重要であり、前期までに認識された課題が年末商戦期までにほぼ解決されている必要があるという点で一定のリスクを見ておくべきだと弊社ではみている。

製品別サブセグメント別動向は以下の通り。

ペンタブレット製品の売上高は前期比2.6%増の21,430百万円を計画している。2020年3月期は中低価格帯モデルが徐々に顧客に浸透し、プロ向けの高価格帯モデルも含めて、製品ラインアップ全般にわたって平均的に売上高が伸長することを想定しているもようだ。2.6%という伸び率自体は決して高いものではないが、新製品投入直後の2019年3月期に販売が伸び悩んだ中低価格帯モデルが、1桁台前半の伸び率とはいえ、発売から1年以上経って前期比増収を確保できるかについては、リスクがあると弊社では見ている。他方、プロ向けの高価格帯モデルについては競争力やブランド力は揺らいでおらず、ユーザーのブランドロイヤリティも高いとみられるため、着実に伸びると期待される。単価が高いこともあり、中低価格帯モデルが仮に伸び悩んでも高価格帯モデルの伸長でカバーすることは十分可能だと弊社ではみている。

ディスプレイ製品の売上高は、前期比28.7%増収の18,540百万円と計画している。ディスプレイはペン入力デバイスの3つの製品のなかで、最もニーズが高まっている製品領域といえる。ペンタブレットが黒板にペンで入力する(描いたものはPCのディスプレイに表示され、目はそれを追うことになる)のに対し、ディスプレイはペンタブレットの黒板が液晶パネルとなっていて、あたかもキャンバスに直接描くように入力できるためだ(ディスプレイはあくまで入力デバイスであって記憶装置はないためPCと接続して利用する必要がある点はペンタブレットと同じだ)。

従来、同社は、ディスプレイ製品については高価格帯(20万円台~30万円台)のラインアップが中心でユーザーもプロフェッショナルクリエイターが中心だった。しかし、市場のニーズの変化に対応して2019年3月期に6万円台のエントリーモデルを投入したところ、非常な好評をもって迎えられ、2020年3月期も好調な販売が期待されている。足元は同社の想定通りで推移している模様で、現時点で同社の計画達成の可否を論ずるような材料はない。最需要期である10-12月期が大きなカギを握ることになるが、ディスプレイの領域は同社が圧倒的な強みを有しているとみられ、不安要素は相対的に小さいと考えている。

ペンタブレット製品への需要が、ディスプレイ製品のエントリーモデルを中心に会社想定以上にシフトする可能性も否定できないが、そこで重要となってくるのが製品1台当たりの利益額の大きさの違いとなる。モノにもよるが、ペンタブレット製品の単価はディスプレイ製品の十分の一程度であり、1台当たりの利益額も相応の差があると考えられる。仮に需要のシフトが起きた場合でも、ユーザー数自体は変わらないと考えられるため、同じ販売台数を掛け合わせて得られる利益額がブランド製品事業として減少する事態は考えにくいとみている。

モバイル製品の売上高は、前期比35.8%減の1,670百万円が計画されている。モバイル製品とは上述のディスプレイ製品に記憶装置を組み合わせたものだ。こうしたモバイル製品の特性は実際の運用においてはタブレットやノートPCにペン入力するのと重なることになるため、両者は競合関係にある。同社のモバイル製品はペン入力の性能では勝っているがPCではないため、ユーザーによってはタブレット・ノートPCを選択するケースも多い。こうした状況を踏まえて、同社はモバイルについて商品性などを根本から見直しているものとみられ、それが2020年3月期の大幅減収予算につながっていると考えられる。モバイル製品の将来性は決して暗くはない。再浮上の契機と考えられる1つが5Gだ。5Gの大きな特徴は高速大容量通信だが、そうした環境は同社が注力するVR/MRにとって大きなプラスであり、その際の入力デバイスとしてモバイル製品の機動性と高機能が真価を発揮する可能性がある。

コンシューマビジネスの売上高は前期比27.4%減の1,710百万円が計画されている。2020年3月期は第2世代のウインドウズ・インク対応スタイラスペンを投入予定で、これによりデジタルペンは増収に転じると期待される。一方、Bamboo SlateやBamboo Folioといったデジタル文具製品については商品性の見直しなどを進める計画で、これが前期比減収見通しの理由となっている。

ビジネスソリューションは前期比2.0%増収の5,300百万円を計画している。各地域において、金融機関向けや教育機関向けの液晶タブレットが着実に普及・浸透する動きが続いており、2020年3月期も着実な販売が続くと計画している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《ST》

提供:フィスコ

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