6G推進戦略の枢軸、成長期突入の「IOWN関連株」活躍本番へ <株探トップ特集>
―光が変える通信インフラ、優れた特性生かし社会課題解決へ―
日本電信電話 <9432> [東証P]は8月29日、日本と台湾の間で次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を使った通信網を開通したと発表。9月4日にはIOWNを活用し、通信速度が毎秒400ギガビット(ギガは10億)の高速データセンター間接続で構築運用コストを半減、電力消費量を40%削減できるシステムの提供を始めた。IOWNが実現する高速大容量通信と低消費電力は、総務省が推し進める「Beyond 5G推進戦略」(いわゆる6G推進戦略)でも中核要素とされており、改めて関連銘柄に目を向けてみたい。
●次世代通信基盤の中核担う
NTTは、光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構築を目指している。
IOWNが求められる背景には、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの進展でインターネットに接続するデバイスが増えたことで、ネットワークに流れ込むトラフィックが爆発的に増大していることが挙げられる。ネットワーク接続デバイスの爆発的な増加は、ネットワークの負荷を高めるだけでなく、エネルギー消費の面でも大きな懸念となっており、データセンターの電力消費量の増加も世界的な問題となっている。こうした課題を解決する手段のひとつとして期待されているのがIOWNで、NTTはエレクトロニクス(電子)ベースの従来技術に比べて電力効率を100倍、伝送容量を125倍とする目標を掲げている。
総務省が6月に情報通信審議会から受けた「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」に関する最終答申は、Beyond 5Gの研究開発や国際標準化、社会実装、海外展開の取り組みを効果的に推進するための新たな戦略を提言。IOWNについては機器・デバイスベンダー及びユーザー企業が参加する業界団体などを活用し、実証などで得られた知見を研究開発や国際標準化活動に反映させるサイクルの構築を目指すべきだと指摘している。
●拡大する市場を支える銘柄群
ACCESS <4813> [東証P]やNTT、NEC <6701> [東証P]など9社は4日、各社が持つ技術や製品を組み合わせて高速データセンター間接続を実現するソリューションを提供する体制が整ったと発表した。今後はデータセンター間接続の更なる高速・大容量化のニーズに加えて、データセンター内のバックエンドネットワークの高速・大容量化やデータセンターの電力消費量削減のニーズなどに対しても、各社が持つ技術や製品などを組み合わせることで対応するとしている。
富士通 <6702> [東証P]は8月30日、IOWN構想の基幹技術のひとつであるオールフォトニクス・ネットワーク(APN=通信ネットワークのすべての区間を光でつなぐことにより、大容量、低遅延、低消費電力を実現する新しい通信ネットワーク)のグローバル市場での普及を目指し、今年11月から来年3月末まで各種機能の体験が可能な国外では初の施設であるオープンAPNラボをドイツのデュッセルドルフに開設すると発表。同社は総務省の「欧州におけるオール光ネットワークの海外展開に向けた実証実験の請負」事業を請け負っており、同ラボを活用して実証実験などを行っていくという。
デクセリアルズ <4980> [東証P]は8月22日、IOWN構想の実現と普及を各分野のパートナーとともに目指す国際的なフォーラム「IOWN Global Forum」に参加したことを明らかにした。同社は5カ年の中期経営計画でフォトニクス(光工学)事業を成長領域と定めており、同フォーラムへの参加を機に新たなフォトニクス技術・製品を開発し、IOWN構想の実現につながる次世代高速通信技術の進化につなげる構えだ。
なお、同フォーラムのメンバーにはミライト・ワン <1417> [東証P]、エクシオグループ <1951> [東証P]、日東紡績 <3110> [東証P]、日産化学 <4021> [東証P]、イビデン <4062> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]、アンリツ <6754> [東証P]、santec Holdings <6777> [東証S]、ピアズ <7066> [東証G]、ネットワンシステムズ <7518> [東証P]、スカパーJSATホールディングス <9412> [東証P]などが名を連ねている。
●ザイン、ホトニクスなどにも注目
これ以外では、IOWNのキーテクノロジーである光電融合技術もチェックしておきたい。これは電気信号に代わりデータ処理や通信に光を使う技術で、高速大容量で通信ができ遅延を減らすことができる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」では、古河電気工業 <5801> [東証P]や新光電気工業 <6967> [東証P]などが光電融合技術に関わる「光電融合に係る実装技術及び確定遅延コンピューティング基盤技術開発」を受託している。
また、光の送受信に欠かせないのが光半導体で、これは光と半導体の特性を組み合わせたもの。具体的には、電流を光に変換する発光素子や半導体レーザー、そして光を電流に変換する受光素子の2種類に大別できる。
ザインエレクトロニクス <6769> [東証S]は6月、次世代の高速インターフェース「PCI Express」向け低消費電力・低遅延の光半導体事業に参入すると発表。直近では10日に、「PCI Express 6.0」に対応した超高速通信用光半導体チップセットを実現したことを明らかにしている。
アオイ電子 <6832> [東証S]とシャープ <6753> [東証P]は7月、シャープの液晶パネル工場(三重事業所の第1工場)の建物や施設を活用して半導体後工程(半導体チップを電子回路基板に実装できるようパッケージ化する工程)の生産ライン構築を推進していくことで合意したと発表。既存工場を活用することで、チップレット集積パッケージなどをタイムリーに提供していく予定だとしている。チップレットとは複数のチップを並べたり重ねたりしてあたかも1つのチップに見立てたもので、光半導体でも有力な技術とみられていることから今後の動向に注目したい。
他の関連銘柄としては、光学薄膜装置を製造・販売するオプトラン <6235> [東証P]、光デバイスなどを扱うオキサイド <6521> [東証G]、レーザー光を発生させる活性層に「量子ドット」を用いた半導体レーザーを扱うQDレーザ <6613> [東証G]、光関連部品を手掛ける精工技研 <6834> [東証S]、受光と発光の両デバイスを展開する浜松ホトニクス <6965> [東証P]などが挙げられる。
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