明日の株式相場に向けて=まだある量子関連と半導体関連の穴株
週明け28日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比120円安の2万8162円と続落。きょうが権利付きの11月最終売買日となり、あすから実質12月相場入りとなるのだが、やや買い疲れ感が垣間見える。
2万8000円台前半は売り仕掛けが入るような水準でもタイミングでもないが、とりあえず目先は利益確定を優先する動きが優勢となった。中国では新指導部が面子にかけて推進するゼロコロナ政策の歪(ひず)みが表面化している。感染者数が増え続けるなか、それを抑え込もうとするあまり経済活動に多大なダメージが及んでいる。“角を矯めて牛を殺す”状態にある習近平政権は、日本株市場にとってもある種の地政学リスクになっている。為替市場も久々に「リスクオフの円高」に振れている。
中国リスクとは直接関係はないが、市場では日経平均株価とTOPIXの値動きの違いが取り沙汰されている。日経平均株価は押し目を形成しながらも5日移動平均線をサポートラインに下値切り上げ波動を継続しているが、9月13日の戻り高値2万8614円(終値ベース)を上回れないまま目先は利食い急ぎの動きで下値を試す展開を強いられている。一方、TOPIXの方は前週に2000大台乗せを果たしており、9月13日の戻り高値が1986.57であるから、既にそこを上回って推移している。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>に代表される銀行株の上昇がTOPIX優位の地合いを演出している形だが、これをもってバリュー株優位の地合いと決めつけるのは早計である。
足もとで上値が重くなっている日経平均を横目にマザーズ指数やグロース指数の動きが強さを発揮している。個人投資家の資金の回転が以前よりも良くなっていることは言うまでもない。ネット証券大手によると直近の個人投資家の評価損益率は全市場ベースでマイナス5.68%と一段と改善している。これがゼロに近づくと相場的には天井圏を意味するため、その意味で現状はやや半身に構えておく必要があるが、おそらく12月は押し目があれば買いで対処して報われる可能性が高い。
相場のテーマ買いの動きでは、量子コンピューター 関連株が急速人気化している。技術的には未だ実用化に漕ぎ着けているとは言えないが、世界的にかなり研究開発が進捗しており、もちろん夢物語ではなく今後はリアル目線で社会実装の動きが浮き彫りとなっていく。岸田政権では国家戦略として科学技術に重点を置くことを明示しているが、量子分野はその筆頭と言っても過言ではない。国策の後押しを受け理化学研究所が今年度中に国産の量子コンピューターを導入する見通しにあるなど、スケジュール的には既に実装に向けた第一歩を踏み出している。
フィックスターズ<3687>は量子コンピューター関連の本命だが、量子通信で必須となる中継器の内部で使う光デバイス(酸化物単結晶)を製造するオキサイド<6521>の存在も見逃せない。このほか、同関連の中低位株ではユビキタスAI<3858>に株高余地がある。同社は今夏にカナダの量子コンピューターに関するソフトウェアやエンジニアリングサービスを提供するsoftwareQ社と販売代理店契約を結んでいる。また、量子コンピューター関連子会社を擁するテラスカイ<3915>もマークしておきたい。
一方、半導体関連では主力どころは目先上昇一服となっているが、半導体周辺で出遅れている中小型株には漸次物色の矛先が向いている。当欄でも前週取り上げた栄電子<7567>などは遅咲きながら株価を開花させた良い例だ。その観点で、ここから注目したいのが助川電気工業<7711>。同社は半導体製造装置向け温度センサーなどで高い商品競争力を誇る。また、同社は原発や核融合関連の範疇でも要注目で、株式市場的にはこちらのテーマで括られることが多い。この切り口でも冬場の電力不足をテーマに思惑をはらんでいる。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に、10月の失業率が総務省から、10月の有効求人倍率が厚労省から、10月の商業動態統計が経産省からそれぞれ発表される。また午前中に2年物国債の入札も予定されている。海外では11月の独消費者物価指数(CPI)速報値、9月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、11月の米消費者信頼感指数などにマーケットの関心が高い。(銀)
株探ニュース