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10年超の時を経て最高益奪還へ、25年3月期「大復活」有望7銘柄精選 <株探トップ特集>

特集
2024年12月9日 19時30分

―新たな成長路線を走り出す、長いブランクを乗り越えて業績を飛躍させる銘柄はこれだ―

25年3月期の上期決算発表シーズンでは、大手製造業を中心に下方修正が相次いだ一方、金融や鉄道、半導体関連の一角などには通期計画を引き上げる動きが多くみられた。第1四半期(4~6月)決算発表時は先行きに慎重な姿勢が目立ったが、AI(人工知能)関連市場やインバウンド需要の拡大などを追い風に、利益確保に一定のメドがついたことで上方修正に踏み切る企業が増えた格好だ。今回は足もとの業績が絶好調な上方修正企業のうち、10期以上ぶりに過去最高益を塗り替える見通しになった“大復活”銘柄に注目。長い低迷や雌伏期間を経て、新たな成長ステージを走り出す企業を追った。

●コロナ収束後の業績拡大基調にブレーキ

株探集計では、24年4~9月期決算を発表した東証上場企業2232社(変則決算を除く)の直近3ヵ月、7~9月期の経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期比で13%増加し、7四半期連続の増益を達成した。ただ、世界的な株高による投資先の株価上昇で投資損益が好転したソフトバンクグループ <9984> [東証P]が1社で2兆円近く全体の利益を押し上げた影響が大きく、同社を除くと増益率は1%にとどまる。また、社数ベースでも全体の半数以上が減益または赤字決算に沈んだ。コロナ禍からの回復に伴う業績拡大基調に陰りが出てきている。

業種別にみると、国内金利の上昇で資金利益が膨らんだ銀行、旅客需要やインバウンドの拡大で収益を伸ばした鉄道・バス、中東情勢の緊迫化に伴う運賃上昇が追い風になった海運のほか、半導体製造装置を中心とする電気機器の主力株などに好決算が多くみられた。一方、夏場にかけて進行した円高や中国、欧州などの景気低迷が響いた製造業は減益決算が目立つ。なかでも、輸送用機器は自動車の販売不振や認証不正問題に伴う出荷停止を背景に7割超が前年割れを強いられた。そのほか、燃料安過程で生じた料金反映までの一過性の差益が剥落した電力・ガスは利益が急減し、物価高による消費鈍化を受けて小売りなどにも減益が増えている。

●10年超ぶり最高益復活企業を探る

ここから紹介する最高益更新の間隔期数が大きい企業は、利益成長が長期停滞を脱した企業といえ、成長路線への回帰が期待される。利益確定売りに押されている銘柄もあるが、押し目買い候補としてマークしておきたい。以下では、4~6月期決算発表が一巡した9月1日以降に25年3月期通期の営業利益または経常利益予想を上方修正した銘柄の中から、上方修正によって10年以上ぶりに最高益を更新する見通しとなった7銘柄を紹介していく。

●三機工は大型案件の受注豊富で成長持続の公算大

三機工業 <1961> [東証P]はビル空調衛生、産業空調、電気設備などの建築設備事業を中核とする総合エンジニアリング企業。大型工事の引き合い増加や採算重視の受注戦略を背景に足もとの業績は絶好調だ。4~9月期は手持ち工事が順調に進捗するなか、EV(電気自動車)電池工場など利益率の高い大型物件が完成し、経常利益は66億3900万円(前年同期比3.5倍)と上期ベースの過去最高を記録。好調な業績を踏まえ、通期の同利益予想を実に33期ぶりの最高益見通しとなる170億円(従来予想は130億円)へ上方修正し、配当も年110円(従来は85円)に引き上げた。株主還元に前向きで、150万株(発行済み株式数の2.82%)または40億5000万円を上限とする自社株買いも実施中だ。企業の設備投資意欲は強く、来期以降に寄与する案件も積み上がっており、持続的な成長が期待される。

●朝日工はデータセンター需要期待で33年ぶり高値

朝日工業社 <1975> [東証P]は空調・衛生空調設備工事の大手。半導体・液晶分野向けに精密環境制御機器の製造・販売も展開する。25年3月期は期初段階で営業利益36億円(前期比21.2%減)と減益予想だったが、好調な上期決算を踏まえ60億円に大幅上方修正し、一気に34期ぶりの最高益更新を遂げる見通しを示した。機器製造販売事業が回復傾向にあることに加え、設備工事事業の採算が改善することを織り込んだ。業績上振れに伴い、配当計画も前回の年60円から100円(創業100周年記念配当20円を含む)へ増額している。株価は約33年5ヵ月ぶりの高値圏をまい進する展開にあるが、予想PER10倍台、配当利回り5%近辺と指標面からの割高感はない。また、大型データセンターや半導体工場の建設が増加するなど、事業環境は良好で中長期的な成長期待も強く上値余地は十分にありそうだ。

●東京計器は防衛事業の躍進で高成長へ

東京計器 <7721> [東証P]は航海計器のパイオニアとして知られ、ジャイロコンパス、オートパイロットは商船の世界シェア6割以上を握る。船舶のほか、航空、鉄道、防災、農業、エネルギーなどのニッチ市場で高シェア製品を数多く輩出している。また、航空機用レーダー警戒装置や艦艇向け航法装置など防衛省との取引実績が豊富で、防衛関連としての注目度も高い。足もとでは防衛予算の拡大を背景に防衛機器の受注が大幅に増加しているほか、新造船向け機器の販売や保守サービスが好調だ。上期決算発表時には円安による原価率の好転なども反映し、通期の営業利益予想を41億円(前期比48.1%増)へ上方修正。17期ぶりの最高益に大復活する見通しを打ち出した。中期経営計画では防衛事業の大躍進を見込み、最終年度の27年3月期に営業利益48億1000万円を目指す。

●ヤマシン―Fは積極的な株主還元にも注目

ヤマシンフィルタ <6240> [東証P]は米キャタピラー<CAT>やコマツ <6301> [東証P]を主要顧客に持つ建設機械用油圧フィルターの世界トップメーカー。2020年以降はコロナ禍の影響によるコスト高騰で苦戦を強いられたが、今期は北米を中心に利益率の高い交換用補給品の販売が好調なうえ、値上げや原価低減の進展もあって急回復をみせている。好調な上期業績を反映する形で、通期の経常利益予想を14期ぶりの最高益22億8000万円(前期比61.1%増)へ上方修正し、配当も12円(前期は6円)に積み増した。中期経営計画では、28年3月期に営業利益38億7500万円(今期計画は22億2000万円)を目標に設定するほか、資本コストを意識した経営を強化し、新たな配当方針としてDOE(株主資本配当率)10%、配当性向80%を掲げるなど、株主還元の切り口でも目が離せない。

●東京鉄は18年ぶり高値圏へ浮上も指標面に割安感

東京鐵鋼 <5445> [東証P]は鉄筋同士をガス圧接せずにネジ締めで接合できる「ネジテツコン」を主力とする電炉メーカー。足もとでは高付加価値化の推進や製品出荷価格へのコスト反映、メタルスプレッド(製品と主原料である鉄スクラップの価格差)の改善によって収益力が大きく向上している。上期決算と同時に、通期の営業利益予想を従来の100億円から140億円(前期比31.8%増)へ大幅に引き上げた。34期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。あわせて配当予想を年235円から335円(前期は270円)に増額修正するとともに、今期2回目となる自社株買いの実施も発表。株価は06年4月以来の高値圏に浮上したが、予想PER5倍台、配当利回り5%超と依然として水準訂正妙味を内包している。

●Jオイルは期初の減益予想から最高益見通しへ増額

食用油大手のJ-オイルミルズ <2613> [東証P]は、22年3月期に菜種や大豆などの急激な価格高騰を受けて、営業損益が2100万円の赤字に沈んだが、原料相場の良化やオリーブオイルなどの値上げ、収益構造改革を経て、24年3月期は72億4300万円の黒字へ急浮上を遂げた。続く25年3月期は70億円に落ち込む見通しだったものの、油脂コストの軟化や適正価格での販売継続、高付加価値品の伸長による採算向上を織り込み、85億円(前期比17.3%増)と一転して19期ぶりの最高益見通しに上方修正した。配当も創立20周年記念配当を実施する形で年70円(従来は60円)に増額したことも評価され、株価は11月29日に約4年8ヵ月ぶりの高値をつけたが、予想PER11倍前後、PBR0.7倍近辺と割高感はなく更なる上値に期待したい。

●ソマールは34期ぶりの過去最高益を奪還へ

ソマール <8152> [東証S]は機能性化学製品を主力とする商社。メーカー機能を併せ持ち、電気・電子、自動車、製紙、食品など幅広い分野で商機を掴んでいる。上期の決算開示とあわせて、通期の経常利益が25億円(前期比31.0%増)になりそうだと発表。従来予想の19億5000万円から上方修正し、34期ぶりに過去最高益を塗り替える見通しとなった。自動車部品業界向け電気絶縁用樹脂の販売が大幅に増加するほか、スマートフォン市場の緩やかな回復を背景にコーティング製品も伸びる。円安によるプラス影響も加味した。好決算を受けて、株価は11月12日に約18年5ヵ月ぶりの高値6230円まで上値を伸ばす場面があった。その後は調整が続くが、指標面では予想PER5倍近辺、PBR0.5倍台と割安感が極めて強く、見直し余地は大きいとみられる。

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