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日本の大陸棚拡大で脚光、海底資源「レアメタル」開発で急浮上する銘柄群 <株探トップ特集>

特集
2024年1月16日 19時30分

―「小笠原海台海域」が大陸棚に加わる、メタンハイドレートなどの開拓にも追い風―

株式市場で大陸棚でのレアメタル開発が関心を集めている。この背景にあるのが、日本の大陸棚拡大の動きだ。日本政府は 海底資源を優先調査できる大陸棚の拡大を目指しており、昨年12月には小笠原諸島の東側の海域である「小笠原海台海域」の約12万平方キロメートルを日本の大陸棚として正式に位置づけることを明らかにした。今後、大陸棚の拡大に伴うレアメタルなど重要鉱物の開発に向けた動きが活発化することが期待されている。

●今年春にも延長大陸棚の設定へ政令改正

延長大陸棚を設定するための調査を行っていた米国と約10年の継続的な調整を経て、昨年12月に「小笠原海台海域」の大部分を日本の大陸棚とすることを岸田文雄首相が明らかにした。一部区域は米国と引き続き協議が続けられているが、今年春をメドに政令改正を行う予定だ。

そもそも「大陸棚」は国連海洋法条約(UNCLOS)にもとづき「沿岸国の200海里までの海底とその下」と定められている。加えて「地形的・地質的に陸とつながっていると認められれば、その沿岸国は200海里を超えて大陸棚を設定」することができ、これが「延長大陸棚」と呼ばれている。

大陸棚及び延長大陸棚においては、沿岸国に海底資源に対する「主権的権利」(探査、開発、採取などの優先権)がある。言うまでもなく、延長大陸棚の拡大は日本を含めた海洋国家が戦略的に目指している。実際、日本周辺の海底には「レアメタル」であるコバルトやニッケルなどの他、燃える氷と呼ばれる次世代エネルギー資源「メタンハイドレート」などが豊富に眠っているとされている。

●経済安全保障にも絡み大きな一歩に

一方、海底資源のために各国が好き放題に延長大陸棚を設定することができれば、国際社会は混沌とした状況に陥ってしまう。当然、これについては独断で設定することはできず、大陸棚限界委員会(CLCS)に申請をし、勧告を受けなくてはならない仕組みになっている。延長大陸棚に関する日本を巡る経緯を追っていくと、2008年11月に7海域に関する申請を提出し、12年4月に延長を認める勧告を受領した。認められた面積は、日本の国土面積の8割強に相当する大きさで、海域でみると4つとなっている。

そのうち2海域(四国海盆海域、沖大東海嶺南方海域)については問題なく政令が施行され日本の延長大陸棚となった。一方、残りの2つの海域(小笠原海台海域、南硫黄島海域)については、関係国との調整入りとなっていた。なお、九州・パラオ海嶺南部海域については中国の反対もありCLCSで審査継続中だ。冒頭で触れたニュースは、これまで調整中だった小笠原海台海域に関するものだ。

●海底調査や海底資源探査機などを手掛ける銘柄に追い風

レアメタル相場は中国の動向次第で今後も大きく揺れ動く可能性があるものの、日本が他国に頼らずに活用することのできる資源確保の将来的な道筋ができたことは経済安全保障に絡んでも重要な一歩となるだろう。

現在は中国、ロシアの動向もあって調達リスクに対して目が向きがちなレアメタルだが、活用可能な資源自体の増大に加え、リサイクル技術が高度化・普及することで、日本がレアメタル大国に至る日も遠くないのかもしれない。「レアメタル」関連では、住友金属鉱山 <5713> [東証P]や三菱マテリアル <5711> [東証P]といった大手の非鉄企業や三菱商事 <8058> [東証P]など大手商社のほか、アサカ理研 <5724> [東証S]、AREホールディングス <5857> [東証P]、アルコニックス <3036> [東証P]、松田産業 <7456> [東証P]、中外鉱業 <1491> [東証S]などが主な注目銘柄だが、具体的な調査開発の進展を想定し、まずは海底調査や海底掘削機、海底資源探査機を手掛ける企業などを中心に関心が向くことになるだろう。

●ENEOSや古河機金、三井海洋、日油など

ENEOSホールディングスグループ <5020> [東証P]~グループのJX石油開発が23年4月に海洋掘削会社である日本海洋掘削を子会社化している。日本海洋掘削は、船舶・艦艇・海洋浮体構造物などの設計、製造、販売を手掛けるジャパン マリンユナイテッド(横浜市西区、株主構成:JFEホールディングス <5411> [東証P] 35%、IHI <7013> [東証P] 35%、今治造船 30%)と共同で、小型の掘削作業船を用いて、低コストで海底仕上げ坑井の改修や廃坑などの作業を実施する小型海洋掘削・作業システムの開発を進めている。

日本製鉄グループ <5401> [東証P]~グループの日鉄エンジニアリングでは環境・エネルギー、都市インフラ、製鉄プラントの3つの戦略セクターにおいて事業を展開しており、海底資源開発では国が実施する砂層型メタンハイドレート開発に関する海洋産出試験などを担当する日本メタンハイドレート調査(東京都千代田区)の一員として開発に参画している。また、採鉱・揚鉱パイロット試験受託コンソーシアムメンバーとして、国内企業や国立研究開発法人と共同で、海底熱水鉱床生産システムの開発を行っている。

三井海洋開発 <6269> [東証P]~浮体式設備に関わるトータルソリューションを提供しているが、表層型メタンハイドレート回収技術開発に関わる要素技術開発に参加し、大口径ドリルを用いた広範囲鉛直掘削法による回収技術開発を進めている。また、日本近海の海底鉱床に眠る海底資源の洋上生産設備の製造及び運転に関する技術の提供を目指している。

マイクロ波化学 <9227> [東証G]~独自開発したマイクロ波化学技術を活用したソリューションを提供する。22年7月には量子科学技術研究開発機構(量研)と進めてきた、マイクロ波加熱を用いたレアメタルの省エネ精製に成功したことを発表しており、CO2排出量は90%以上削減できる見通し。

日油 <4403> [東証P]~グループの日油技研工業では、海洋機器分野において、海底資源探査機材、温室効果ガス抑制試験、海底地震津波観測機材、河川洪水監視装置などを手掛けている。また、海底調査機器では、資源調査に必要な海底ボーリングマシンを提供している。

トピー工業 <7231> [東証P]~自動車用・鉱山機械用ホイールが主力だが、クローラーロボットも手掛けており、遠隔操作無人探査機(ROV)として、これまで、東日本大震災後の福島第一原発の建物内や地下などでの調査、測定に活用された。15年にはクローラーロボット技術を次世代海洋資源調査に展開するため、海洋研究開発機構(JAMSTEC)及び日産自動車 <7201> [東証P]と共同開発契約を締結している。

岡本硝子 <7746> [東証S]~23年3月にいであ <9768> [東証S]、石油資源開発 <1662> [東証P]、深田サルベージ建設(大阪市港区)、ダイヤコンサルタント(東京都千代田区)との共同出資により次世代海洋調査株式会社を設立。同社が手掛けている深海観察着陸機「江戸っ子1号」を含む技術的知見を社会実装につなげることを目指している。

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