【植木靖男の相場展望】 ─TOPIX・内需株に人気移行か
「TOPIX・内需株に人気移行か」
●株式市場の背を押す政府主導の株高作戦
大発会の東京市場は、新年が変化、転換の年であることを印象づけたようだ。
昨年末に市場関係者は掉尾の一振を期待したが、あえなく失敗し、大発会では日経平均株価の下げ幅は一時770円に達した。しかし、一方でTOPIXは堅調に推移し、大発会は12.40ポイント高と日経平均株価と明暗を鮮明にしている。これは大きな変化といえよう。
なぜ、こうした違いが生じたのか。それは米国株にみることができよう。米国市場、なかでもナスダック指数が新年に入って急落している。つまり、テック株の変調だ。ハイテク株の多い日経平均株価はこの影響を強く受けたのだ。
かつて平成バブルが終焉を迎えた1989年末、その後の東京市場がジリジリと下げ始めた時を想起せざるを得ない。当時、年替わりからムードは急変したのだ。
ここまで米国株を牽引してきたナスダック指数が天井を打ったかどうかはまだ定かではないが、大発会でのレーザーテック <6920> [東証P]や東京エレクトロン <8035> [東証P]の急落は気になるところだ。また、米国景気の先行指標とされるラッセル2000指数が大きく下げたことと照らし合わせると、米国株には注意が必要だろう。
一方で、TOPIXは大納会から5日まで3日連騰を演じている。投資家は日経平均株価にばかり目を奪われていると大きな間違いを犯すリスクがある。
さて、当面の株価はどう動くのか。見通しは難しいが、注目したいのは4日の大発会から連休明け9日までの3日間の値動きだ。この期間が3日連騰もしくは2勝1敗なら90%の確率で年足が陽線に、また3連敗もしくは1勝2敗なら80%の確率で陰線になると、かつて市場の場立ち(立会場で売買注文を伝達していた証券会社の担当者)の間ではいわれてきた。はたして、どうか。「1年の計は元旦にあり」というが、市場の年間予測の総意が年初の相場に集約される傾向があるだけに、TOPIXの動きに期待したい。
ともあれ政治の混乱、震災被害など厳しい懸念材料を抱えている新春相場だが、日本人は危機に際して解決の方向性、ターゲットが決まれば無類の強さを発揮する。
株式市場では「国策に売りなし」という。また「金が金を生む」ともいう。政府は先頭に立って新NISA(少額投資非課税制度)などで株高を促そうとしている。1100兆円にのぼる個人の預貯金をバックにしての株高作戦は成功するに違いない。株高作戦が成功すれば、金が金を生み、結果として企業業績も改善するとみる。
●内需関連から短期銘柄を選別
新春1月の変化は波乱にもつながりやすい。銘柄選択はやや目先的な騰落をみて行動したい。大利を狙う月ではなさそうだ。
とにかく、まず米国株、特にナスダック指数の下げが目先的なものなのか、それとも更なる下降を辿るのか、その去就の見極めが大事だ。
そのなか、しばらくは内需株選好の展開が続くとみたい。新しい年を迎えて政府もなにかと内需拡大に意を用いるはず。その範囲は金融、建設、不動産、サービス、小売り、鉄道、航空、化学など幅広い。目先的には1月第1週に人気が出た銘柄から選ぶのが、短期銘柄としてはふさわしいとみる。
筆者好みの銘柄を挙げると、金融からメガバンクトップの三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]のほかスルガ銀行 <8358> [東証P]、鉄鋼から世界一を目指す日本製鉄 <5401> [東証P]、東京製鉄 <5423> [東証P]、 証券から大和証券グループ本社 <8601> [東証P]、石油からENEOSホールディングス <5020> [東証P]、 鉄道から東急 <9005> [東証P]、 小売りからは三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]など。
また、週明け上昇するなら不動産株の住友不動産 <8830> [東証P]、三菱地所 <8802> [東証P]、東急不動産ホールディングス <3289> [東証P]なども狙い目か。
なお、業種のトップ銘柄が動いたら、業界の三番手、四番手を注目との市場格言もある。
2024年1月5日 記
株探ニュース