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いちご Research Memo(2):不動産価値向上を図る心築事業を軸に3上場投資法人を運用・管理(1)

特集
2024年6月17日 13時02分

■会社概要

1. 会社概要

いちご<2337>は、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象に、不動産価値向上ノウハウを活用し、投資・運用を行う心築を強みとしている。また同社は、オフィス、ホテル、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人(いちごオフィスリート投資法人<8975>、いちごホテルリート投資法人<3463>、いちごグリーンインフラ投資法人<9282>)を運用・管理するユニークな企業グループである。ストック型とフロー型の収益モデルを有し、特にストック収益の比率は58%に達し、キャッシュ・フローを最大化する経営を徹底してきた。2002年11月に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現 東京証券取引所(以下、東証)グロース市場)に上場。その後2015年11月に東証1部に昇格し、2022年4月に東証プライム市場へ移行した。同社はすべての事業において社会貢献を目指しており、心築事業における環境負荷低減やクリーンエネルギーの創出など本業を通じた貢献に加え、Jリーグのトップパートナーとして地域活性に参画するほか、「RE100」や「国連グローバル・コンパクト」に加盟するなど多面的な活動を通じて、サステナブルな社会の実現に力を注いでいる。

2. 事業内容

同社の事業セグメントは、アセットマネジメント事業、心築事業、クリーンエネルギー事業の3つである。アセットマネジメント事業は、いちごオフィスリート投資法人、いちごホテルリート投資法人、いちごグリーンインフラ投資法人及び自社グループで運用する不動産私募ファンドに対し、案件の発掘や供給、運営・管理に加え、心築により物件価値を向上させ、投資主価値の最大化を図る。また、2022年2月期よりセキュリティ・トークンを活用した不動産投資商品である「いちご・レジデンス・トークン」の運用も開始しており、収益源の多様化が進んでいる。2024年2月期の売上高は全社の3.0%(内部売上高を除く)、営業利益は11.5%と利益に貢献している。心築事業は不動産保有期間の賃料収入を享受しつつ遵法性の確保や耐震補強といったベーシックな価値向上に加え、テナントニーズに基づき、共用部機能の充実、近隣とのコミュニティ形成や災害時のBCP対策を目的としたイベントの開催など、稼働率改善及びテナント満足度の向上を通じた賃料の向上を図り、不動産価値を高めて売却することで高い売却益を得る。2024年2月期の売上高は全社の89.8%(同)、営業利益は73.4%を占める同社の大黒柱である。2017年3月設立のいちごオーナーズの業績もこのセグメントに属し、優良立地の新築レジデンスを取得して短期間(1年以内)でリーシングを完了し、外部の投資家や新規事業である不動産小口化事業(「いちご・レジデンス・トークン」「いちごオーナーズビルシェア」)へ物件を売却・供給している。セグメント収益を牽引するまでに成長した。クリーンエネルギー事業は太陽光を主とした再生可能エネルギー発電を行う事業であり、2024年2月期の売上高は全社の7.2%(同)、営業利益は15.0%と安定した利益を稼いでいる。

同社の収益構造にはストック収益とフロー収益があり、バランスよく成長してきた。特筆すべきはストック収益であり、2024年2月期通期実績で19,417百万円となり、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以前の水準を超え、過去最高を記録した。ストック収益の内訳としては、保有資産の賃料収入、発電所の売電収入など保有アセットからの収入に加え、ノンアセット収益であるアセットマネジメント(AM)のベース運用フィーやホテルオペレーター収益及びPROPERA利用料などがあり、収益源を多様化しながら順調に積み上がっている。ストック収益は、同社の固定費(固定販管費+支払利息)の2.14倍に相当し、十分カバーして余りあることになる。フロー収益は主に心築事業における不動産譲渡益であり、同14,315百万円の実績である。収益全体に占めるストック収益の比率は58%であり、KPIで目標とする60%に近づいている。不況期などによりフロー収益が落ち込む時期においても物件を売り急ぐ必要がない点が同社の強みとなっている。

3. アセットマネジメント事業

当該事業セグメントは、いちごオフィスリート投資法人(2005年10月上場)、いちごホテルリート投資法人(2015年11月上場)及びいちごグリーンインフラ投資法人(2016年12月上場)などの同社がスポンサーを務める上場投資法人に対し、投資対象資産の発掘及び供給による成長支援、運用期間中の運用・管理などを展開している。また、2022年2月期より、セキュリティ・トークンの活用による投資商品「いちご・レジデンス・トークン」の運用も担っている。リートの成長によるアセットマネジメント事業の拡大は、財務基盤を健全に維持しつつキャッシュ創出を最大化する同社の戦略の柱である。

いちごオフィスリート投資法人は安定的かつ収益成長が見込める中規模オフィスに特化したポートフォリオに特徴がある。世界中の機関投資家が指標とするグローバルインデックスファンド「FTSE EPRA / NAREIT Global Real Estate Index Series」にも組み入れられている。運用資産残高の増加や保有不動産の価値向上による賃料収入の増加などにより、オフィス特化型リートへ転換した2015年10月期以降、継続的な積極運用により保有資産の価値向上を実現したことにより、1口当たりNAVの成長率は39.2%増に達した(※1口当たりNAV =(分配金控除後純資産額+不動産含み益-不動産含み損)÷ 期末時点発行済投資口数、2023年10月期)。2024年4月末日の運用資産は87物件、残高2,104億円である。いちごホテルリート投資法人は、ビジネス・観光に優位性のある好立地の宿泊主体・特化型ホテルで構成されるホテル特化型J-REITである。いちごオフィスとともに、グループの資産運用会社に対する報酬体系を投資主価値向上に連動するJ-REIT初の完全成果報酬へ移行するなど、積極的な運用を行っている。2024年2月末日の運用資産は30ホテル(上場時は9ホテル)、残高698億円である。コロナ禍の影響で業績が落ち込んだ時期もあったが、直近では客室稼働率、平均客単価などの指標が回復しており再び成長基調のステージに入っている。なお、いちごオフィスリート及びいちごホテルリートはJ-REITで唯一完全成果報酬制度を採用しており、リートの利益成長と同社の収益貢献が連動する投資主目線の運用を行っている。いちごグリーンインフラ投資法人は2016年12月に上場したグリーンインフラ特化型投資法人である。長期にわたる安定収益を背景に、史上初となる10ヶ年の長期業績予想を行う。2024年2月末日の運用資産は15発電所、残高は114億円である。

同社はスポンサーとして運用リートの成長サポートを担う。同社がブリッジ機能を果たし、機動的に物件を取得のうえで、運用リートへ提唱するなど、スポンサー(同社)と運用リートが連携することで、グループ全体として株主価値を向上させ、安定収益を生み出せるシステムが同社の総合力である。2024年2月期においても、いちごホテルリートに対して「THE KNOT」を含む5ホテル(総額約150億円)を提供、ホテル取得資金として第三者割当引き受け(15億円)、いちごオフィスリートに対して価値創造CAPEX資金として投資法人債引き受け(3.5億円)など様々な成長支援を行った。

2019年2月期からの推移では、ベース運用フィーが安定して推移した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《SI》

提供:フィスコ

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